【子供の日特別編】
メすがきや
「おにーさん、ゲームしよ? そっちが勝ったらパンツ見せたげるよ(笑)」
メスガキ(小4)がニヤニヤしながらそんな提案(挑発)をして来た。
ツインテール、キャミソール、スカートという出で立ちの、絵に描いたようなメスガキ。
「お兄さんは忙しいんだが」
「(クスッ)どーみても暇じゃない。スカスカー(笑)。今この『駄菓子屋さん』に居るので私だけだよー? 駄菓子屋のおにーさん」
「ソシャゲで忙しいんだよ(スッスッ)」
「わ、私にもっと興味を持ちなさいよ! ほお杖ついてつまらなそうにスマホ弄るくらいなら私の相手をしなさい! パンツよ! パンツ!」
「しょんべんくさいパンツ渡されてもなぁ……」
「くさくないから! 女の子に失礼だよ!」
「で、メスガキが勝ったらどうすんだよ」
「だから名前で呼びなさい! ……まぁいいわ。私が勝ったら『名前で呼ぶ』&『私の言う事をきく』よ!」
「メスガキの方が戦利品多いのかよ。俺にメリットねーやん」
「いいから! 勝負しなさい!」
遊ぶ友達が居ないのか?
暇さえあればこの駄菓子屋に来やがる暇なガキだ。
「んー、因みになんのゲームぅ?」
「トランプよ!」
「トランプねぇ。ジェンガやらね? (ドンッ)」
「え? ま、まぁ、いいけど……って、なんで都合良く用意されてんのよ」
「駄菓子屋だからな。ヨッ(すっ)」
「ぅぅ……考えたらこーゆーの苦手だった……そーっと……」
「(ガラッ!)おかし」
「わぁ! (バララッ)くぅ! いきなり扉が開くから驚いて……って、アンタ!」
メスガキが睨みつけたのは、腰まで伸びた長い金髪のメスガキだ。
確か今は中一だったと思うが、大人びた雰囲気で、下手な女子高生より発育が早い。
それでもメスガキはメスガキ。
中一だから『ギリ』メスガキか?
因みに、そこのメスガキの実姉でもある(髪色云々は色々あるんや)。
「良いタイミングだ、よくやったぞ琥珀。ほら、うまい棒」
「気軽に名前を呼ばないで下さい。通報しますよ。まぁ貰っておきます(サクサク)」
「琥珀は素直でかわいいな(ナデナデ)」
「勝手に撫でないで下さい。通報しますよ」
「くぅ……名前呼んで貰って頭撫でて貰ってうらや……じゃない! 今のはノーカンでしょ! みっとっめっない!」
「ダメだね。さぁて、勝った奴はなんでも言う事きかせられるんだったか?」
「っ! (胸を抱く)な、何する気!? こ、こっちには防犯ブザーあるんだからねっ」
「こちとらテメェがおしめ履いてる時から知ってるしこの地域でもそれは周知されてんだ。鳴らしたとこで『あの子達相変わらず仲良いわねー』としか思われんぞ」
「くぅ……地域特有の昭和並みの警戒の薄さ……!」
「ほら、コレ食え(ボロン)」
「ッ! こ、コレは! 一つだけ辛くて口の色が変わるガム! い、嫌よ! こっちは女の子なのよ! 恥かかせて辱めるつもり!?」
「(パクッ)もぐもぐ」
「おっ、駄菓子とみるや突然手伸ばして来たな琥珀。食いしん坊め」
「バカにしないで下さい。児相に連絡しますよ」
「家庭外の話なのに児相に連絡って意味あるのか……? 何か怖いからやめてくれ。じゃあ、俺も一つ(パクッ)……ほら、お前も食えよ。最後の一つだぞ」
「イヤよ! 二人ともリアクション無いじゃない! 絶対外れよ!」
「例え俺らが外れ引いてたとしても見え見えのリアクションは取らんわ。ま、逃げても良いんだがな?」
「ッ! ば、馬鹿にして! こんなの何でもないんだから! (パクッ)…………ッゥ!?」
「いや、いうて駄菓子なんだからそこまで辛そうなリアクションするほど辛くないやろ……」
「この子は辛いの苦手ですから(パクパク)」
「あっ、おまっ琥珀っ、勝手に【さくらんぼ餅(12個入りの小さなやつ)】食いやがってっ」
「昔はもっと多かったですよね(パクパク)」
「お前その時代知らねえだろっ。たく……いや、しかし普段から珊瑚(さんご。姉妹の母親)さんからお裾分けなりで世話になってるからな……」
「(ピトッ)ダメですよお兄様。二人を甘やかしては」
「うぉっ。……お前いっつも気配消して背後にまわるなよ……ガキどもが見てる前でも抱きつくな」
「ふふっ、恥ずかしがっちゃって、可愛いですね、お兄様」
プニュンと、背中に二つのたわわな肉塊を押し付け揶揄ってくるのは、そこのメスガキ二人の姉で長女の瑪瑙。
どこぞの(偏差値の高いらしい)お嬢様学校のセーラー服を着た黒髪女子高生で、暇さえあればこの駄菓子屋に来やがる暇なガキだ。
『元』メスガキ。
「何度も言ってるが、学生なら放課後部活に励めよ。毎日毎日駄菓子屋溜まり場にしやがって。青春しろ青春。皆勤賞とかねぇぞ」
「青春を味わう為に部活に励むと言うのなら、駄菓子屋こそまさに青春スポットではありません? ここの空気は青春で満ちていますよ。それに、私はきちんと帰宅部としての義務を果たしています」
「頭良い癖に頭悪い事言いやがって……おいそこのメスガキどもっ、テメェらにも言ってんだぞっ」
「「ペロペロ(無視してアメを舐めている)」」
「こいつら、また勝手に商品(アメとガムとラムネが一体化した【かわりんぼう】)を……」
「お兄様、二人が今日食べたおやつの会計はレジに入れておきましたからね」
「あ? いや、別に大した金額じゃねぇから……というか、部外者が勝手に開けんなよ」
「部外者? 何をおっしゃってるんです? 近い将来、私達二人でここを切り盛りしていくというのに」
「人を雇う程忙しくねぇよここは。大学出ていいとこ就職しろ」
「私の就職先は……ふふっ、わかってる癖に」
「あー知らん知らん」
「いけずですねぇ」
瑪瑙のやつ、昔はそこのツインテメスガキみたく歳上を小馬鹿にする系メスガキだったってのに……まぁ揶揄いのベクトルが(誘惑系に)変わっただけではあるが。
というか、コイツとはそこまで歳は離れてなかったな。
「おら、お前らもう満足したろ。さっさとけーれけーれ」
「はぁ? なによ! 暇そうだから相手してやったのにっ」
「まだビッグカツを食べてません」
「そういえばお兄様、母より言伝を預かってます。『今度一家で海に近い別荘に行くから姉妹の水着選びに付き合ってあげてね。お金は瑪瑙に渡してあります。君も強制参加ね』だそうです」
「勘弁してくれ……」
しかし、断れる筈も無い。
俺が姉妹の母である珊瑚さんに恩があるのも確かだが、断ったらどうなるかという恐怖の方がデカい。
CV皆口裕子みたいなおっとりボイスの癖に、笑顔で人を消しそうな、妙な圧がある人なんだよなぁ。
厄介事は早く済ますに限る。
急遽駄菓子屋の札を『準備中』に裏返し、姉妹を乗せて車で移動。
三〇分ほどの運転で着いた先は、県で一番デカいイオ◯モールだ。
「水着の購入場所がまさかのジ◯スコだなんて……やっぱりおにーさん、女の子慣れしてないねっ。よわよわ経験値、ザコザコ甲斐性」
「最近はこういった場所にもお洒落なお店が並んでますねー。若者向けにシフトしてるのでしょう」
「早くフードコートに行きましょう(ふんすっ)」
「ったく……自由行動はやめろよ? こちとら珊瑚さんに体のいいナンパ避け任されてんだから」
「無視しないでよ!」
「おい、あんまし騒ぐなよ。地元じゃねぇから注目されたくねぇんだ」
「ふふ……両親と娘二人に見られますかね?」
「はぁ。何言ってんだ瑪瑙、おめー制服着てんだからせーぜー兄妹……って、お前っ、いつの間に私服に着替えてっ」
「うふ、制服姿だと色々とお兄様に気を遣わせてしまいますからね。理解ある彼女、ですっ」
「理解があるなら普段から俺を労ってくれ……」
「フードコートフードコート(ぐいぐい)」
「無視するな! 無視するな! (ぐいぐい)」
「ええい鬱陶しい! さっさと店行って選んで来いっ」
辿り着いたのは、目が痛くなるほどキラキラした内装の若者向け服屋だ。
水着も取り揃えてるらしい。
「じゃ、(こんな女だらけの場所に居られるわけねーんで)店の外で待ってるから終わったら教えろよー」
「(ガシッ)何をおっしゃってるんですお兄様。しっかり選んで貰いますよ」
「お前理解ある彼女じゃねぇのかよ……」
「理解らされた彼女ですよ(はぁと)」
「ちょっとお姉! おにーさんにセクシーな水着見せてドギマギさせるんだから水着なら一人で選んでよっ」
「うふふ、そのイベントなら既に過去(メスガキ時代)の私が済ませてますよ。良い子だから琥珀ちゃんと一緒に選んでて下さい。琥珀ちゃん、妹の面倒見ててくれたらフードコートでたこ焼きご馳走しますよ」
「ネギ山盛り?」
「オーケーでーす」
「行きますよ(ぐいっ)」
「いやああああ!!!」
「…………騒がしい姉妹だな」
「慣れたものでしょう? 小さな女の子のあやし方は」
「流石に昔のお前みたいの二人同時は相手しきれんわい」
「さ、行きましょ(グイッ)」
「おいおい」
若者向け水着コーナーまで引っ張られる俺。
「うーん……丁度良いのがありませんねー」
「そうなのか。当たり前だが俺は何もアドバイス出来んぞ」
「サイズ的な意味ですよ。最近ますます『大きく』なってますので」
「ダイエットしろダイエット」
「ふふ、意味を解ってる癖に」
「ほぼ毎日見てるから成長なんて気付かんわ」
「むむっ、それは失策でしたね……半年に一度顔を出せば成長も見せられるのに。けれど、お兄様と会わないという選択肢はありませんよ」
「皆勤賞はねぇぞ。ったく……昔は『コイツ俺の事嫌いっぽいのになんで毎日来るんだ』と思ってたが」
「ふふ、素直じゃなかったんですよ。あの二人みたいに」
瑪瑙は適当な感じに水着を一つ取り、試着室の所へ。
「お兄様も入りますか?」
「男の付き添いOKみたいな自然さで提案するなよ。店から追い出されるわ」
「漫画とかのああいうシチュエーション、好きなんですけどもねぇ。まぁ、今の目的はただお兄様に水着姿を見せたい、ですから。ここでは買いませんよ」
「冷やかしにもほどがあるだろ。客商売やってる人間からしたらとんでもねー糞客だ」
「お兄様が見て気に入って下さるなら購入しますよ」
瑪瑙がカララと試着室のカーテン引き、中へ。
数秒後、シュルル……衣服を脱ぐ衣擦れ音。
JKの着替える場の側に立つ彼氏でもない男……変質者に見られんか?
離れるなら今だなっ。
『行かないで下さいね?』
「ちっ」
『もう……お兄様は本当、目を離せばすぐに何処かへ行こうとします。まるで私達を危険から遠ざけるかのように。ま、そこがミステリアスで格好いいんですがね』
「……漫画の読み過ぎだ。ただの駄菓子屋にどんなミステリアスさがあるってんだ」
『昔した約束、忘れてませんよね? 『あー、お前が結婚出来る歳まで気持ち変わらなきゃ考えてやるよ』って』
「……なんだよ唐突に。そんなガキみてぇな遣り取り、本気でずっとあっためて来たってのか」
『良いんですよ、子供で。駄菓子屋は、大人も子供に戻れる場所、なんですから』
「……そういうフワっとした表現は好きじゃねぇな」
何の話をしてるんだ俺達は。
これ以上ややこしい話される前にさっさと目的済ませたいんだが……他のガキどもは水着選び終えたのか?
キョロキョロ ……片方は金髪だからすぐ見つけられると思ってたが、どこに…… グイグイッ
「あん? お、おい」
一人のメスガキに腕を掴まれ、引っ張られる。
どんどん離れて行く更衣室の中から瑪瑙が何か言ってるみたいだったが……当然受け答えは不可能だった。
「……で。どうしたんだ?」
「アレです」
琥珀に連れてこられたのはゲーセンのUFOキャッチャー前。
欲しいぬいぐるみでも見つかったのか? と思って琥珀の指差す商品を見てみると……お菓子。
しかもハンドタオルくらいデカい◯っちゃんイカや、デカいポテチなどなど。
「で、どうしたんだ?」
「察しが悪いですね。取って下さい」
「この後フードコート行くんだろ?」
「別腹です」
「やっぱり取れたらすぐ食うつもりかよ」
「最初はあの◯っちゃんイカで」
「最初? アレだけで満足しねぇのかよ」
「取らないと騒ぎますよ」
「クソ(メス)ガキが……」
ったく……食いもんの事になると目の色変えやがって。
あーっと? あー、ブツをぶら下げてるフックにアームを通して落とすタイプか。
あんま得意じゃねぇんだよなぁ……。
「(カチッ)つぅかお前、『お菓子上げるから』とか言われても変な奴について行くなよ? (カチッ)(ウィーン)」
「馬鹿にしてるんですか。私は子供ではありませんよ……っ(ギュッ)」
「そんなしがみ付くなよ。UFOキャッチャーのアームの動向に手に汗握り過ぎだろ……(ガタンッ)ほら、取れたぞ……っていねぇ」
琥珀は一瞬で取り出し口まで移動していて、中からドでかい◯っちゃんイカを引っ張る。
「(ピリッ)ムシャムシャ……相変わらずこういうだけは上手いれふね」
「はえーよ。食うのがはえーよ」
「次はアレです(ムシャムシャ)」
「目移りしすぎなんだよ。てかそのパ◯の実はパッケージがプライズ版なだけで中身は普通だぞ。『普通なら』買った方が安く済む」
「(ケプッ)うるさいですね……味が違うかも知れないじゃないですか」
「どんなこだわりだよ。ガキならガキらしく可愛いぬいぐるみでも欲しがれよ。あの豚のやつ取ってやるぜ」
「ぬいぐるみでお腹は膨れません。豚をくれるというならフードコートで豚串でも買いやがれです」
「すぐに腹に消えるもんとか寄越し甲斐なさ過ぎだろ……」
その後も、棒で押して取るタイプのゲームでデカいぷっ◯ちょを取らせられたり、崩すタイプのお菓子タワーでチョコ◯ールを取らされたり……
すぐに琥珀の両手はお菓子の入った袋で一杯に。
ンフーと、自分は何もしてない癖にホクホク顔だ。(表情の変化は見慣れて無いと違いが分からないが)
元々食いしん坊ではあったが、中学に入ってから加速した気がする。
三女のメスガキの話によると……確か中等部で一年ながら『生徒会副会長』に抜擢された、だったか?
『琥珀ねぇの話は初等部にも届いてくるわね。寡黙で冷静沈着だの、大人っぽいだの、ファンクラブがどうだの。ふんっ、みんな、本性も知らず幸せなものねっ。ま、そんなわけで琥珀ねぇは忙しいっぽいから私が相手したげるわっ。泣いて喜びなさい? ……って、話聞いてるの!? 私の話よりそんなつまらなそうな顔で見てる『ゴルフ中継』の方が上ってわけ!?』
ううむ、琥珀のやつなりにストレスが溜まってて、それ故の馬鹿食いか? そんなキャラには見えんが……しかし、珊瑚さんには『姉妹をよろしくね』と頼まれてるしな……。
俺は琥珀の頭に手を伸ばし、
「お前も色々あるんだな」
「(サッ!)……なに頭を撫でようとしてるんですか。今度の通報は脅しじゃありませんよ」
「逃げるの早すぎだろ、少しは労ってやろうと思ったのに。てか考えたら、通報されても珊瑚さんがすぐに擁護してくれるな?」
「くっ。母を盾にするとは卑劣な。私は誰にも触らせませんよ」
「キャッチャーしてる時は自分からくっついて来る癖によ」
この姉妹、素直じゃ無ぇネコみてぇなのばっかだな。
長女は今は犬みたいになったが。
「ッ! ……ふ、二人で……楽しそうに遊んでる……!」
と、こちらを指差す少女が一人。
三女のメスガキが、唇を震わせながら俺らを見ていた。
「おう琥珀。妹がなんか拗ねてるぞ。適当なお菓子分けてやれよ」
「やらない。姉妹間での食べ物は早いモノ勝ち」
「お前三連プリンあったら全部食いそうだな……」
「バカー!」
ツインテを振り回しながら走り去るメスガキ。
どうしたんだアイツ、一緒に遊びたかったのか? てか水着選びってどうなったんだ?
「取り敢えず追い掛けて下さい。妹も追い付いて貰えるよう途中で逃げる速度を緩めるでしょうし(モグモグ)」
「構ってちゃんだな……てかもう◯っちゃんイカ無くなりそうだし」
「あの子はああ見えて寂しがり屋ですから。見失ったら今度こそ通報しますよ、お兄」
「ああ見えても何も……まぁ取り敢えず行くわ」
迷子にはならんだろうが……変なのに巻き込まれて面倒事になる前に、早く回収してやろう。
↑↓
「バカ! バカ! バカ!」
おにーちゃんのバカ! ヘラヘラと楽しそうにしちゃって!
さっきも琥珀ねぇの頭撫でようとしてたし! 私にそんな事した事ない癖にっ。
バカ! バカバカ! ……私の、バカ。
分かってる癖に。
素直になればいいだけなの、分かってる癖に。
私って……ホントバカ。
フー! フー!
「……え?」
生暖かい空気が首の後ろに掛かる。
振り返ると……おっきな大人の人が、汗だくでコッチを見ていて。
「お、お嬢さん、迷子かな?」
「え? あ、あの……」
「フー! フー! 迷子センターの場所、分かるでござる? 小生が案内しますぞ?」
「だ、大丈夫ですっ」
「し、しかし、見た所お困りのご様子で……! フー! フー!」
こ、怖いっ。
大人の人がどんどん近付いて来るっ。
なんか臭そうなのに気を遣ってるのかコロンの良い香りがして尚更怖いっ。
た、助けて……
「助けて! お兄ちゃん!」
「(パシンッ)誤解されるだろバカ翡翠」
「痛い!」
助けを求めたのに、頭部に衝撃。
この叩き慣れたような感触は……!
「な、なにするのよお兄ちゃ……さん!」
「なんで言い直すんだよ。……はぁ。すいませんね、ウチのツレが失礼な態度を」
「ブフー! い、いえっ、小生も変質者扱いは慣れてるでござるっ」
「だというのにわざわざ少女を心配して声掛けを……おらっ、謝れメスガキッ」
「ぐぅ……! ご、ごめんなさい……」
「フォカヌポォ! 保護者の方が見つかって何よりでござる!」
↑↓
「……父さん。また変質者扱いされたんですか」「草生える。パパさんは見てて飽きないなぁ」「人助けしようとして何度酷い目にあったか……懲りない人だな」
ガキが増えた。
こっちのメスガキと同じくらいの頃合いの黒髪少女二人と……その真ん中に、挟むように銀髪の少女? が一人。
オセロならひっくり返って黒くなってるな(?)。
……てか、父さん?
この三人のガキは、この(今や秋葉にも居なさそうなステレオタイプの)オタク系の子供?
はぁー、失礼だが、奥さんが余程美人なんだろうな。
「フヒヒッ、では、我々はこれで」
「はぁ、どうも」
一行は仲睦まじげに去って行く。
また誤解されて通報されなきゃいいが。
「ほらっ、行くぞ(スッ)」
「……なに? その手は」
「まだ迷子にならねぇよう繋いでてやるよ」
「そ、そんな事言って、ふふんっ、私と手を繋ぎたいだけなんでしょ? (笑)」
「あーもうそれでいいや。さっ、みんなのとこに戻りまちょうねー」
「キー! 子供扱いしないでよっ」
「何言ってんだメスガキがよぉ」
「(ボソリ)子供扱い、しないでよ……」
◆◆◆
「……みたいなね?」
「え? なんだったの今の話?」
「子供の日だからね。それっぽい話だったろ?」
「あ、今日はそうなんだ。なら後で柏餅でも用意しなきゃねぇ」
「むぅ、このサキュバス、もう順応してやがる。……さ、そろそろ着くよ?」
「え? なに? 着くって」
「僕らは今、とある目的地に向けて移動中だったろ?」
「家の中じゃなかったんだ……てか外なんだ……」
「ここです!」
「……えっと……え、『駄菓子屋』?」
「そう! さっきの話に出て来たとこです!」
「なんか変な電波受信して作った妄想じゃ……?」
「変な電波受信したのはそうだけど、実話だよ。この目の前の駄菓子屋……メスガキの溜まり場になるという通称【メすがきや】は、さっきの話から数年経ってるよ」
「ラーメン屋みたいな名前……で、中に入るの?」
「運が良ければ成長した登場人物と会えるかもね? じゃ、入るよ。(ガララ)ウィーッス」
「……あれ? ウカノくん?」
「おや、『モブガールズの片割れ』じゃないか」
「どんな覚えられ方を……まぁいいや。で、そっちの連れはカヌレ? わらび? なーんか雰囲気がどっちとも言えないっていうか……」
「まぁどっちかってのは些細な問題さ。ね?」
「私に振らないでよ……(アンドナ)」
「なんだぁ? なんかのプレイ中かぁ? ま、いいや。今日はどしたの? フラッとたまたまこの駄菓子屋来ちゃったとか? あー……でも今は店長が奥の方に」
「(ガララッ)……あ? なんだ? 誰か来てるな。【翡翠】のダチか?」
「なにィ!? オメェがあのメスガキかよぉ!」
「わっ! ビックリした! なに急にメスガキって!」
「(ボソッ)道理でなんか聞き覚えのある名前だと……(アンドナ)」
「モブの癖にヒロインみたいな名前判明させてんじゃねぇ!」
「理不尽じゃない!? ヒロインネームで何が悪い!」
「……随分変わったダチだな。しかし……ククッ、メスガキって言葉、久しぶりに聞いたぜ。今じゃもう、立派なJKか」
「兄貴ぃー、大人なんだから子供に小遣いくれよぉ」
「都合良いな……子供扱いするなとか言ってたろ?」
「いつの話してんだよー、くれよー」
「ええい帰るぞアンドナ! 他人のラブコメなんざ見てられるか!」
「何しに来たのホント……」




