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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第三章 王国・首都 編

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第111話 反撃開始【side:ジールコニア】


■■■■■■■■

時は少し前――。

■■■■■■■■


私の名はアイザック・ジールコニア。

爵位でいうと、子爵階級に当たる。

私が子爵になれたのも、なにを隠そうこの国の王――アーノルド・グランヴェスカー陛下のおかげだ。

私と陛下は旧知の仲にあり、位を超えた盟友でもあった。


「アーノルド陛下……おいたわしや」


私は病床に伏せる陛下の見舞いに来ていた。

陛下はもう数日、目を覚ましていない。

幸い、状態は安定していて命に別状はないそうだが……。

身体の機能が停止している状態だ。

こんな特殊な状況、自然のものとは考えにくい……。


「私が必ず、真相を突き止めてみせます! そして必ず、病気を治してみせます」


私は静かに眠る陛下に、人知れずそう誓ったのだ。





【side:スカーレット・グランヴェスカー】


「なに? ジールコニア子爵がお父様の病気を不審に思っているだと?」


「はい、そのようです……」


これは面倒なことになった……。

そうか、ジールコニアか……。

だが、決してボロは出ないはずだ。

何といっても、信用できる筋から手に入れた秘薬を使って眠らせたのだからな。


「殺しますか……?」


「馬鹿者、そう簡単な問題ではない」


ジールコニアは父の友人でもあり、それなりに影響力のある人物だ。

そう簡単に暗殺してどうにかなるものでもない。

余計な面倒が増えるだけだ。


「ただ……監視はしておけ……」


「はい。ヤツはどうやら、様々なコネを使って嗅ぎまわっているようです」


「まあ、ジールコニアと言えば人脈の男だからな……なかなか手ごわい情報戦になりそうだ」


私が父を眠らせたのには、崇高なる理由がある。

父は根っからの平和主義者で、戦争など考えもしない人物だった。

だがそれでは、この国に未来はないのだ!

私はこの国を変えるために、自らの父を犠牲にしてまで、立ち上がったのだ!


「っく……それをジールコニアごときに邪魔されてたまるか……!」





■■■■■■■■

時は進み、現在。

■■■■■■■■


【side:ジールコニア】


私は長い間、この件について調査を進めてきた。

その間、私自身も暗殺されかけたりして、いろいろ不測の事態はあったが……。

ヒナタくんという少年のおかげもあって、なんとか一命を取り留めた

そして調査の結果、どうも王の娘であるスカーレット・グランヴェスカー王女が怪しいということがわかった。


「まさかスカーレット様が……御父上に手をかけるなんて……!」


幼いころから知る相手なだけに、私自身、最初はショックも大きかった。

王女が暴走をして軍国化に走るなど、前代未聞のことだ。

だが、私は王のことを守るまでだ。


「それに……もしかしたらヒナタくん……彼なら王の目を覚まさせることができるかもしれない……」


彼ほどの優秀なポーション師なら、あるいは……と思ってしまう。

彼は神が私に使わせた天使なのだろう。


「ジールコニア子爵さま……! 諜報部隊のものです……」


「……! なにか進展があったのか、よし、入れ!」


「はい。失礼します」


入ってきたのは、兵士の恰好をした一人の男。

私が誇る私有の諜報部隊員の一人だ。

そしてなにを隠そう、スカーレットへ送り込んだスパイでもある。


「久しぶりだな……表彰式の、門でのやりとり以来かな?」


「ですね……あれは、肝が冷えました」


実はあの時、ヒナタくんを足止めしていた門番……。

そのうちの一人は、私の部下であり、スパイだったのだ。

彼にヒナタくんを足止めさせ、私が到着するまでの時間稼ぎをした。


そうでもしないと、ヒナタくんが暗殺される可能性もあったからだ。

私がともにいれば、その心配が少なくなると考えた。


「君はいい仕事をしてくれたよ……。それで、情報は……?」


「はい。これです。王を眠らせている薬の成分がわかりました。王女が再び入手しているのを確認しています」


「そうか……どれどれ……。これは……!?」


なぜこのタイミングで、王女は再びこれを入手したのだろうか……!

私はある可能性に思いつく。

王女はヒナタくんを目障りに思っていた。


「ヒナタくんが危ない……!」


私は急いで、出かける支度を整える。


「ジールコニア子爵!」


「私は今すぐ世界樹(ユグドラシル)へ向かう。ひきつづき、調査を進めてくれ! 解毒薬についてもだ!」


「はい!」


こうして私は、ヒナタくんのもとへ向かった。

間に合えばいいのだが――。


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