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第24話『【第三層】と異変の正体』

血描写ありです。気をつけて。

毎話見てくれてる方がいれば、第十二話を見返してください。五月十九日に内容を書き直したので、今回の話を見る前に見た方が良いと思います。

― ― チームA【第二層】『霊界の囁き』ノムール『突破』――


 ライン、アッシュ、セレナの素晴らしい連携により、ノムールを消滅させることが出来た。


ギィィィ!!


 扉が開く音がし、【第三層】へ通じる螺旋階段が現れる。


「次は第三層か……」


「うん、行こうか」


 ゆっくりと螺旋階段を登り、大きな扉を開く。

 その空間は、【第一層】や【第二層】とは大きく違っていた。

 【第三層】はまるで、氷の宮殿。辺り一面は氷の柱が立ち並んでいる。


そして――


「ライン様、『権能』が使用できません。『権能』封印の結界が貼られています」


 セレナが落ち着いた声でラインに伝える。


「なんだって?」


「……しまったね」


 アッシュがそうつぶやく。

 アッシュが【第一層】、【第二層】を突破するために使用した『神剣』(しんけん)アグナシス――それを含む七本の『神剣』をアッシュは仮契約により、一日五分間しか世界に顕現できない。


 そのため、アッシュは『神剣』を使い終わるとすぐに、彼の『権能』である《空間操作》を使って、異空間の武器庫に収納していた。

 それは、ノムールを倒した後も同じだ。


――つまり、『権能』が使用できない【第三層】で、凄まじい火力を持つ『神剣』を使用することができないのだ。


「氷には炎だと思ったけど、仕方ないか……よし、じゃあとりあえず――ッ!」


 危なかった。ラインは咄嗟のところで防御魔法を展開し、飛んできた氷の針を防ぐことが出来た。

 その氷の針を飛ばした人物は――


「ようこそ【第三層】へ。よくぞ妾の層までたどり着いたものじゃ。妾はリュミエール・フローズ。この層の主にして絶対の女王よ」


 そう言った女は、【第三層】のボスだ。その外見は、氷のように透き通った色の髪を持つ美女だった。

 髪は腰まで伸びていて、その全身を水色のドレスコートで着飾っている。


―― 【第三層】『氷結の女王』(ひょうけつのじょおう)リュミエール・フローズ『開始』――


「まずは貴様らの実力を測るとしよう。フリーズニードル」


 リュミエールが手を掲げ、氷魔法を詠唱する。すると、鋭い氷の針がが三人に襲いかかる。


「フレイムスパーク! ボルトランサー!」


 セレナが炎魔法と雷魔法を詠唱する。飛んできた氷の針は全て燃え尽き、複数生成された雷の槍がリュミエールに向かって飛ぶ。


「ふむ、なかなかやるようじゃな。グレイシャル・シールド!」


 だが、飛ばした雷の槍は、生成された氷の壁により防がれてしまう。


ビキィッ…バリバリバリッ…ッシャアァァン!!


「……ほう」


 氷の壁を破壊したラインは、血液の剣を作ってリュミエールに振りかざす。


「ハァァ!!」


「血液の剣、実に面白い。もっと妾を楽しませてみせよ!」


 ラインの血液の剣と、リュミエールの氷の剣が衝突する。


「剣裁きもなかなかのものじゃな。ではこれはどうじゃ?――フリーズチェーン!」


「なっ!?」


 聞いたこともない、いや、知らない氷魔法が詠唱され、ラインの四肢が氷の鎖で拘束されてしまい、身体が動かなくなった。

 それは鎖によるものではなく、鎖で繋がれた四肢が完全に凍ってしまったからだ。

そして、それは二の腕にまで広がって来ている。


「身体が……凍って動かねえ」


「妾のオリジナル魔法じゃ。その鎖に繋がれたら四肢は凍り、動かせなくなる。やがて、それは身体中に回り、凍った人形が出来上がるのじゃ」


 リュミエールの氷の剣が、ラインの首に向けられる。


「終わりじゃな」


「まだだ」


 ラインが不敵な笑みを浮かべ、目の前の女を見つめる。


「何を言って――ハッ!」


 ラインの手を見ると、先程まで持っていた血液の剣がない。

 ふと上を見あげると、血液の剣を持って振りかぶってくる『剣聖』の姿があった。


「フリーズチェーン!」


 氷の鎖を飛ばすが、それらを全て『剣聖』は切り裂き、刃がリュミエールの氷の剣と衝突する。


「な、貴様はなんじゃ!?」


 ラインとは全くもって異なり、圧倒的な剣技でリュミエールに剣を振り下ろす。それら全てを受け止めるのは、リュミエールにとって難しすぎるものだ。

 アッシュがリュミエールのすぐ目の前に来た瞬間、


「――ブリザード・レイ!」


 と、氷魔法が詠唱される。それは、冷気のビームを発射するものだった。


「な、アッシュ!!」


「しまっ――」


 アッシュの胸を貫通しそうになったその時、アッシュは横に押され、冷気のビームの軌道から外れた。しかし、それを左肩に喰らったのは――


「――ッ!」


 セレナだった。セレナは左肩を抑えながら、遠くの地面に倒れ込む。

 ビームの幅は大きくなかったため、少し左肩に穴が空くだけですんだ。


「ほう……面白い。次は避けれるか見ものじゃな。――フロスト・ディザスター!」


 またもや知らない氷魔法が詠唱される。しかし、まずい攻撃なのは見るよりも明らかだった。

「ブリザード・レイ」よりも高威力の、リュミエールオリジナルのビーム魔法が容赦なくセレナに向かって放たれる。


「セレナ!! チッ、この鎖邪魔だ――な!」


 ラインは両手首と両足首を血液の刃で切断し、切断されたり部位は瞬きよりも早い速度で再生する。

『権能』を使用できないこの空間で、『権能』を自分に与えても意味が無い。

 ならば取る行動はひとつしかあるまい。


 セレナにビームが直撃しそうになる瞬間――


ギィィイイン――ッ!!


 氷が軋みを上げるような、高周波の音が実体のない空間に響き渡る。


 まるで世界そのものが悲鳴を上げたかのように、


パァン!!……パシュゥ!……


 衝撃とともにビームが四散し、冷気の爆裂音と共に空気が弾ける。


「な、なんじゃ……?」


 リュミエールの瞳の先には、冷気のビームを破壊したラインが立っていた。

その髪色は、赤髪に真っ白のメッシュが沢山入ったよ うなものになっている。


「ら、ライン様……」


「セレナ、大丈夫か?」


「あ、はい。肩以外はなんとか……助けていただきありがとうございます」


 ラインがセレナの肩に触れると、段々と治癒されていき、傷は消える。

 すると、再び赤髪が少しずつ真っ白になっていく。


「おい貴様、今のは妾のオリジナル魔法の中で最高火力の物じゃ。どうやったのじゃ?」


「普通に破壊しただけだよ」


 ラインは、両手首両足首を再生してすぐ、『創世神』の力でセレナの目の前にショートワープした。その後、迫り来る「フロスト・ディザスター」を破壊したのだ。


「ライン様、お身体は大丈夫ですか?」


 セレナがラインに心配の言葉をかける。以前、ラインは『神龍オメガルス』を『創世神』の力を使って倒した後、十日も寝込んでしまった。


「はぁ、セツナから聞いたのか? あのお喋りめ……」


 ラインが寝込んでいた理由は兄妹達しか知らないし、誰にも教えていない。そのため、セレナに教えたのはセツナだろう。


「セツナ様はライン様のことを心配してましたよ」


「じゃあ俺と一緒に怒られてくれ。あいつ怒るとうるさいから覚悟しろよ?」


 セレナは目をぱっと見開き、笑顔になる。


「――はい!」


「二人とも、大丈夫?」


 倒れていたアッシュが立ち上がり、近づいてくる。

 ラインが渡した血液の剣は、折れてしまったようだ。


「折れたか。ほら、また頑丈に作ったぞ」


 血液の剣を再び生み出し、それをアッシュに渡した。


「ありがとう」


「ふむ、どうやら準備が整ったようじゃな」


 リュミエールが本気を出す。その時、空間が凍りつくような「別の気配」を感じる。


「お待ちを」


 何者かの声が聞こえてくる。その声を以前、ラインとアッシュは聞いたことがあった。


「お、お前は……」


「初めまして……と言っても、君達二人は会ったことありましたね。その節はどうも」


 そう言う男は、先程カイラス先生を気絶させた三人のうちの一人――ロエンという男だ。

 しかし、それだけではない。その男は――


「ルシェルを連れて帰った男……」


 そう、『神龍オメガルス』戦では、神龍の他にルシェル・バルザーグという男とも交戦した。

 生徒全員の協力により、なんとか神龍は討伐したが、ルシェルは倒されずに、気絶したままこの目の前にいる男に回収されたのだ。


「私は【十失政】『第七位』ロエン・ミリディアです。以後お見知り置きを」


 聞きなれない言葉が、男の口から出される。それに対し、ライン、アッシュ、セレナは首を傾げていた。


「あ、そうですね。すみません」


 その男は謝り、話を続ける。


「確かに我々は表立って行動はしないので知らないのが当然でしょう。まあ、ぜひ覚えてください」


「で? わざわざ俺らと仲良くしに来た訳じゃないよな?」


 ラインとアッシュが血液の刃を構える。

 すると、ロエンは両手を上げ、


「仲良くしに来た訳では無いですが、戦いに来たつもりでもないんですよ」


 そう言って、さらにロエンは続ける。


「今回の私の目的は、『創世神』の力の欠片の回収です」


「「――」」


 ラインとセレナが一瞬顔を強ばらせるが、平静を保つ。

 四つ子が吸血鬼の血を引いていることは、『煌星の影』(こうせいのかげ)レオ・ヴァルディのせいで学園全体に広まってしまったが、『創世神』の血を引いていることは誰も知らない。


 『創世神』の父親との約束で、例外はいくらかいるが、『創世神』の血を引いていることは他人に隠している。


 そのため、この男が知るわけはないが――


「本来は全てのチームを回って探すつもりでしたが……なぜかAからCに力が強く反応していたので」


「……どうやってそんなの探してんだよ?」


「私の仲間に優秀な技術者がいましてね、これが各執政ごとに一つ配布されているんですよ」


 ロエンが黒銀のロングコートのポケットから、羅針盤のようなものを取り出す。その瞬間――


「――ッ」


 空気が変わった。言葉では言い表せない、圧しかかるような空気が場を包み込む。


 ロエンの持つ羅針盤の針が動き出す。その中央に埋め込まれている何かしらの結晶が、紫色の反応を示す。


「おや、思ったより反応が強いですね。かなり高濃度な力です。回収しましょうか――」


 ロエンが再び、ポケットに手を入れ、新たなアイテムを取り出そうとした。

 しかし、それよりも先にリュミエールの氷の槍がロエンに向かって放たれた。


 ロエンはそれをギリギリで避け、リュミエールを睨む。


「危ないですね。急に何をするんですか?」


「貴様こそなんじゃ? 妾らの戦闘を邪魔しおって。失礼にも程がある」


「はぁ……あなたに構っている暇はないんですが。まあいいでしょう。相手になってあげますよ」


 そう言うと、ロエンは腰から剣を引き抜く。

 それは、刃の節に黒銀の鎖が連結されている、鞭のようにしなる剣だ。


 それを引き抜かれた瞬間、空気がさらに重く感じた。


「ふむ、なかなか面白い形の剣じゃな」


「ありがとうございます。時間がないのですぐに終わらせましょう」


「受けてやろう。妾の邪魔をした事を後悔させてやろう」


 二人はお互いに剣を構え、見つめ合う。

 静寂が訪れた空間は、氷の冷たさと重くなった空気が漂っていた――







読んだくれてありがとうございました

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― 新着の感想 ―
いきなり仲間割れを始めたんですね。 一枚岩じゃない感じで、敵にも背景事情がありそう……。
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