エピローグ『平和な世界』
あけましておめでとうございます!
エピローグです!
――『破壊神』アズラエルと『魔王』ヴァルザードとの、世界を巻き込んだ戦いから一週間。世界は『創世神』の力で完全に修復され、殺された人々も何事も無かったかのように生き返っている。
平和になった世界で、ライン・ファルレフィアは目を覚ました。
「……もう朝か。早いな。アステナ、起きて」
「ん……もう朝? うーん、おはよう」
陽光が差し込む中で、隣に眠るアステナを起こし、眠い目をこする。世界を書き換えたことで、一緒に戦ってくれた『剣聖』らの人間以外は、世界が一度滅亡寸前まで追い込まれたことを知らない。故に、何事も無かったかのように魔法学園で授業がある。
「大変だね、学生は。私には朝から学園なんて耐えられないや」
「引きこもりだったし、行くんだったら大変だろうな」
「あー! 引きこもりって言った! もう! 許さないよ!」
「ごめんごめん。下行こう」
頬を膨らませるアステナに向かって軽く笑い、扉を開けて部屋から出る。長い廊下を歩いていると、アステナが声をかけてきた。
「ありがとね。アスタリアたちを戻してくれて」
「良いよ。俺らが力を持つよりも、これまで通り世界を管理してもらった方が安全だろうし。それに、いつかはみんな……居なくなるから。四人だけで生きるのも寂しいじゃん?」
「それもそうだね」
今は学園で友達が出来て、楽しく過ごしている。だが、いずれは大人になり、四つ子以外の友達は寿命を迎えていなくなってしまう。そんな未来をただ四人だけで過ごしていくのは、彼らにとっても苦痛だ。
――四つ子としては、神の力を失い、人間となったアステナと属性神たちを、アスタリアたちのことで悲しませたくないというのも理由の一つだ。
それと、アステナたちにも力を戻した理由もある。
(俺より先に、いなくなって欲しくないしな。まだ、一緒に……)
「……」
「……? どうした? そんなじっと見て」
「い、いや!? なんでもないよ!」
何故か顔を真っ赤にして顔を背けるアステナに首を傾げ、再び正面を見ながら歩く。そんなラインの横で、アステナは心の中で喋っていた。
(私が思考も見れるって覚えてるのかな……? ――一緒に、ね? 私だって、ずっと君と……)
――階段を降りる足音が響く。一階に着き、ゆっくり進んでいくと食卓が見えた。
「あ! おはようラインお兄ちゃん! アステナさん! ……あれ? どうしたの?」
「おはよう。どうしたって、何が?」
「え、なにかある?」
何故か不思議そうな顔をするレンゲと目が合い、ラインとアステナは辺りを見渡す。だが、もちろんなにもない。変なところなんてどこにもないのだから。
「おはよう兄さんたち。――おっと、どうしたの?」
「だから何が!?」
「おっはよ〜ございま〜す。あれ〜どうしたんですか〜? 今日はいつにも増して仲良いですね〜」
アレスとエルフィーネの言ってる意味が分からない。ずっとキョトンとしている二人を見て、椅子に座っているセツナが呆れたような顔で指を指した。
「それ、もしかして気づいてないの? 無意識で繋いでたの?」
「え? ――あ」
セツナの指差す方向は、ラインとアステナの間だった。意味も分からぬまま視線をゆっくり下げていくと――意味が分かった。
ラインとアステナの手が繋がっているのだ。今見るまで全く気づかなかった。いつ繋いだ? 一体、いつ……
『ごめんごめん。下行こう』
(あ……あの時、無意識に繋いじゃったんだ……)
部屋を出る前に、自ら手を繋いだことを思い出したアステナ。急激に恥ずかしくなり、顔が赤くなるも、手を離そうとしない。
「あ、あ、手繋いでたのか……!? ぜ、全然気づかなかった……」
「そ、そうだね。無意識だったよ」
――両者顔を真っ赤にしながらも、お互いに手を離さない。その様子を見て、ほかの面々は無言になってしまう。
すると、
「? 皆様突然黙ってどうかしました――か?」
食卓に運ぶための料理を持ち、ひょこっと顔を壁から出したセレナ。彼女もまた、二人が手を繋いでいる様子を見て黙ってしまった。
(――気まず)
そして、新たな一日が始まった。
◆◇◆◇
――朝のホームルーム。いつも通り、担任のカイラス・ヴァルディ先生がドアを開け、教卓にやってくる。
そして、朝の挨拶を――と、全員が立ち上がろうとするのを、先生は止めた。
「その前にだ。突然だが、今日からうちのクラスに転校生が二人やってくる。自己紹介してもらうから待ってろ」
「え、またうちのクラスですか? このクラス転校生多くない?」
と、男子生徒の一人が呟く。確かにその通りだ。セレナとエルフィーネの二人が既にこのクラスに転校生として来ていて、今度はまた二人来る。うん、転校生が多い。
「入ってきていいぞ」
「はい」
「はーい」
と、男女の声が扉の外から聞こえた。ガラッとドアが横にスライドし、二人が教室に入ってくる。その姿を見て、『剣聖』、『魔導師』、エリシアが「えっ!?」と驚いた顔をした。
なぜなら、転校生の二人は――
「じゃあ自己紹介してくれ。『権能』も頼むぞ。授業で必要だから」
「初めまして。ロエン・ミリディアといいます。特技は魔法ですね。えっと……『権能』は、《引力の王》と《斥力の王》です。よろしくお願いしますね」
「はじめましてー。アタシの名前はサフィナ・カレイドでーす。えっとー、お花とか好きでーす。あとなんだっけ? あー『権能』は、えーと……《幻焔花界》と《夢虚牢城》でーす。よろしくねー」
と、それぞれ自己紹介を終えた。騒がしい拍手が鳴り、二人を新たなクラスの一員と迎え入れてくれた感じがする。
「ホームルームは終わりだ。一限に遅れないようにしろよー」
そう言って、先生は教室から出ていった。一限が始まるまでの休み時間、ロエンとサフィナに大量に人が集まる中、アッシュたちは四つ子の近くに来ていた。
「おいおい、なんであいつらがいるんだ? 普通に学園生活送る気じゃねえか」
「ロエンは『神龍オメガルス』との戦いの時、ルシェルを助けに来たから顔が割れてるだろう? それに、『ラビリンス・ゼロ』ではカイラス先生を気絶させてるし……。もしかして、ラインたちがなにかした?」
「まあな」
アッシュの言う通り、ロエンは全生徒に、サフィナは先生に顔が割れている――はずだ。それはその通りなのだが、実はラインが『夢の神』の力で、その出来事に関する記憶を生徒と先生の脳内から消している。
因みに、二人が紹介していた『権能』はもちろん『異能力』だ。だが、『異能力』を知る存在はいないので、結構堂々と『権能』と偽った。
「なんでそんなことしたの?」
エリシアが首を傾げ、じっと目を見つめてくる。すると、ラインは腕を組み、答えた。
「クロイツの件といい、今回の件といい、あいつらに助けられたのは事実だしな。――だから、まあ、神からのプレゼント、って感じかな」
そう言ったラインだが、それだけが答えではない。ラインは、"彼"に頼まれたことを現実にしたのだ。
「こんなことを言える立場ではないが、一つだけ聞いて欲しい。ロエン、サフィナ、ヴァルクについてだ。あいつらは幼馴染でな。平和に暮らしていたところを、俺らのせいで壊された。だからせめて、残りの人生くらいは楽しく過ごして欲しいと思っている」
それは、『破壊神』アズラエルが言った言葉だ。ただ駒としか思っていなかった【十執政】であり、あまり命令を聞いてくれなかった三人。そんな所に、アズラエルは興味を惹かれていた。
『第一位』のソールでさえも、命令を破ることは九割九分ない。それなのに、全然言うことを聞いてくれない人間というのは新鮮だった。
しかも、感情がないサフィナとつるんでいることも興味深かった。
感情がない人間を、どうしてそこまで信用できるのだろうか。そんな考えを打ち砕くかのように過ごす二人を見て、気付かぬうちに親目線で見ていたのかもしれない。
(でも、もう感情はあるだろ? その顔が物語ってる)
今までであれば、表情の変化がほぼなかっただろう。だが現在、ロエンに質問責めをしている複数の女子に圧をかけるようにじっと見ている。
「全く、好きなら好きって素直に伝えれば良いのに。なぁ?」
「ハハハーソウデスネー。――セツナ様、ライン様って鈍感すぎませんか?」
「ね。ほんとにバカだと思う。どの口で言ってんだか」
「鈍感ですね〜。でも〜、ライン様も本当は言えないだけなんじゃないですか〜?」
「僕たちは兄さんの背中を押すべきなのかな?」
「よーし! 背中押しちゃおっか!」
と、ラインに聞こえないくらい小声で呟いていたのだった。
◆◇◆◇
一方、ヴァルク・オルデイン――いや、この学園ではアレン・クロスだったか。彼のいるクラスにも、一人の転校生が来ていた。
「はい、入ってきていいわよ」
「はーい!」
(――は? 転校生はロエンとサフィナだけのはずじゃ……)
元気よくドアを開け、入ってきた一人の女性。それを見て、アレンは目を見開いた。
「自己紹介お願いね」
「あーしの名前はミレーナ・ネフェリア! 料理とか結構なんでも出来るよー。あ、『権能』はね、えっとー《透明化》と《透過》だよー。よろしくね」
まさかの"元"【十執政】『第五位』。軽い自己紹介を済ませ、ウィンクをする。彼女が来るなどの話も聞いていないアレンは口をあんぐりと開け、声が出ずにいた。
一方で、めっちゃ美人な転校生がやってきたことでクラスメイトは大盛り上がり。
空いている席に先生から誘導され、通る道でアレンと目が合う。その瞬間、
「これからは毎日一緒にいられるねーヴァルク……じゃなくてアレンー! 学園でも仲良くしてねー?」
と、アレンに力強く抱きつき、頬をスリスリしてきたのだ。その一瞬で、男子生徒たちから恨みがましい瞳を向けられてしまう。
(――勘弁してくれよ……)
心の中の声は、誰にも聞こえないのであった。
◆◇◆◇
――『破壊神』アズラエルと『魔王』ヴァルザードが屠られた次の日。
瞳に吸い込まれるような美しい空間。黄金の空が輝き、現実とは異なる場所にいることを感じさせる。
そんなところで、三人の男を取り囲む神々がいた。
「レグナード・ロウ、レヴ・ダイナス、ルシェル・バルザーグ、で合ってるね? ライン君たちに頼まれて、わたしたちが貴方たちを裁くね。まあ、もとよりそのつもりだったけど」
『時間の神』アスタリアが見つめるのは二人の【十執政】とその部下。三人とも血液で拘束されていて、動けない。
「ここは……。ハハッ、オレら捕まったのか」
「くそ……僕の『権能』も使えない……」
「貴方たちは世界が滅びる方向に手伝った。許される行為ではないよね。もう言い分は聞かないから、千年間は苦しんで」
冷たい声色だ。『生と死の神』に見られたような恐怖が三人を襲う。冷や汗をかいていると、彼らの後ろに次元の扉が開き、三人とも――否、レヴを残して二人が宇宙空間に飛ばされていった。
「な、んで、俺だけ……」
何故か残ったレヴは疑問と怒りの籠った瞳をアスタリアに向ける。すると、アスタリアは睨みながら答えた。
「わたしの判断じゃないよ。礼ならライン君に言うことだね。貴方を裁こうとしたわたしたちを止めて、生かそうとしたんだから」
「あいつ……勝手な真似を……馬鹿どもめ……」
「別にわたしは頼まれただけだから、貴方を消しても良いんだよ? それが嫌なら、せいぜいライン君たちの悪口を言わないことだね。――フォカリナ、やって」
自分たちが慕っている『創世神』アルケウスの息子であり、世界を救って、自分たちも助けてくれた。そんな彼らを侮辱されるのは気分が悪い。
本当ならレグナードたちと同じ目に合わせたい所だが、必死に堪え、『夢の神』フォカリナの肩を叩いた。
「さーて、じゃあねー。もう会うことは無いと思うから」
『夢の神』がそう呟き、レヴの頭を触る。すると、彼の意識は一瞬で暗闇に落ちた。
「行ってらっしゃい」
そして、『空間の神』スピリアの力で、レヴが住む、カイラス・ヴァルディ先生の家へと送られた。
「――彼の【十執政】としての記憶を消し去り、カイラス・ヴァルディ先生に危険から救われた哀れな子供にする、と。確かに、【十執政】としての記憶が無くなれば安全だとは思います。しかし、あの性格はそれだけで治るようなものでしょうか……」
「ボクもそう思うな。クロイツ・ヴァルマーに協力してたし、根から危険な人間だと思う。――でも、彼を生かすと決めたライン君を信じようか。もし、また世界を危険に陥れる人物となるなら、容赦なくボクが『死』を与えるよ」
『法則の神』ファルネラと、『生と死の神』アリシアスが懸念を述べる。記憶を失い、【十執政】『第九位』レヴ・ダイナスとして生きるのではなく、この先はレオ・ヴァルディとして生きることになる。
それで安心安全なのだろうか。不安で仕方がないが、彼を生かすと決めたラインを信じよう。
「――アスタリア、さっき話したことだけどさ。どうする?」
「――それ、見間違いとかじゃなくて本当に?」
「うん。ボクが何度も確認したから。今のところ害はないけど、もしかするといずれ……」
「僕と姉さんが確認してきても良いよ。実害があるかは確認しないといけないからね」
「そんなにしなくてもよくなーい? もう大丈夫でしょ? 姉ちゃんたちは心配しすぎー。――痛っ! もう! お姉ちゃん!」
「フォカリナ、そうやって油断するのは良くないですよ。先日の二の舞を演じたくはないですからね」
不安そうに、"何か"について話しているアスタリア、アリシアス、スピリア。
そんな三人とは対照的に、楽観的な考えをしているフォカリナの頭をコツンと叩いた『法則の神』ファルネラ。
いきなり頭を叩いた姉をぷくっとした顔で見つめ、ため息をついた。
彼女らがどんな話をしているかは分からないが、彼女らが不安を抱いているということは重大なことなのだろう。
「それじゃ、僕と姉さんは見てくるね。行ってくるよ」
「あ、スピリア待ちなさいって。――はぁ、まあいいや。行ってくるね」
そう言い残し、『時間の神』アスタリアと『空間の神』スピリアは、何処かへ消えていった。
◆◇◆◇
"大切な日"と言われたら何を思い浮かべるだろうか。皆それぞれ浮かべるものはあるだろうが、今日は四つ子にとって一番大切な日だ。
なぜなら、
「「「「「「誕生日おめでとう!!」」」」」」
ファルレフィア邸に集った、『剣聖』、『魔導師』、エリシア、リリス、レオ、ロエン、サフィナ、ヴァルク、ミレーナ、メイド二人、十一人の神々の、総勢二十二人がそう叫んだ。
彼らの目の前には、頭に尖った飾りを付け、嬉しそうな顔でお互いを見る四つ子がいた。
「「「「ありがとう」」」」
「では皆様座ってください。料理は準備してありますので」
セレナがそう言ったことで、全員が縦に長い机に座り、目の前にある豪華な食事に目を輝かせた。
「凄い……。セレナが作ったの?」
「私と、エルフィーネとアステナ様で作りました」
エリシアの質問にセレナがそう返すと、目の前にあるスープを指さし、セツナがエルフィーネの方を向いた。
「……ねぇエルフィーネ、このスープってもしかして……」
「は〜い、アタシが作りましたよ〜。今日こそは絶対美味しいはずですよ〜。信じてくださ〜い!」
「……うっ」
エルフィーネは、料理は上手なのだが、スープだけ一向に上手くならない。それを飲んだ人が浮かべるのは苦悶の表情だ。だが、彼女が頑張って作ってくれたもの。飲まない訳にはいかないだろう。
覚悟を決め、スプーンですくって口に運ぶ。
すると――
「――美味しい」
「! ほんとですか〜? やった〜!」
「ちょ、ちょっと、止まってくださいよ」
ボソッとラインが呟き、エルフィーネは目を輝かして嬉しそうにゆらゆら動く。それによって動くツインテールの金髪がセレナの顔にかかり、痒くなった顔をかく。そしてため息をつくと、
「良かったですね、エルフィーネ。これもアステナ様のおかげですよ」
「アステナが何かしたのか?」
「うん。アドバイスをね。私は『知恵の神』だし、どんな料理も美味しく作れるからね。色々教えたんだ。教えただけで美味しく作れたのは凄いね。料理上手だし」
「ありがと〜ございま〜す!」
――賑やかな食事の時間は過ぎた。食卓では女子グループと神グループが話していて、庭園では地面に座り、真っ暗な空を見上げる男子グループがいた。
「もうすっかり夜だね。今日も早かったな」
「お前らは今日で十六歳かー。年越されたの気に食わねぇ」
「俺らの方が誕生日早かったんだから仕方ない。――てか、わざわざ来てくれてありがとな」
「僕たちは友達でしょ? それくらい当たり前だよ」
アッシュがそう返すと、ラインは目をつぶってクスッと笑う。
「友達……か。ハハッ、だよな」
「どうした? らしくねえな」
「俺らは学園に入るまで人間の友達がいなかったからさ。こんな風に誕生日をしたことも無かったし。だから、ちょっとだけ感動してるっていうか……」
こんなに大勢が誕生日会に来てくれたことに嬉しいのか、ほんの少しだけ嬉し涙を流してそう話すライン。すると、今度はグレイスが笑いだし、ラインの背中をバンバンと叩く。
「まだ十五年……あ、十六年か。それくらいしか生きてないんだから考えすぎなくていいって。これからは毎年俺らが祝ってやるよ」
「グレイス……」
いつも口が悪い所ばかり目立ってしまうグレイスだが、意外にも根は優しい。そのことは彼と過ごすうちに段々と分かってきたことだが、なんだか新鮮に感じてしまう。
「――ん、そろそろ時間かな。みんな出てきたね」
アレスがそう呟き、みんなが屋敷の扉に目を向ける。すると、重い扉はゆっくりと開き、セツナ、レンゲ、エリシア、リリス、サフィナ、ミレーナが出てきた。
「みんなそろそろ帰るってさ」
セツナがそう言うと、五人はこちらに近づいてくる。すると、男グループはゆっくり立ち上がった。
「じゃ、俺らも帰るかー。早く帰らねえと先生に怒られちゃうし。先に帰るわ。じゃあなー」
そう言って、手を振り、走っていくのはレオだ。もちろん、彼は【十執政】という存在が記憶から抹消され、何も分からない。
「――何もなかったですね。私たちのことも全く知らないようでしたし」
「あいつをよく呼ぼうと思ったな、お前らのメイドは」
ロエンとヴァルクがそれぞれつぶやく。
誕生日会を開催しようと計画を立てていたのはセレナとエルフィーネだ。記憶を失ったとはいえ、危険な相手を呼ぶのはどうにも気が引けた。だが、自分らのご主人様が生かすと決めたため、主人を信じて招待したのだ。
「ロエーン、帰ろー」
「ヴァルクー! 一緒帰ろー!」
大声でそう叫び、サフィナとミレーナが近づいて来る。ため息をつき、面倒くさそうな顔をするヴァルクを見て笑い、
「私たちも帰りましょうか、ヴァルク」
と、ロエンは言った。
「じゃーねー。誕生日おめでとー。また明日ー」
「バイバーイ! またねー。ねえヴァルクー楽しかったねー」
「だからお前近い。――まあ良いけど」
ラインたちに手を振り、すぐさまヴァルクの腕に抱きつくミレーナ。呆れながらも、ヴァルクはそれを許した。
――そして、四人は仲良く帰っていった。
「じゃ、アタシたちも帰ろっか、エリシア。早く寝ないとー」
「そうだね。――あ、そうだ。私たちと一緒に帰らない? もう結構暗いし、二人だけで帰るのは心配だから」
「ああ良いぞ。どうせ俺らも二人で帰るとこだったし」
「行こうか。送って行くよ。じゃあね、みんな」
リリス、エリシア、グレイス、アッシュはそう言って、四つ子に手を振って帰っていった。
「――なんか一気に静かになっちゃったねー。もうちょっと一緒にいたかったなー」
「友達を呼んだ誕生日会ってしたことなかったし、初めての経験で嬉しかったよ」
「今までは父さん、母さんとイグニスさんたちしかいなかったからな。今日はめちゃくちゃ大人数だったな」
「あんなに大勢に祝われたこと無かったから、ちょっとビックリしちゃった」
レンゲ、アレス、ライン、セツナがそれぞれ呟く。そして、お互いを見て笑うと、仲良く屋敷へと戻っていった。
◆◇◆◇
「ふぅ、スッキリした。髪を乾かさないと……。あれ?」
誕生日会は終わり、来てくれた人達はみんな帰っていった。そしてそれぞれお風呂に入り、最後に入ったアステナが長い髪をタオルで拭きながらリビングに来た。
するとそこには、四つ子がソファーに座って寝ていた。
ラインとアレスが真ん中に座り、その両隣をレンゲとセツナが座っていた。
(仲良いね。本当に)
「お風呂上がりですか? アステナ様。あれ、もしかして寝てます?」
「寝てるね。四人仲良く。このまま寝かせようか」
「そうですね。あ、エルフィーネ、毛布持ってきてくれますか?」
「は〜い」
――そして、エルフィーネが自室から毛布を持ってくると、
「持ってきたよ〜。あれ〜二人も寝ちゃった?」
そこには、同じようにソファーに眠るアステナとセレナがいた。レンゲの隣に座るアステナと、セツナの隣に座るセレナ。仲良く眠る六人にゆっくり毛布をかけ、エルフィーネはセレナの隣に座った。
「誕生日おめでとうございます、ご主人様たち」
そう言って、エルフィーネも眠りに落ちた。
「――あら、寝てるわ。ふふっ、本当に仲良いわね」
「来るのが遅かったね。誕生日はお祝いしたかったけど、寝てるし明日しようか」
小さな声が部屋に響く。それは四つ子の母親のルナミアと、父親のアルケウスだった。宇宙旅行をしている夫婦だが、今日は一年に一度の大事な大事な四つ子の誕生日。一度、屋敷に戻ってきたのだ。
だが残念ながらパーティーは終わり、四つ子はソファーでぐっすり寝ている。祝えなかったことを残念に思いながらも、二人は自分たち夫婦の部屋に戻っていった。
――四つ子が救った世界は、今日も、明日からも続いていくのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
本作品はこれにて完結となります!
楽しんでいただけたでしょうか。
ここまでお付き合いしていただき本当にありがとうございます!
続編も製作中ですので、良ければ次回もお付き合いしてもらえれば嬉しいです!
ありがとうございました!




