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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第二章 総合ギルド 編

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第78話 お買い物


僕たちは買い物をするために、市場までやってきたよ。


市場にはいろいろな物品が並び、年中日夜、取引がさかんに行われている。


「うぁ……すっごい人なの……」


ヒナギクは目を丸くして驚いている。キョロキョロ人の顔をみて歩く。


ヒナギクがこんな人ごみにくるのは何年振りだろうか。まだ元気だったころは、こうしてよく手を繋いで散歩に出かけたものだ。


僕の右手にはヒナギクの小さいおてて、左手にはヒナドリちゃんの柔らかいおててが握られているよ。なんだか照れくさいけど、はぐれないようにしっかりと繋がないとね!


両手に花だ。


「ふたりとも、欲しいものがあったら、すぐに言うんだよ!」


僕は言う。


「わかったなのー!」「こんなにたくさんあると、迷ってしまいますわね……」


2人のかわいい女の子と手を繋いでいるものだから、かなり注目されてしまう。


我が妹ながら、ヒナギクはかなり可愛い。ライラさんが最強の美人なら、ヒナギクは可愛さ部門第一位だ!


ヒナドリちゃんもそんなヒナギクにそっくりだから、当然可愛い。


「おいおい、あの男……なんだってあんな……」


「うらやましいぜ……」


道行く人が、そんな声を上げる。まあもし僕が同じような状況に遭遇しても、同じようなことを思うだろう。


僕は歩きながら、しばしの間優越感に浸った。


「あ! これ、キレイなのー!」


「どれどれ……?」


ヒナギクがお気に召したのは、複雑な刺繍(ししゅう)が施された外国製の一枚布だ。


たしかに、こんな細かい模様の布はなかなか見たことがないね。


「よし、じゃあこれをください」


「まいど!」


僕はすぐさまそれを買う。ここではいち早く声をあげないと、すぐに売り切れてしまうからね。


「帰ったらこの布で、いろいろ作ってあげますの」


ヒナドリちゃんが自慢げにヒナギクに言う。


ヒナドリちゃんは裁縫も得意で、よく服なんかも自作しているんだ。


「わーい! ありがとうなのー兄さん、ヒナドリちゃん!」


ヒナドリちゃんには料理のレシピ本を買ったよ。


そんなのでいいのかって聞くと、ヒナドリちゃんはうれしそうにこれがいいと答えた。


ヒナドリちゃんは料理をすること自体が好きなんだそうだ。


そんな感じで、僕たちはお買い物を楽しんだ!





だが僕たちが買い物を終え、帰りの道へと歩いていると……。


見るからにガラの悪そうな男たちが声をかけてきた。


「やあお嬢ちゃんたち、俺たちと遊んでいかないか? そんな優男なんてほっといてさ」


この手の輩にはうんざりするね。まったく、仕方のない連中だ。


「うう……兄さん、こわいの……」


「なんなんですの、この山猿は……。バカそうなのに声をかけられましたわ……」


2人が怖がるから、やめてほしいんだけどなぁ……。


「ふたりとも、僕の後ろに下がって!」


僕は男たちのまえに、たちはだかる。


「おいおい、このもやしっ子、俺たちとやる気だぜ? 身の程知らずもいい加減にしろよ?」


いい加減にしてもらいたいのはこっちなんだけどなぁ。


せっかくの楽しい一日を邪魔されたんじゃ、たまったもんじゃない。


ここはびしっと言ってやろう。僕にだって、そういうときはある。


「僕の妹たちに汚い言葉で迫らないでください。耳が汚れてしまいます」


「はぁ? なに言っちゃってんのコイツ? おい! ぼこぼこにしてやれ」


どうやら暴力に訴える気らしいね。


衛兵に通報してもいいけれど、そんな暇はなさそうだ。


僕は妹たちを守ると決めたからね、こんな奴らに後れをとるわけにはいかない。


僕が自力で、まもるんだ!



 ――活性(ブースト)



僕は自分の右腕にこっそり活性(ブースト)をかける。


部位を制限すれば、体力的な負担も少ない。


「ごちゃごちゃうるせえよ!」


男の一人が僕に殴りかかってくる。


だが僕はそれを、右手の人差し指だけで(・・・・・・・)受け止める。


「な……なんだこいつ……!」


活性(ブースト)で筋力を上げた僕からすれば、こんなヤツのこぶしは赤子のように軽い。


「まだなにか用がありますか? これ以上、僕たちの休日を邪魔するというなら……僕もさすがに考えがありますが……?」


僕は頑張ってドスの効いた低い声を出してみる。似合わないけどね。


でも妹たちを守るため、精一杯相手を威嚇する。


「……っひ!?」


どうやら効いたようだね。男たちはさっきとは打って変わって、恐怖に顔を歪ませている。


「に、逃げろ……! 殺されちまう!」


男たちはそう言って、足早に去っていった。


いや殺さないけどね……。物騒な発想の持ち主だなぁ……。


「兄さん、ありがとうなのー」


「大丈夫だよ。怖い思いをさせてごめんね」


僕はいつものようにヒナギクの頭に手を置く。


あ! なんだか背が伸びた気がするね。


元気になって、栄養状態もよくなったからかな?


これからもっともっと元気になるといいなぁ。


そして成長を見守りたい。そのためにも、僕がこれからも守るんだ!


「お兄様、たくましいですわ! さすがです!」


ヒナドリちゃんもうれしそうに僕にくっついてくる。


「これからも僕がふたりを守るからね。安心してね」


帰りも仲良く手を繋いで帰った。


夕飯はもちろんヒナドリちゃんの料理!


毎日こんな愛情たっぷりの手料理が食べられて、僕は幸せだな……。





久しぶりの平凡な日常に、幸せをかみしめるヒナタ。


だが一方でガイアックは人生の中で、最も苦しいであろう時期に差し掛かっていた……。


対極的な二人の状況に、これからどんな事が待ち受けるのか……!


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