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85 会長(?)とホラー回4

 子うさぎちゃんを守っていたお守りの紐がちぎれた。


「あわわわ……! い、一体何が……!」

「おおっと。守護力しゅごりきの効果が薄れた途端、やっこさんらが押し寄せたか」

「変な造語を産み出さないで下さいこの緊迫した場面で」

「緊縛がなんだってカルビちゃん?」

「少しはシリアスな空気を保って下さい」


「 お 」


不意に、

スッと眼前に現れたのは、長い髪で顔の見えない女生徒。

ブツブツと蠢く口元。


オ"ドゴ ナンデ ゴワィ ワダジガ……


男の人にトラウマでもあるのかな?

よく分からんが強い怨念を感じる。



ギリヅ!


おっと、今度はそこの作業用机の真ん中辺りからヌッとすり抜け生えて来た一人の男子生徒。


レイ! ギリヅ! レイ!


かくかくと身体を何度も『背中側に』折り曲げるお辞儀? を繰り返す礼儀正しい? 幽霊だが、どうしてか鼻から上が無い。

この子もよく分からんが強い怨念を感じる。



ァァァ ナンデェ ミテェェ ワタシヲ ミデェエエ


んー、アイドルっぽい格好の女の子。

ツインテールでスタイルはいいけれど、顔の部分は闇にのまれたように真っ黒。

ダンスにキレはなく、糸の切れた操り人形のようだ。

喉からは潰れたカエルこような声しか漏れず、アイドルとは思えない悲惨さ。

彼女からはただただ物悲しさと、あと強い怨念がおんねん。


続々と湧いて来る幽霊達。

まるでトーナメントの出場者入場のような紹介ッッッ

今挙げた三人の他にも、人のカタチを為してない魑魅魍魎が湧く湧く。

放っておけばこの理科準備室をすぐに埋め尽くすだろう。


今更だが。

僕は常日頃から幽霊が見えているわけではなく、意識すれば見える程度レベル

そんな幽霊を、僕はたまに、好奇心でボーッと眺めたりしている。

街の歩道橋の上、ポツンと寂れた公園、外れにある静かな神社。

成仏も出来ないほど強い思いを秘めた悪霊はその容姿もハッキリしていて。

その朽ちた姿や繰り返される呪詛は様々な想像を掻き立てる。

生前の生き方、思い、挫折……そして死因。

まるで未完の小説だ。


「あわわっ、いっぱい出ました! ど、どうすればっ」

「まーまー(エッチに聞こえる台詞言ってないで)落ち着いて。経験上、悪霊には悪霊一人一人の対処策ってのがあるんだよ。この子達が人を襲う理由は様々だからね。『生者への嫉妬や憧れ』、『ただの興味』、『自らの見てる素晴らしい死後の世界を共有したいが為』……それらを紐解いていかないと、この子達は消えないよ」

「ですが、一人一人相手するほどの余裕はありませんよ」

「だね。ま、それはただの丁寧な手段。『正攻法』だから」


僕はスタスタと窓の方まで歩いて行く。

真っ直ぐ、悪霊が進路に居ようと構わず。

しかし、『案の定』悲しい結果に。


「え? みんな、箱庭さんを『避けてる』……?」

「まぁ、分かるのでしょうね、本能で。『近寄ってはならない』と」

「人を野生のイノシシとかクマみたいに言うない。よいしょ(ガチャ ガラガラ)」

「えっ! なぜ窓を開けるんですっ? そんな事をしたら……!」


子ウサギちゃんの懸念通り、窓を開けた瞬間、


ズルズルズル!!! ズルズルズル!!!


オガアザンンンン!!!


勢い良く壁を這い上がって来るフォールガイ。

窓から覗き込む僕と目が合って……        ザンッ!



目が合った瞬間には、フォールガイの頭は吹き飛んでいた。


それから サアアア……とモヤのように霧散していく。


「(フンッ)」

とクールに鼻を鳴らすのは、今し方除霊を終わらせた子だ。

その無駄のない仕事振りはまさに狩人。

『白い影』が大砲のようにフォールガイを貫いた。

今は窓から伸びた僕の首に手を回し、プラプラと下半身を揺らしている。(下は三階ほどの高さ)


「よいっしょ。お疲れー」と僕はその子と共に理科準備室に戻り、窓を閉める。


「そ、その白い動物は……狐さん、ですか? 尻尾が『二本』ありますけど……」

「そだよー、二本あって『妖怪』みたいでカッコいいよねー。ピンと立った耳なんて、中はピンクだから苺大福みたいで美味しそう。ハムハム」

「ギニャー!」

「凄い叫んでますよ……?」


 因みにこの子は昨日、ジャイアントウサギちゃんから嫉妬されてたのと同じ狐だ。


「でも、どうやってここに招いたのですか? 事前に指示を?」

「別に? 来てくれるかなーって思って窓開けたらなんか来てくれたんよー」

「でも、ここ三階ですよね……?」

「そんぐらいの高さなら余裕で壁を駆け上がって来るよ。あとついでに除霊も出来るよ」

「オプション感覚で付いてていい特技ではありませんよそれは」

「僕に寄って来る子達(動物)は基本持ってる特技だよ。話の通りなら君も含めてね、カルビちゃん」

「ニャー!」

「ん? どしたの狐ちゃん。『こんなのと一緒にしないで下さいましっ』だって? わはは、言うねぇ」

「は、箱庭さんは動物の言葉が……? それに、その子お嬢様だったんですね……」

「適当に聞き流しておいて下さい。まぁ、その狐は今の台詞通りのしかめ面をしていますが」


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