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第47話『王国の騎士』

「ふっふーん! 学園学園〜」


「なんで登校中にそんなに楽しそうなんだよ……」


 陽光が注がれる朝、魔法学園に向かう道の中でレンゲはスキップしながら進んでいた。

 その後ろをライン、アレス、セツナ、セレナ、エルフィーネがゆっくり歩き、朝から元気なレンゲを微笑ましく見つめていた。


 いつもはあくびをしたり目が半開きなラインとセツナを見て、アレスが不思議そうな顔をする。


「二人とも最近眠そうに見えないね。なんかあったの?」


「こいつとアステナが俺の部屋ですぐ寝るせいで夜更かし出来ないんだよ」


「まあいいじゃん。私も目覚めがスッキリしてるし」


 愚痴るように言うラインを、腕を組みながら少し睨む。それに気づいたラインも一瞬睨むが、お互いすぐ笑顔になった。


◆◇◆◇


 学園に着き、彼らの教室に入る。朝早く来たため、人はほとんどいない。外では熱心な生徒たちが魔法実習場で魔法の練習をしていて、うるさい音が教室にまで響いてくる。


「僕たちも練習しに行ってみる? 行ったことないし」


「あ! 楽しそう! 行こ行こ!」


 やる気のあるアレスとレンゲに対し、「えー」と呟いたのはラインとセツナだ。だが、そんな二人を兄妹とメイドは引っ張り、外に連れていこうとするので仕方なく立ち上がる。


「さて、行きましょうか皆様」


 四人の後ろをラインとセツナはゆっくり着いていき、教室のドアまでたどり着く。エルフィーネがそのドアを開けようとすると、それより先に扉が開いた。


 教室に入ってきたのは――


「あれ、おはよう。お前ら最近来るの早いな」


 『魔導師』グレイス・エヴァンスだった。そして、もう一人彼の後ろから入ってくる。


「久しぶりだね。元気だった?」


 『剣聖』アッシュ・フェルザリア――いや、『剣聖』アッシュ・レイ・フェルザリアも入ってきた。ここ数日、彼は学園を休んでいてラインたちは心配していたが、数日ぶりに顔を見れて安堵する。


「お前なんで休んでたんだ? 心配したぞ」


「まぁ、色々あってさ。でももう大丈夫だよ」


 普通の笑顔でそう言う彼を見て、心配はなさそうだと思う。だが、最後に会った時とは何か雰囲気が違う。

 さらぬよく目を擦って見てみると、彼の周囲に金色の粒子が漂っているのだ。


「なぁ、お前俺と別れたあと何があった? あれから雰囲気が違うし……」


「……実はね」


 ――数分間、アッシュの話を無言で聞いていた。その内容としては、あの日、ラインたちから離れた後に【十執政】『第二位』エルン・レイ・フェルザリアと戦い、勝利したこと。

 何者かに操られていた父親を斬ったことで『剣聖』の『権能』を授かり、れっきとした『剣聖』になったこと。

 そして一番驚いたことは――


「えぇっ!? レガリア王国騎士団に入ったの!?」


「うん。『剣聖』になったからね」


 なんと、この国の騎士団に入団したそうなのだ。本来、騎士団に所属するには十六歳以上にならないといけないのだが、フェルザリア家は代々『剣聖』を輩出する家系だ。

 

 そんなフェルザリア家には、『剣聖』となった者は無条件に騎士団に入れる上に良い待遇をしてもらえる制度がある。これは、初代『剣聖』フェリオス・レイ・フェルザリアが活躍したおかげで確立されたのだ。


 そしてこの制度に反対するものは過去から現在まで誰一人としていない。

 それは、『剣聖』がこの国で大勢に尊敬される存在であるからだ。

 かつて、多くの村を滅ぼした四人の吸血鬼を討伐した者の一人が『剣聖』だからだ。

 その昔話を聞いた子供たちが騎士を目指すというのがここ数百年ずっと起きているそうだ。


「騎士になったら学園はどうするんだ? 辞めるのか?」


 騎士団に所属すると、最初の一年は剣や魔法、法律などを学び、その後各地に配属される。そうなると、魔法学園に通っている彼は辞めないといけないのではないだろうか。そんな質問をすると、アッシュは笑いながら首を横に振る。


「学生で騎士団に入った人は辞める人が多いらしいけど、ここはこの国最高峰の魔法学園だろう? 多くのことが学べるからって理由で辞めずに通い続けるよう言われたよ」


「なるほどな」


 とても厳しい条件があるように思っていた騎士団に、意外と緩いところもあるのかとアッシュ以外は思った。


◆◇◆◇


「じゃあ一限目を始める。運の悪いことに、今日は魔法の授業が六限まであるからな」


 魔法科の担当でラインたちの担任であるカイラス・ヴァルディ先生が、一限のチャイムがなると同時にそんなことを言い出して周囲からは「えー」といった声が上がる。

 教室内が騒がしくなり、先生は机をドン! と叩く。


「お前ら静かにしろ。仕方ないだろ? 来月は学園祭があるからな」


 再び、教室内が騒がしくなる。机を叩いても全然治らず、先生は杖を床に向ける。


「ライトニングスパーク!」


 それは、雷の衝撃波を走らせる雷魔法だ。カイラスの足元に放たれたそれは教室内を走り回り、生徒たちを感電させる。

 防御魔法で防いだグレイス、雷撃を切り刻んだアッシュ、『創世神』の力でバリアを貼った四つ子を除いて。


「せ、先生! いきなり何するんですか!?」


「お前らが黙らないからだろ。来月ある学園祭のための準備時間が始まるんだよ。それで魔法の授業が少なくなるから今日は六限あるんだ」


 理解した生徒たちは頷き、続いて尋ねる。


「学園祭ってどんなことするんですか?」


「この学園は広いから沢山するんだが……テーマは毎年、星や宇宙についてだな。細かいことはまた話す。今日は授業に集中しろ」


 内容が聞けないことに生徒たちは残念にしながらも、うるさくしたらまた魔法でも飛ばされそうので渋々紙と筆記用具を準備する。


「まず、それぞれの属性魔法は四段階の強さがあるのは知ってるな?」


 属性魔法には四段階の強さがあるのだ。例えば、炎魔法なら「フレイムスパーク」、「インフェルノ」、「フレアランス」、「エクスプロード」の順に威力が増していく。他の属性魔法も同じだ。


 ただし、「エクスプロード」のように上位魔法は魔力消費が激しいため、普通の者なら一日二発撃てる程度だろう。


「まず、お前らは魔力操作が下手くそだ! 先日の『神龍オメガルス』との戦いといい、『ラビリンス・ゼロ』といい、魔力の使いすぎで倒れる奴が多すぎる!」


 図星をつかれた生徒たちは気まずそうな顔をしてお互いを見る。


「まあいい。今日はとことん教えてやる。魔法実習場に行くぞ」


 厳しい授業が始まることになり、肩を落とす生徒たちだった――

読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
カイラス先生はスパルタ指導の方針なんですね。 いきなりぶっ放す怖い先生だw (╹▽╹) 六限までということは、一日魔法尽くしでしょう。 新たな魔法の設定も開示されるのかな? 楽しみです! (*´ω`…
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