第77話 ヒナギクとの日常
ヒナギクの病気が治り、僕たちは幸せな日常を取り戻した。
もう心配事はほとんどない。これからはいいことばかりだ。
まあ、これまでいろいろあったけどね……。
あれから一夜が明け――。
今日は特別に休みをもらった。これもライラさんからのお祝いなのだそうだ。
正直、昨日は心身ともに疲れたから、ありがたい。
「うん……むにゃむにゃ……」
明け方、僕がまだ浅い眠りに浸っている頃だ。
「兄さんー! おはようなのー!」
――ぼふ!
僕の身体の上に、ヒナギクが飛び乗ってきた。
「ちょ、朝から元気だなぁ……!」
僕はいきなりの目覚ましに面食らいながらも、喜びを隠せない。
だって、こんなに元気なヒナギクは久しぶりだから……! 今一度、幸せをかみしめる。
「こらヒナギク! お兄様は昨日の救出騒動で、まだ疲れているのよ?」
台所から、調理器具を持ったままのヒナドリちゃんが、ひょこっと顔を出す。
そういえば、さっきからいい匂いがしている。
こんな朝早くに起きて、僕たちのために朝ごはんを作ってくれていたんだね……。
「大丈夫だよヒナドリちゃん! 僕はもう元気いっぱいだよ! ヒナドリちゃんのおかげでね! 僕もヒナギクの元気に負けてられないからさ!」
僕は眠気を吹き飛ばすように、大きく伸びをした。せっかくヒナドリちゃんが早起きしてご飯を作ってくれているんだ。冷めないうちに起きないとね!
それに、僕はヒナギクとやってみたいことがたくさんある。きっとヒナギクも、遊びたくてうずうずしていたのだろう。それでこんなに早く起こしにきたんだね。
「さぁ、さっそくご飯をいただこうか」
「ごはんを食べたらあそぶなのー!」
「そうだね! 今日はヒナギクの好きなことをして過ごそうか!」
「わぁーい! やったーなのー!」
よしよし、ヒナギクは可愛いなぁ……。病気の時の、弱ったヒナギクももちろん可愛い。なんというか、まもってあげたくなる感じだ。
でも、やっぱり元気なヒナギクが一番だな。コロコロ変わる表情が、本当にイキイキしていて、見ていてこっちまで幸せになるよ。
「まったく、お兄様はヒナギクにあまあまですの……。まあ仕方ないですわよね。ようやくヒナギクが元気を取り戻したんですもの」
「そうだよ! 今日はヒナドリちゃんも家事のことを忘れて、思いっきり遊ぼう!」
「わ、私もですの? しょうがないですわねぇ……」
ヒナドリちゃんも嬉しそうだ。ヒナドリちゃんにはこれまで沢山お世話になったしね。
ヒナドリちゃんにも楽しい思いをしてもらいたい。
「今日はなんでも好きなものを買っちゃおう!」
「ほ、ほんとですの!? さっすがお兄様ですわ! 太っ腹!」
「わぁーい! お買い物なのー!」
やっぱり二人ともお買い物が好きなんだね。女の子はお買い物好きだよね。
「ご飯を食べたら、さっそく出かけようか」
「でかけるなのー!」
僕たちはわくわく感に胸を膨らませながら、同時にお腹も膨らませる。
ヒナドリちゃんのスープは栄養満点で、いつ食べてもおいしいなぁ!




