73 会長と戸◯呂
その後、学園に着いた僕らだが……真っ先に『違和感』に気付く。
というか、人だかりが出来ていて分かりやすい。
場所はグラウンドの中心。
「なんの騒ぎだ?」
「あっ、会長!」「会長だ!」「朝から会長が見られるとは演技がいい……(ナムナム)」
振り返る生徒達各々の嬉しそうな反応。
僕の事は眼中に無く見ようともしない。
いや、意図的に意識しないようにしてるのかな? 余程嫌われてるらしいケケケ。
「アレですっ」と指差す一人の生徒。
そこには……なんだろうアレ。
人が走り回れるような広い木造の……【ステージ】?
漫画でよくある武道会の舞台のような四角い形。
ソレを『太い根っこたち』がビッシリ、下から支えている。(沖縄のガジュマルの木のような)
その為か、二メートルほど舞台が浮いているような全貌。
いや、このステージから根っこが生えてるのかな?
まぁそれはどっちでもいいか。
「……あれは……【神楽殿】か?」
「その通りっ(ガバッ)」
「キャァ!?」
キャアって言ったなカヌレ。
「会長がキャア……」「女の子っぽいのもいいわね……」「俺も後ろから抱きついて嫌がられたい……」
見た事のないカヌレの一面に興奮する生徒達。
僕だけが知ってたのに! (激怒)
「ぷ、プランさん! 急に抱き着かないで下さいっ」
「んふふー、成長期だねぇ。ちょっと前まではロリっとしてたのに」
「ちょっと前っていつの話ですかっ」
「おばさんになると十年なんてちょっと前なんだよー」
「みっ、みんなが見てますっ、生徒会長として示しがつきませんっ」
「ふふ、私はみんなってよりウー君に見せ付けてんだけどね」
「彼と似た様な挙動はやめて下さいっ」
ぐぬぬ……ババアめ、僕にNTRシーンを見せ付けるとはなんて性格の悪さだっ。
「てか今更だけど、あのアニメみたいな緑髪のスーツお姉さん、だれ?」「……あっ、思い出した! 前、三者面談の時にセレス様と一緒に居た綺麗な人っ」「ああ……道理で、雰囲気がこの世のモノじゃないと……てか、なんかの動画でも見た気が?」
「ええいっ、これ以上ババアの好きにさせてなるものか! カヌレから離れろババア!」
「やーん、ウー君が後ろから情熱的なハグをっ。いつまでも甘えん坊だね(はぁと)」
「こ、このババアッ、はじめからそれが狙いで……!」
「た、頼むから二人とも離れて……!」
ママンがカヌレから離れ、僕もママンから離れ、ついでにその場から少し離れたウチら。
「……んっ、ちゃんと学校通ってて偉いねウー君っ(なでなで)」
「最初に言うのがそれかい。あまり目立つ行動するんじゃねぇっ」
「この子は昔から引っ込み思案なんだからー」
「プランさん……あの神楽殿はもしかして?」
「ふふん、話は聞いてるよねカヌレちゃん。パフォーマンスを兼ねて、ウー君の為の舞台を一日で用意したんだよ。注目度満点だろ?」
「戸◯呂かよ。余計な事しやがって」
「言ったでしょ? 準備はこっちでしておくって。あっ、カヌレちゃん、もしバンドとかする子達が居るんなら、本番では『先に』あの場所使って良いって言っといて。音響関係も全て提供するから」
「は、はぁ……」
「先にってなんだよ」
「そりゃあ、ウー君は『トリ』だからさ」
「やーだー!」
「うるさい」
「おっ、セレちゃん急に現れるじゃんっ。ファミリーが偶然揃うなんてこれはもう運命だねっ、ママン嬉しいっ」
「きーてよセレスー、かくかくしかじかー」
「はぁ? あんな目立つとこでトリィ? (ギロリ)」
「この兄妹母親に対して殺意高くない? ねーカヌレちゃん?」
「は、はは……」
「会長、仕事(首クイッ)」
「う、うん。で、ではプランさん、ウカノ君、失礼します(ササッ)」
「……あーあ。ママンと居ると居心地悪いから行っちゃった」
「そんな事ないからっ。私ほど親しみ易い人はいないよっ」
「圧が凄いんだよなぁ……。ほら、今日はもう満足したでしょ? 朝っぱらから遊んでないで早く家に帰るなり仕事に行くなりしなさい(シッシ)」
「ぬぅっ、バカにしてぇっ。明日の学園祭はママンとの思い出一色にしてやるから覚悟しろよっ! (ダッ!)……あっ、他に欲しいものあったら当日朝まで言ってね!」
落ち着かない母親だなぁ。




