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70 サキュバス と生配信

レースゲームはもうお腹一杯なんで、◯マブラのキャラ集めを再開する事に。

ゲームはせずとも、アンドナは僕の脚の間をキープしたまま僕の奮闘する姿を眺める。


「そーいえばさ、近いうちに学校でイベントあるんだってさ。君も来ない?」

「えー? んー、行かなーい」

「はぁ? 断っていい前提の提案じゃ無いんですけどー? (ギリリッ)」

「んげっ! チョ、チョーク(首絞め)は反則っ! げほっ……だ、だって、絶対面倒い事になるぢゃん?」

「面倒い事って?」

「私は君の言う『姉妹』と関わりたくないって事」

「えー、良い顔合わせの場なのにー」

「地獄絵図が容易に想像出来るって事っ。わざわざ虎穴に突っ込むわけが無いでしょ」

「決意表明しないのかい? 『この男はわたくしのモノですわ!』って全校生徒の前で」

「やらんよ、なんで『未成年の主張』風よ。なんでお嬢様キャラよ」


ふぅ、とアンドナは息をつき、


「私はね、今のポジが楽なの。『生徒会長』でも『お嬢様』でもない、なんの枷も無い『自由な存在』。ドフリーな私だからこそ、こうして君との距離感が物理的な意味でも他の二人より近付いわけ。そんな決意表明なんてしないでも、私の優位は揺らがないよ」


彼女の表情は窺えない。

フフンと誇らしげに聞こえるが、笑ってるのか怒ってるのか無表情なのか。

確認は何となくやめておく。


「つまり、君は『エロ担当』なポジションに満足していると」

「……まぁ、ザックリ言えばね。いや、やっぱりもっと言い方変えてくれない? 『お色気担当』みたいな。や、それもなんかヤだな」

「いいじゃないか肩書きなんて。けれど現実、欲望の捌け口になる事がリードと言えるのかい?」

「さぁ、それは本人の認識次第でしょ。プラトニックな関係こそが至高と考えるのも自由だよ。あくまで、私に都合の良いポジションってのは揺らが無い」

「なるほど。そもそも『君は』サキュバスか」

「そ。これからも『夜の者』としてひっそり過ごすよ。……ま、そんなわけで、学園祭には行かないから、お土産、期待してるよ」

「いまいち納得出来んなぁ」

「出来なくてもするの。さ、お風呂、入ろっか」

「んー(チラッチラッ)」

「……さっきからちょいちょいパソコン気にしてるけど、なに?」


画面を覗くアンドナ。


「……は? なにこれ、『私達が映ってる』?」

「と、ここでネタバラシ。今まで『生放送』をしていたのだ」

「はぁ!? いつから!?」

「ゲーム辺りから」

「なんで!?」

「君と居た証を少しでも残しておきたかった」

「私死ぬの!?」

「安心して。画面の左半分はゲーム画面で右半分は首から下しか映らない撮り方したから」

「何も安心出来ないよ! 余計いかがわしい感じだよ!」

「ほら、見てみな。流れるコメント見るに視聴者にも好評だよ。


『太ももと〇っぱいエッッッ』『顔見たーい、カメラさんもっと上上ー』『精霊ちゃんとサキュバスちゃんこっちを見てる!? こっちを見てるぞ!』


だって」

「おいカメラ止めろ(バダンッ)」

「うげっ、ノーパソ急に閉じたら故障の原因になるかもだろぉ?」

「知らないよっ。……さっきチラッと見た映像的に……カメラはここかっ(ブチッ)」

「ふっ、よく気付いたね。テレビにつけたWiiのセンサー近くに設置して『木を隠すなら森』理論で誤魔化した事を……!」

「……これで、もうネットの配信は閉じられてる? 他にもカメラあって同時に別の生放送してるとか言わないよね?」

「無いよ。僕の目的は既に達成してるからね」

「……君、前にお母さんと『ネット配信』云々で揉めたんじゃなかった?」

「君にその話したっけ? 同じ顔だからごっちゃになるな、まぁいいや。僕がママンに怒ったのは『勝手に顔出し』したからであって、顔出さない生配信は前からちょこちょこしてるよ。『バイト』で、だけど」

「……バイト?」

「『広報用チャンネルアカ』でね。たまにママンの経営する『植物園』広報のバイトをしてるんだ。個人的にチャンネルを使うのも別にいいらしいし」

「はぁ……もういいや。良くないけど」


アンドナはクイっと外人のように肩を竦め、


「で、私との居た証を残したいって? それ、どっちかと言うと『君の方が』気付いたらフワリと綿毛のように消えそうなんだけど?」

「そうかな」

「そうだよ。……ま、その時は事前に言ってね? こっちにも準備があるから」

「準備?」

「引っ越しの」

「付いてくるのは確定なのか……まーいいや。お風呂お風呂。勿論、さっきのゲームの時と同じ体勢で、一緒に、ね」

「やっぱりすぐに引っ越さない? 浴槽が狭過ぎるよ……」

「確かにねぇ。今度不動産情報でも見るかー。カヌレにも言っとかないと」

「あの子も巻き込むんだ……」

「当然さ。それよりほら、早く脱いだ脱いだ。さっきはあの体勢で君の大好きな『後ろから耳カプ』我慢するの大変だったんだから」

「み、耳弱いんだからやめてよ……」

「だからだよ。みんなには聞かせたくないのさ、君のエッチな声を」

「もう……すけべ」


きょうも なにもない すばらしい いちにち だった。


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