82 会長(?)とホラー回1
アニメ研究会の自主制作アニメを見た後、大正浪漫喫茶で落ち着く僕達。
そこまで目立つ席でも無いので、彼女にはキャラを戻して貰ってる。
「お待たせしましたー。ごゆっくりー」
「どもー。……んー(イジイジ)良い意味で学園祭レベルの手作り料理だね。この不揃いな感じとか(パクッ)」
「まぁ客もそんな高水準なモノを期待してここに来ないだろう」
「JKが作ったってだけで価値が凄いからね」
「そんなおじさんみたいな感想……男子も作ってるだろうけど」
「それはそれでお姉様需要がありそうね。
(お茶ズズズ)
……で、どうだった?」
「さっきの映画? んー……ハーレム系のラブコメ、で良いのかな? 少なくとも、『上映中手を重ねる』ようなロマンチックなシーンは無かったね」
「え? あそこ、感動のシーンじゃなかった?」
「主人公が堂々と『浮気宣言』したとこ? ギャグシーンでしょ。あんなの受け入れるヒロイン達もおかしいよ……」
「理解ある彼女達ってヤツやで。それでまぁ、その後はなぁなぁに終わると思いきや……唐突に謎の巨大な敵が現れて」
「主人公らもロボットに乗って戦い出したね。実は戦士達とかいう後出し設定出て来て」
「メインヒロインが敵側の姫と判明したのは予想付いてたよ」
「最後には姫以外生物が全滅オチだったね……」
「◯ヴァっぽいセカイ系ってやつだ。作品としてここまで話ぶん投げられるといっそ清々しいよ。古き良き平成の空気を感じたね。彼らにはこのままその路線を突っ走って欲しい」
「君いくつなの……? しかし、高評価だね。感想にそう書いてあげれば?」
「だねー。えーっと(カキカキ)『主人公はもっとガツガツ行くべき。ヒロインを可愛く出来るのは主人公の行動次第。寧ろヒロインを可愛いく見せる舞台装置扱いでいい。あとヒロインにサキュバスがいればもっと良かった』っと」
「どんな感想……?」
「僕のラブコメ感さ」
一通り感想を交わし合った僕らは大正浪漫喫茶を出て、次の場所へ向かう、その道中。
「おいおい、なんやかんやで学園祭デート楽しんでるんじゃないかい? うりうり」
「肘でうりうりしないで……『そんな格好』になるのも学園祭デートの醍醐味というやつですか?」
「君がしないから僕が着る羽目になったんだよっ」
「貴方が勝手に着たのでしょうその『袴』をっ。……にしても、よく貸してくれましたね」
「お店の宣伝を条件に、だからね。僕が着て歩くだけで広告になるらしいし」
「た、確かに注目されてますね……宣伝効果があるかは別として」
「まぁ君の……姉のせいで学園内で嫌われてる僕だけど、外部から来る客には関係無いから宣伝効果バッチグーよ」
「わ、わた……カヌレのせいではありませんから……貴方が周りを煽った結果ですっ」
「あのっ……すいませんっ……」
「ん?」
不意に掛けられたアニメキャラのような声色に振り返ると、そこには一人の小柄な女生徒。
第一印象は、幽霊。
ホッペは痩せこけ、瞳には光が無く、肌の色は青白くて、手足は心配になるぐらい細い。
少女の幽霊。
「どうしたんだいお嬢ちゃん。迷子かな?」
「どう見てもここの制服着てる……じゃないですか」
「確かに。それで?」
「あ、貴方が……『霊能者』の方ですか?」
「うん? よく分からないけど面白そうだから『そうだよ』」
「(ボソリ)ちょ、なに認めてるのっ」
「困ってそうだからね。君は放っとけるのかい?」
「(ボソリ)まぁ、話だけでも……」
「場所を変えよう。丁度、そこのひと気の無いゾーンに理科準備室がある」
スタスタスタ
「いや、普通学園祭中は鍵が掛かってるでしょう」
「だろうさ。けどこんな時の為に(ゴソゴソ)キミ、中の鍵頼んだよ」
「(ギチギチ!)」
「それは……【オオクワガタ】? というか、いつから懐に待機させてたんです……?」
「扉の下から入って貰って……(ガチャン!)よし来た!」
「ええ……」
「凄い……やはり本物の霊能者様……!」
「貴方、こんな胡散臭い人を簡単に信じてはダメですよ……有言実行出来る力があるのが余計に厄介ですが」
「お、今のは(わらびちゃん)ぽかったな。さ、君、人が来る前に入ってどうぞ」
「失礼しますっ……」
クイクイッ
「(ボソリ)あの子、私と同学年で『子ウサギちゃん』てあだ名の人気者だったんだ。小さくて可愛らしい元気な子だったんだけど……ところが最近になって、人が変わったように大人しくなって」
「ふぅん、何かありそうだね。ま、僕に出来ない事は無いぜ。霊能者の真似事ぐらい、さ」
「不安だなぁ……」
「それに。夏といえばホラーだからね」
「毎日がホラーみたいな日々だけど……」




