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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第三章 王国・首都 編

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ハロウィン特別SS

息抜きに書いてみました~

いつも読んでいただきありがとうございます

800万PVを突破しました、ありがとうございました

これからも最低でも月に一度は更新します


 あれからしばらくの月日がたった。

 僕たちはいっしょに暮らしている。

 もちろん、妹たちも一緒だ。

 ライラさんと僕のお給料で、大きなお屋敷を買った。

 メイド長は以前から一緒のリノンだ。


「そういえば、そろそろハロウィンの時期ですね」


 家事をしているライラさんが、おもむろに切り出す。

 今でも信じられない。

 ライラさんが同じ屋根の下にいるなんて。


「そ、そうですね……ライラさん」


 僕たちは結婚したというのに、いまだに敬語だ。

 どうしても、まだ緊張してしまう。

 いや、以前にも増して緊張することばかりだ。


「お菓子を用意しておかないといけませんね! ヒナギクちゃんたちが喜びます」


「ですねぇ……。僕もなにか考えてみます」


 僕は最近、お菓子作りに精を出していた。

 新婚ということもあり、僕たちは仕事の量を減らしていた。

 ライラさんと僕はギルドの経営面に関わり、実務は任せてあるのだ。


「ヒナタくんはポーションづくりだけじゃなく、お菓子も上手ですからね! 私も楽しみにしています!」


「えへへ……ライラさんに期待されたら、ますます頑張るしかないです」


 僕は【パンプキン】を大量に買い込んで、さまざまなお菓子を試してみた。

 まさかポーション作りで学んだことが、こんなふうに役立つなんて。





 ハロウィン当日、僕は朝からヒナギクたちにたたき起こされた。


「トリックオアトリート! なのー! 兄さん!」

「トリックオアトリートですわ! お兄様!」

「トリックオアトリートだぞ! お兄ちゃん!」


 シスターズ――ヒナギク、ヒナドリちゃん、カエデちゃん――たちが、一斉に僕のお腹に乗っかってくる。

 僕はベッドの上で、うめき声をあげた。


「ぐえええ!」


 まったく、元気なのはいいけど、朝からはちょっと困るなぁ……。

 でも、ヒナギクがこうやって活発なのは、本当にうれしい。


「じゃ、じゃあ……キッチンにいこうか。昨日からクッキーやチョコを冷やしてあるんだ」

「わーい! なのー!」


 ヒナギクが僕をぎゅーっとする。

 僕たちは新婚なのに、まるでもう子供たちがいるみたいな気分だ。


「さあ、食べて! 僕が作ったお菓子だよ!」


 僕は前々から用意していたお菓子をテーブルに並べる。

 三人ともお宝を見つけたかのように目を輝かせて、それに群がった。


「ふぅ……喜んでもらえてよかった」


 三人はそのまま勝手に遊び始めたから、僕の役目は終わりだ。

 さて、そろそろライラさんを起こしにいこうかな。

 と思っていたところだ。


「トリックオアトリート!」


 玄関の扉を勢いよく開けて、入って来た人たちがいた。

 ファフ姉や勇者さんたちだ。


「はいはい……みんなの分も作ってありますよ!」


 僕は快くみんなを迎え入れる。

 今日はこのまま、僕の家でハロウィンパーティーが始まりそうだ。

 まったく、新婚だというのに二人でゆっくりする時間もない。


 でも、僕はこんな日常が大好きだ。

 ライラさんがいて、妹たちがいて、みんながいる。

 僕は幸せを噛みしめながら、お菓子に手を伸ばした。


「……って、ニガ!」


 僕が口にしたのは、昨日ライラさんが作った失敗作のお菓子だった。

 自分のお菓子と分けて置いておいたはずなのに、間違えてしまったようだ。


「ま、いっか。ライラさんの作ったものなら、なんでも」


 みんなが僕のお菓子をおいしくつまみながら談笑しているようすを、僕はライラさんの苦いお菓子をつまみながら見ていた。

 こういうハロウィンも、悪くない。


 しばらくして、ライラさんが起きてきた。

 昨日も遅くまで事務仕事をしていたから、眠たそうだ。


「おはようございます……って、ヒナタくん、それは食べなくていいですよ! おいしくないでしょう……?」


「大丈夫ですよ。ライラさんのつくったものなら、なんでも美味しいです」


「もう……ヒナタくんったら」


 僕たちがそんなやりとりをしていると、ファフ姉からヤジが飛んできた。


「おいおい、見せつけてくれるじゃないか、お二人さん!」


「いや……これは……」


 そしてみんなで笑いあった。

 そんなハロウィン。


 そして僕たちの冒険は、まだまだ続く――。


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