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第55話O編『協力関係』

【十執政】が動き始めます!

「【十執政】を探すといってもどうすればいいんでしょうか?」

 

 先程【十執政】『第六位』クロイツ・ヴァルマーと出会った商店街にまでは来たのだが、やはり彼はもういないようだ。


「ヴァルクとかを見つけてついて行ったりすれば良いかもしれないけど……今日は学園休みだし会う機会ないからね」


 ライン達を襲った癖に堂々と学園に通っている【十執政】『第十位』ヴァルク・オルデイン。彼について行けば彼らの根城を見つけ、クロイツを見つけられる……と思ったが、残念ながら今日は学園が休みなのだ。


「学園に行ってみようか。『ラビリンス・ゼロ』もあるしもしかしたら来てる可能性もあるからね」


 アレスの提案で学園に向かうことにした一行は商店街を通り抜けようとすると、ちょうど二人の存在を確認する。

 それは――


「ねーこの花どう思うー? 前見た時買いたくなったんだよねー」


「で、私に買えと言うことですか? ヴァルクを迎えに行く訳でもないのに商店街に行きたいって言い出したかと思えば……」


「いーじゃん。買ってよー」


 花屋の前で一本の黄色い花を持ち、「買ってー」と子供のようにせがむ【十執政】『第八位』サフィナ・カレイドと、「なんでわざわざ……」という顔をする【十執政】『第七位』ロエン・ミリディア。

 昨日も商店街で会ったが、【十執政】を探したい時に出会うとは。

 ちょうど良い頃合いに見つけたことでアレスたちは心の奥底から喜びが隠せない。


「ほら、買いましたよ」


「わーいありがとー」


「本当に喜んでるんですかあなたは?」


「当たり前ー」


 アレス達には聞こえない距離で会話をしながら、学園に続く森の方に歩いて行く。そしてその後ろを四人は見失わないようについて行った。


◆◇◆◇


 ――少し進んだところで、ロエンが突然立ち止まった。その様子に隣のサフィナも怪訝な顔をする。


「急にどーしたの? 早く帰るよー?」


「まあそうなんですが。それよりなんの用でしょうか? 私たちについて来ているようですが」


 ((((見つかった……))))


 後ろを振り返り、草むらから出てきた一行がその瞳に映る。出てきた四人もどうして気づかれたのか不思議そうな顔をしていると、ロエンはポケットから羅針盤を取り出した。


「これに反応してたので近くにいるんだろうと思っていたんですが、ここまで歩いても反応してるのでついてきてると分かったんですよ」


 その羅針盤は『第六位』クロイツ・ヴァルマーに作られたものだ。『創世神』の力に近づくと反応するもので先日の『ラビリンス・ゼロ』でも使っていた。


「たしかにそんなのあったね。忘れてたよ」


「ほんとだ。すっかり忘れてた」


「で、目的はなんですか? あと二人の兄妹はいないんですか?」


 ラインとセツナがいないのを確認して尋ねる。

 

「兄さんは『第六位』のクロイツって人に別の世界に飛ばされたんだ」


 そう言うと、二人とも信じられないような顔をしてお互いを見合わせる。


「一体どういうことですか? クロイツがそんなことを――」


 そこまで言いかけると、ロエンもサフィナも動きが止まってしまう。何事かと二人を見ていると、再び動き出した。


「少し失礼」


 突然二人の目の前に現れたのは魔法だ。紫色の魔法陣が目の前に出て、二人はそれをまじまじと見つめる。

 

「ソールからですか。一体何……が」


 魔法陣に書かれている文を見て二人はまた動きが止まってしまう。ありえないものを見たように何度も目を擦らせているが結果は変わらないようだ。


「ロエン、これほんとーに言ってる?」


「えっと……一体何が書かれていたのですか?」


 首を傾げ、疑問の表情をセレナが投げかけると、ロエンは口を開いた。


「――【十執政】『第六位』クロイツ・ヴァルマーを抹殺する。と書かれていました」


 『第一位』のソールから送られた連絡魔法にはそう書かれていたようだ。驚きが隠せず、動揺しているのが分かる。


「ちなみに、理由は?」


「私たちに反旗を翻したからそうです。ですが、何をしたのかは書かれていません」


「ということは、【十執政】総出でクロイツを探すって事?」


 アレスの質問にロエンは「ええ」と静かに答え頷く。

 これは好機だ。『時間の神』アスタリアに言われたのは『第六位』クロイツを拘束し、あわよくば『第一位』ソール、『第四位』セルヴィを捕まえることだ。

 

「拘束」と「抹殺」という違いはあれど、目標は同じ。ならば協力してみるのも良い手だろう。


 そう思っていると、先にロエンから尋ねられる。


「……では、今回だけですが協力してみますか? クロイツを抹殺するよう言われた以上、彼は我々を脅かす力を手に入れた可能性もあるので」


 普段から開発作業ばかりしているクロイツが突然裏切り者と扱われるにはそれほど危険と思われることがあったのだろう。

 ならば、ひとまず対抗出来るであろう『創世神』の血を引く二人と行動した方が良いと考えたのだ。


「そうだね。僕たちはクロイツを拘束するつもりだから目的は違うけどそれでいい?」


「はい。別に構いません。私としてもクロイツに聞きたいことが山ほどあるので」


◆◇◆◇


「へぇ? まさかそこが手を組むなんてね。さっき消せなかったのがしくじったかな」


 ただ地面に草だけがある拓けた大地で『第六位』クロイツは青い空を見上げ、手元にある謎の水晶に目を向ける。

 そこにはアレスたちと会話をしているロエンとサフィナからの視点が映っていた。


「抹殺かー。面倒くさいことになっちゃったな。でも、僕に見られてると知らないのに出来ることなんてないでしょ。フフフ……ハハハッ!」


 自分を追っている他の【十執政】をバカにするような不気味な笑いが誰もいない空間に響いた。


◆◇◆◇


 冷たくて暗い空間を一人の足音だけが響き渡る。それは【十執政】『第一位』ソール・アスタリウスの足音だ。

『第六位』クロイツをあの方から「抹殺せよ」と命令が出た後、一人で歩きながら考え事をしていた。


 (一体なんでクロイツが……。裏切り者とみなす理由も聞かされなかったからな……)


 ロエン、サフィナだけでなく他のメンバーにもしっかり連絡魔法でクロイツを抹殺することを伝えてある。だが、あの方たちからクロイツが裏切った訳を聞けなかったため何をしたのかまでは送れなかった。


「おーい何辛気臭い顔してんだよ」


 突如ソールの後ろから話しかけた二人の男。その一人は残機のある分だけ生き返れる『第四位』セルヴィ・ミレトスと――


「『剣聖』に負けたと思えばまた身体を変えたのか」


「あの身体、手放したくなかったんだがな。殺されちまったし仕方ない」


 覚醒した『剣聖』アッシュ・レイ・フェルザリアによって倒されたはずの『第二位』の男だった――

読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
一気に動き出していますね。 二手に別れたから、本格的に動くのは合流してからかと予想していたのですけれども、大きく物語が動きそうですね。 ラインが居ない中、残りのメンバーがどう十執政を捌くのかが楽しみで…
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