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66 お嬢様とツインテール

妹のセレスと共にわらびちゃんちの黒塗り高級車で家まで送って貰ってる道中……


「……(イジイジ)」

「……な、なぜ急に興味を私の髪の毛に?」

「(スルリ)よーし、コレでサイドテールになったねっ。大分雰囲気変わるなぁ」

「……そ、そうですか」

「よーし、なんとなくセレスをツインテにしてあげよう。ショートボブだから短い尻尾になるけど(イジイジ)よし。ゴムは一つしかないからもう片方は僕の手で束ねてっと」

「人の髪で遊ぶな」

「見て見てわらびちゃん、ツインテだとアホっぽく見えるよね?」

「そ、そんなことないですっ……」

「わらび」

「ッ! ……で、ですね、セレスさん」

「ぬっ! お、お前ら、人の髪を両サイドから引っ張って……やめろー! 抜けるー! ツインテのあった名残みたいなハゲ跡が残るー!」

「おや、ウカノ様のツインテールも大変可愛いですねー」

「メイドさん呑気に感想述べてないでっ」


ふと。

『プルルル』

僕のスマホが鳴る。

そこでようやく髪から手を離してくれた女の子達。

むむ……少し嫌な予感がしつつも反射的に出てしまう。


「はいはーい」

『ママンですよー』

「ゲッ。楽しい気分に水差すなよー」

『ひどくない? そこまで生理的に嫌われる事ママンしてないよね?』

「加害者意識ない人って厄介よねー。その点、僕は意識あるからセーフ」

「そ、そうですかね……(わらび)」

『ま、いつものツンデレって事だよね。で、だ。今日はウー君に『予定の確認』の電話だよ』

「予定の確認? 変な仕事押し付けないでくれよ?」

『変な仕事じゃないからセーフ、だよね? 言うなれば『箱庭家としての使命』だからさ。……『神楽』、はね』

「あー、あの神楽ねー。その使命、箱庭の仕事ならママンにお願いするねー頑張ってー」

『だーめ。私の『役割を継ぐ者』としてウー君にやって貰わなきゃ意味ないんだよ。頑張ったご褒美に欲しい物何でも上げるからさー』

「欲しいもんは手に入ったからなー。因みにいつー?」

『明後日』

「確認遅すぎでしょー社会人として失格だよー。あっ、てかその日はウチの学園祭だから無理だわー残念だわー」

「……(無言で僕の顔に後頭部頭突きを喰らわすセレス)」

『らしいねーセレスちゃんから聞いてるよー。てかそこにセレスちゃんもいるでしょ? 君も関係ある話だから、ついでに聞いといて』

「いないよ(裏声セレス)」

『やっぱり。分かっちゃうんだよねー。『ママン特有のテレパシー』からは逃れられないよー』

「て、テレパシーが好きな親子ですね……(わらび)」

『でだ。その神楽、ついでだし学園祭ってやっちゃってよ。君ら兄妹でさ』

「「え、無理」」

『仲良く拒否しないでっ」

「僕らが一番息の合う瞬間が『共通の敵を前にした時』だからね」

『母親なのに! あー、準備が面倒なんだよね? そこは安心して? 全てこっちで用意して君らは踊って演奏するだけにするから』

「寧ろそれってちゃっちゃと舞台設置して僕らの逃げ道塞いでるって事よね」

「ゲスい」

『人の裏の読むなんて……そんな性格の悪さ、誰に似たんだか』

「てか神楽のやり方なんて忘れたんだけどー? やり方どころか、セレスも僕も、一度見ただけだし? 無様な姿と舞を晒す事に意味なんてあるの?」

『またまたー。天才の君達なら一度見ただけで十分でしょ? 苦しい言い訳しないの。ま、忘れてたとしてもフィーリングで大丈夫っ。兎に角っ、神楽は決定事項! 宜しくねっ』


プツン ツー ツー

んにゃろう、一方的に切りやがった。


「はぁ。予定だらけで忙しい学園祭に水差されちゃったよ」

「……そ、そこまで熱意が無かったのでは?」

「あのーウカノ様ー。電話の声が聞こえちゃったんですけど、神楽ってなんですー?」

「んー? 大したモンじゃないよメイドさん。箱庭家代表が定期的にやってる『大地に捧げる』豊穣の行事さ。箱庭神楽だの精霊の舞だのフェアリーダンスだの色んな呼び方あるけど、どちらにしろ神事なんて見てて退屈だよ」

「そーですかねー。精霊や妖精みたいな見た目のウカノ様とセレス様が揃って何かをするだけで、それはもう映える光景になりそうですけど」

「もー、やだー。美しいってのは罪だねーセレスー」

「だから目立つ事はやりたくない」

「こ、こんなやる気のない兄妹の神楽を見せられても、神は楽しくなさそうですね……」

「んー? 違うよわらびちゃん」

「なにがです?」


「神『が』楽しませるんだよ?」

「……はい?」


可哀想な者を見る目だ……。


「取り敢えず、大前提として僕ら兄妹は神、神族しんぞくな訳ね?」

「な、なるほど……?」

「ってゆー設定だよ。いつまでも頭ハッピーセットなママンが言ってる設定。それに則るとね、箱庭神楽は日々頑張ってるそんな『自然』に愛を振り撒くイベントなんだと」

「そ、それはまた……箱庭家『らしい』(上から)目線な……」

「で、本番はどーするセレスー? やっぱ君が踊ってよ」

「『次代』はアンタなんだから当然アンタが踊るべき」

「面倒いなぁ……恨むぜママン」

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