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79 会長(?)と特級呪物

学園の屋上に行くとそこは〇〇になってました。


「屋上なのに、このアーチの奥は霧がかっていて先が見えないね……なんかやたら広くも感じるし」

「空間アートの匠ってやつさ。このアーチを抜ければ先も見えるだろうさ」

「ここ抜けるのもなんか怖いな……」

「手ェ繋いでてあげるから。なんなら抜けるまで目つむってな」

「んっ……(スッ)」

「ぐへへ、無防備だなぁ? その気分の悪さ、緩和どころかチュー和してやろうか?」

「へ、変な事したら、手ェグイッて捻りあげるからねっ」

「なんて言ってる間に、アーチ通り過ぎたぜ」

「えっ?」


パチリ、目蓋を開くカヌレ。


「……どこここ?」


周囲を見渡し、そう漏らす。


「いつも僕らがダラけてる屋上だね」

「……影も形もなくない?」

「確かに」


足下には石畳ならぬ木畳が奥の方まで綺麗に敷き詰められ、それを挟むように左右には整えられた竹林。

そして、その先にある終着点は……


「アレは、ほこら?」

「そ。いかにも御利益がありそーでしょ?」


祠……神社とかによく有る小さい犬小屋みたいな(失礼)アレだ。

手前に賽銭箱が置いてあるアレ。

それがポツンと最奥に佇んでいる。

場所的には本来、屋上への出入り口がある辺り。

祠の後ろには、僕が植えた樹。

本来ならあのアーチの場所にあるのだが、ママンが移動させたんだろう。

ママンなら僕同様、『植物と意思疎通』出来るし。


「この祠の中に……凶々しい何かが封じられてたり?」

「いや、何も無いよ? 昨日の放課後、僕が作ったんだからー」

「ええ……これだけ大掛かりな演出しておいて?」

「大掛かりな演出が重要なんだよ。学生はこういうハッタリが大好きでしょ?」

「また偏見を……それで、この即席な神社らしき場所でどんな計画を?」


「今日の学園祭、園芸部の出し物として……ここを、今日限定の『恋愛成就スポット』箱庭神社とします」


「恋愛……?」

「そ。『片思いの人と結ばれたい』『カレピとずっとぃっしょにぃたぃょ』『あのカップル別れろ』などなど何でもござれです」

「……園芸部要素は?」

「……恋が『実る』?」

「今考えたでしょ……因みに、肝心のご利益はあるのかい?」

「学生はこういうハッタリ大好きでしょ?」

「二回言った……つまり無いんだね」

「結局は本人の気持ち次第だよ。神頼みしたら心の整理がついて、なんかスッキリするだろう?」

「それっぽくて浅い事言って……『成就しなかった』と騒がれた時は?」

「おめー少しは全国津々浦々の恋愛系神社が廃れない理由考えろ。当たらなきゃ『努力不足』だの『本気度が足りない』だのって開き直ればいいんだよっ」

「全国の神社を巻き込まないでっ。ほ、他のとこはちゃんとご利益ある筈だからっ」

「でも確かに、御神体とか何も無いと様にならないね。えーっと、何か持ってたかな(ゴソゴソ)」

「ポケットにあるような物を御神体にするつもり……?」

「ん? おっ、これなんてどうかな? 大人気漫画【ふたごのマゾク親指パペット(ヒロインの一人きなこちゃん)】」

「どうリアクションすればいいんだ……? てかなんでポケットに」

「前ガチャガチャしてダブったから突っ込んでた気がする。恋愛がテーマの作品だから無関係でも無いっしょ。コレを、祠の中に(パカッ ゴソゴソ)……よしっ」

「良いのかな……まぁこの子が管理者だろうから良いのか」

「まだパンチが弱いな……あっそうだ(ジョキ)」

「って君!? なんで急に髪切ったの! しかも前髪!」

「僕はイケメンだからパッツンヘアーもイケるんだ。で、髪をパペットの横に添えてっと」

「え、なに、呪術……?」

「このエッセンスでキーホルダーに『凄味』が生まれたろ? 『髪には神が宿る』とかいうし」

「普通に怖いんだけど……君の場合それは『冗談にならない』し……その内動き出しそう」

「後は(カキカキ)『お触り厳禁』って紙を扉にペタって貼ってぇ……うむ、完璧っ」

「ポケットにハサミだの紙だの詰め込みすぎでしょ……因みに、この祠は学園祭が終わった後もこのままに?」

「そりゃあ当然撤去するさ、寛ぐのに邪魔だからね。屋上の一般開放も今日だけだよ」

「いや、屋上は君専用の場所でも無いんだけど……」

「んー、でも祠やアーチ、竹林なんかは勿体無いからアパートの中庭に移してもいいかなー」

「ただのアパートが観光地みたいになって参拝者が来たらどうするの……」

「お賽銭で副収入ゲットさ。賑やかになるのは嫌だけどねぇ」


そんな風に二人でサボっていれば、あっという間に時間は過ぎて行って……


パンパン パン


「おっ、昼玉(光の無い煙だけの花火)。祭りの始まりの合図だね」

「ぅぅ……ホントにサボっちゃった……」

「ほら、手。下に降りるよ」

「んっ……」


僕の手を取り立ち上がるカヌレ。

さぁ、今日は学園祭デートだ。

僕らの平穏の為、期待してるよ、わらび会長ちゃん。


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