83 会長(?)とホラー回2
少女に除霊を依頼された僕。
近くの理科準備室(不法侵入)で話を聞くことに。
そそくさと僕らも理科準備室に入り(クワガタを回収しつつ)その辺にあった椅子を引っ張って来て三人集まるように座る。
外の明るい喧騒とは真逆な、日当たりの悪いジメジメとした埃っぽい室内。
ホラーな空気にピッタリな環境だ。
「それで確認なんだけど、ゴーストバスターたる僕にどんな用件だい?」
「職業変わってるじゃない、ですか」
「あの……『除霊』をお願いしたいんです……」
「だろうね。でもどうして僕を霊能者だと思ったんだい?」
「それは……その着物姿がオカ研の方から『聞いた』話通りだったので……」
「聞いた、か。把握」
多分、元々はオカ研に依頼していた除霊なのだろう。
そしてオカ研の誰かが、神主のようなハッタリの効いた袴姿で迎える予定だったとか。
学園祭の日を指定したのは『公開除霊』でも計画してたのかな?
オカ研が除霊を本当に出来たのかは知らないけど。
「それに……かの有名な箱庭さんなら除霊が出来るという説得力もあって……」
「ぅぃーっ、だってよっ。僕の強キャラオーラは隠し切れないらしいねっ(ウリウリ)」
「それ変人扱いと同義ですよ……肘でウリウリしないで下さい」
「加えて、あの生徒会長も側にいてくれて……心強いです……」
「えっ? あ、その……私は妹の方でして」
「そうそう。この子は妹のカ……らびちゃんだよ」
「カルビさん、ですか……?」
「それでいいや」
「よくないですっ」
ドンッッッ
「ひっ」
小さく悲鳴を漏らす子ウサギちゃん(依頼主のあだ名)。
カヌレが怒りで暴れた音では無い。
外から、だ。
衝突音……正確には落下音かな?
まるで、『上から下に』、何かが落ちた音。
ここは三階だが、もっと上から『飛び降りた』ような勢い。
そのままコンクリートにぶつかっても、落下音はここまで響かないから、駐輪場の屋根辺りに『不時着』したのだろう。
……少し待っても、外が騒つく気配は無い。
気付かれて無いのか、それとも、どこぞのクラスや部の出し物の音だったか、もしくは、『僕らにしか聞こえなかった』のか。
「も、もうやだっ……」
「ふむ。今のが『悩み』かい?」
「……(コクリ)。ある日から急に……今みたいに、怖い音が聞こえたり……こ、怖いものが見えるようになったり……」
「成る程ね。まぁそんな体験したらゲッソリもすらぁな」
「……本当に、箱庭さんも今、同じようなものを感じて……?」
「なんだい、疑ってんのかい。今のは……(チラッ)因みにカルビちゃん、君は感じた?」
「誰に言ってるんですか。訊かれているのは貴方でしょう? 急に振らないで下さい」
「君が感じないなら蚊帳の外っぽくなって可哀想かなって」
「いいですよ蚊帳の外でも。……はぁ。落下音、ですよね。屋上から『投身自殺』でもしたような」
「それな」
「す、凄いです二人ともっ……だ、誰も……私の話を信じてくれなくて……」
ポロポロと大粒の涙をこぼす子ウサギちゃん。
不安だったのだろう。
怪現象に苦しみながら、逃げ場もなく、周りからも変な目で見らて。
しかし、そこにようやく現れた理解者。
「くっくっく……つまりは吊り橋効果と憔悴した精神の相乗効果でこっちの要求に疑いもせずホイホイ従うわけだ」
「ダダ漏れですよ心の声」
「た、助けてくれるのならなんでもします!」
「貴方も軽い気持ちで彼にそんな事を言わないように」
「にしてもカルビちゃん。君もなんとなく『こっち側』だと思ってたよ。欲を言えばこの子ウサギちゃんみたく怪現象にビビって欲しかったけど。慣れてるの?」
「……まぁ、この状況であれば『言ってもいい』でしょうね」
彼女は諦めたように息をつき、
「ウカノ君は、夢先家が何をしているか、全容は把握していますか?」
「んー、芸能系とか不動産とか、あと『ウチのママン関係』でしょ」
「ええ。他にも手広くやっていますが……『相談所』のようなものもあります。ようは何でも屋ですね。で、依頼の中には今回のような『除霊』を扱う機会もありまして」
「へぇ。今更だけど、普通に幽霊とかいる世界観なんだね」
「誰に言ってるんですか。……それで、まぁたまにその手の仕事を手伝ったりしているので、驚きは少ないのです」
「成る程、ゴーストバスターズ。いや、退魔忍かな」
「どこから忍び要素が現れたんですか……」
次々に判明していく夢先家の事。
もっと掘り下げたい所だけど、それは今じゃなくてもいいか。
「そういう貴方は、自身が『どうして知覚出来るのか』考えた事はあるのですか?」
「そこまで深く考えた事は無いよ。でも幽霊なんてのは『生き物の残りカス』でしょ? 人以下の存在なんてコツさえ掴めば誰でも見えるよ」
「言い方……」
「勿論、妹のセレスも見えるよ。昔あの子と『一時間で何体除霊出来るか』対決したなぁ」
「恐ろしい遊びをする子供達ですね……」
子供は怖いもの知らずだからね。
「でも苦戦した相手もいるよ? 『くねくね』とか」
「あっ、そ、それは知ってますっ。田舎に出るという……」
「そう。薄着で腰をくねくねさせて男を誘惑する恐ろしいお姉さんだった……」
「わ、私が知ってるのと違う……!」
「ただの変質者じゃないですかそれ」
「僕ら兄妹は恐ろしくて逃げたね。あれが唯一の敗北だった……(遠い目)」
「『本物』には勝てないという事ですね」
話が通じない人間が一番怖いのはホラーの定番。




