第48話 協会長は呆れ果てる【side:ドレイン・ヴァン・コホック】
私は医術協会会長を任されている、ドレイン・ヴァン・コホックだ。
最近腰が痛くてかなわん。
だというのに、今日も朝から面会が入っている。
相手はあのガイディーンのバカ息子――ガイアックだ。
この間しっかり叱ってやったが、さてさてどうなるだろうな。
ここから反省して、しっかり成長することを期待しているが……。
まあそれは難しいだろうな。
それにしても今日はなんの用だ?
爆破テロの一件を反省して、謝罪と決意表明にでも来たというところだろうか?
それかアドバイスをもらいに来たのか、まあなにかいいことだといいが……。
私が面会に訪れると、そこにはアホ面でニヤニヤしているガイアックがいた。
なんだあいつ?
そんなに私に会いたかったのか?
気色悪い奴だ……。
「おいガイアック。今日は私を呼びつけて、いったい何の用だ?」
「これはこれは協会長殿……。お元気そうで」
「挨拶はいい。手短に澄ましてくれ。私は今日も忙しいんだ」
「今日は告発に来ました。ビッグニュースですよ! きっと会長もびっくりすると思います」
「まったくお前は……。自分がへまをしたというのに、それを棚に上げて他人の告げ口をして点数稼ぎか? まったく呆れたヤツだな……。まあいい、それで?」
「実は例のギルドの、ヒナタというポーション師。アイツは医術師免許を持っていないんですよ! それなのにアイツは、爆破テロのときに無許可で魔法手術をおこなったんです!」
自信満々に、嬉しそうに話すガイアックを見て、私は開いた口が塞がらない。
まったく、コイツはもうダメかもしれんな……。
期待した私が馬鹿だったか……。
「それを私が知らんと思ったか?」
「はい?」
「そんなこと、とっくのとうに知っている!」
「え、じゃあなんで……!」
「現場にはザコッグ医師も居合わせた。それに緊急事態だったのだから、問題はなかろう」
「そ、そんな! アイツは規則を破ったんですよ!? 医師の誇りを汚したんだ!」
まったく、言うに事を欠いて、国の英雄になんてことを言うんだコイツは……。
呆れてものも言えないが、まあ仕方がない。
ここはこいつのためにも、もう一度キツク言っておくとするか。
灸をすえる必要がある。
「だまれ! 医師の誇りを汚したのはお前だ、ガイアック!」
「なに!?」
「彼は国の英雄だぞ!? 国王にも表彰されたんだ。そんな彼を罪人にしようというのか? バカ者! 規則なんてものはなんとでもなる!」
「そんな! じゃあいったいなんのための規則ですか!? なんのための医師免許なんですか!? 秩序はどこに!?」
ガイアックよ――。
よりにもよってお前が秩序を語るか……。
「お前は医術協会会長に向けて、医術師規則を説くか……」
「はい? 規則は規則ですが?」
「もう一度読んでみろ」
私は愚かなガイアックのもとに、規則が書かれた紙を差し出す。
「ここにはっきりと書いてあるだろう? 最も優先されるべきは人命であると……。ガイアック……君はまず、医師として――いや、人として大切なことを忘れている……休みなさい」
「そんな……!」
「どうしてそうなってしまったかな……。プレッシャーをかけすぎたのがいけなかったのか? まあとにかく、もはやお前に期待はしない。二度とその顔を見せるな……」
「……っく……! 今に見ていろ……! その医術協会会長の席は俺のもんだ!」
ガイアックはそう捨て台詞を吐いて、出ていってしまった。
まったく、どうかしているよ……。
なにかこれ以上しでかさないといいが……。




