プロローグ『創世』
プロローグです。
――『創世神』と吸血鬼の間に生まれた四つ子の兄妹はただ平穏を望んでいた。
明日から通う魔法学園で、友達を作って平和で大きな問題もなく過ごそうと思っていた。
――だが、そんな望みは打ち砕かれてしまった。
◆◇◆◇
――青空は真っ赤に染まり、周りの木々は燃えて火柱を上げている。爆音が周りを取り囲み地獄絵図のような環境の中、上空には二人の男が立っていた。
破壊を楽しんでいる二人を睨みつけながらも、真っ白の髪と瞳を持つ四つ子は膝を立てて地面に倒れてしまっている。
そんな中、崩壊する世界が止まった。そして、目の前に現れたのは美しい女だった。腰まである金髪をなびかせながらこちらに向かって歩いてくる。銀色に光る砂時計のような模様が散りばめられたドレスはふんわりと広がり、時の流れを紡ぐようなものを感じさせた。
「――俺たちは、ただ平穏に暮らしたかっただけなのにな」
そう呟くと、時を操る女神は言った。
「わたしたちの――」
笑顔の女神に対し、涙がこぼれそうになるのを必死に堪えながら差し出された手を握る。
「――ありがとう」
女神の最後の言葉を聞き、止まった時間の中でそれ以上会話を続けることはしなかった。ただお互いに見つ合い、彼女らの願いを、彼女らとの約束を、守ることを決意する。
時が動き出すと、四人は全身に力が溢れ出して来る。それは、今まで彼らになかった大権が在るべきところへ帰ってきたことを意味する。
力を取り戻した白髪の男は空を睨む。
「俺たちが――」
――世界も、神も救う。
――もはや力を失った知恵の権化が、遥か彼方で嬉しそうに微笑んだ気がした。
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