75 会長と学園祭当日
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翌朝。
……コンコン。
「(ガチャ)はぁい。おはよう、ウカノ君」
「おはよーカヌレー。モーニングコー…………なんかデジャヴ感じない?」
「そんなもんだよ、毎日なんて」
「そっかぁ」
「朝ご飯、運ぶの手伝ってくれ」
普段通りの朝。
少し違うのは、今日は学園祭というイベントがある事。
「筑前煮、とろろ、あさりのすまし汁……今日は和食なんだね、まぁ言うても、和と洋以外の朝食って想像難しいけど」
「中華ねぇ……おかゆとかが主流なんだっけ?」
「おかゆかー。身体には良さそうだけど、個人的にご飯ってジャンルじゃないなぁ。間食系?」
「歯応えがないと満足しない系だね君は」
「かもねぇ。じゃ、いただきまーす」
ムシャムシャ ムシャムシャ
「それで、今日の学園祭デートの話なんだけど」
「……ん? 私に時間出来た時の話?」
「いや、一日僕とまわるじゃん?」
「……いや、忙しいけど?」
「かくかくしかじか」
「わらびが影武者!? 聞いてない!」
「昨日わらびちゃんにも『まだ言ってないんですか』って呆れられたよ」
「ならせめて昨日言ってよ! いや、そう言う問題でもないけど! ……仕事の引き継ぎだってしてないのに」
「そこは部下に任せとけよー。君が居なくてもどうにでもなるっしょ? 信用しなさい」
「信用とかそういう話じゃ……流石に無責任だよ。生徒会長だよ私?」
「君は色々と抱え過ぎよ。じゃーこーしよ。バレた時点で終わり、君は生徒会長業務に戻って良い。これなら?」
「……随分、わらびの演技力を信頼してるようだね」
いいね。
その、生徒会長でも姉でもなく『女の顔』
「そりゃあね。彼女ならやってくれるだろうさ。『完璧な振る舞い』も指示してある。……あっ、僕の妹セレスにバレるのはノーカンね。あの子ならすぐに気付くだろうし」
「……わらびが素直に君に従うのも疑問だ。何か弱みでも握って?」
「初手でその可能性を疑うとかなんて信頼だい。別に、『恩を返して』貰うだけさ」
「……やはり、あの時の『襲撃』の件だろう? なら、私がそもそもの原因だ。恩を返すのは、わらびではなく私だよ」
「わらびちゃんはコレで納得してるか良いんだよ。心配せんでも、彼女にとってつまらない学園祭にはしないさ。わらびちゃんとの時間も必ず作る。一日で二人と遊ぶ……ダブルデートってやつだね」
「それそういう意味じゃ無いんだけど……」
納得のいってない顔のカヌレ。
やっぱり昨日言っとけば良かったね。
急な提案で驚いてるんだろうな。
「全く……まぁ、今更私が居なくなったところで学園祭に滞りはないだろうけど」
「ふふん、やっぱり要らない子じゃないか」
「言い方っ」
「ま、僕にとっては要る子だから安心しな」
「ふん……でも、実際バレたらダメージ負うの私だけだよね……妹に会長を押し付けて遊ぶダメ女……あっ! まさか君っ、それで私の評価が下がるのが狙いでっ」
「くっくっくっ、今更気付いたのかいっ。僕的にはどちらに転んでも美味しいのさっ」
「やっぱりデートしないっ」
「ダメだ! 君はもう今日一日は夢先わらびなんだよっ。あっ。山百合学園のお嬢様も招待してるから、ちゃんとわらびちゃん演じてね」
「どんどん情報増やさないでっ」
「元女優なら余裕でしょ。『よくってよ』とか『くっそうめぇですわ』とか言ってりゃ良いんだよ」
「あの子絶対学校じゃそんなキャラじゃないよね……?」
「おっと、これ以上話が拗れると朝食も進まないぞ」
「話を逸らして……」




