65 お嬢様と らちかんきん!
その後、自然な流れでわらびちゃんの(メイドさんが運転する)迎えの車に乗り込み、僕も家まで送って貰える事に。
「う、ウカノさんも乗るんですね……」
「家の方向おんなじやしええやん。ねーメイドさん?」
「そーですよーわらび様ー。一人増えようが燃費は変わりませんしー。それに、ウカノ様には昨日のお礼もまだ言えてませんでしたしねー」
「あっ、そーだよ。わらびちゃん僕にお礼は?」
「か、感謝はしますが、別にあの程度の荒ごと、自らの力で打開を……」
「だったとしても君に『恩を着せた』状況に持ち込むには十分さ」
「う、うーん……」
「ご褒美くれよー。いつまでも恩を着せ続けるぞー?」
「え、え? 何を望みで……?」
「さっきも言ったけど、ウチの学園祭でデートなっ」
「いいじゃないですかーわらび様ーデートくらいー」
「ま、まぁ問題はありませんが……」
「んだとぉ? もっと僕と遊びたそうにしろっ」
「あ、遊びたいですっ……」
「おやー? ウカノ様、あそこで歩いてるお方は……」
「ん?」
視線の先に、スタスタと歩く銀髪少女が一人。
あの僕とそっくりな完成されたシルエットは……
「メイドさん、あの子の横につけて」
「あっはーい」
「もうちょっと、もうちょっと……よし! (ガラッ)オラァ! (グイッ!)」
「う、ウカノさん!?」
少女を掴み、車内へ引き摺り込んだ。
拉致監禁罪。
「よいしょっと。何か食べるー? セレスー」
「チョコ」
「うぃー。メイドさん、そこにある高級そうなチョコ貰うよー」
「どぞー」
「み、皆落ち着き過ぎでは……?」
「どしたんだいわらびちゃん、急に声を荒げて」
「(パクパク)」
「……う、ウカノさんの膝の上で何事も無かったかのようにチョコを……実家のようにリラックスし過ぎでは……?」
「ま、この子は僕が近づいて来るの分かってたからね。双子特有のテレパシーだよ。ね、セレス」
「(コクリパクパク)」
「い、いや、私達(姉妹)にはそんな標準能力無いんですけど……」
「愛だよ愛。家族愛が足りないからだよそれは」
「私達に愛なんて無い(パクパク)」
「セレスったら恥ずかしがっちゃってー(ホッペツンツン)」
「(ミラーちらり)あれー? 兄妹のお二人方、イチャついてるとこ悪いんですけどー、車の後ろー、外の一般人達ー、なんかこっち見ながら焦った顔でスマホで通話してませーん? 通報されてませーん?」
「おっと、そりゃあまずい。セレスッ、ピースピース、後ろの窓越しにピースッ」
「(パクパクピース)」
「…………ふー。どうやら通報をやめてくれたようですねー」
「ほ、本当にこの兄妹は落ち着きが……」
「『これは撮影ですよー、やらせですよー』って証明する為にラスト出演者みんなでダンス踊る作品みたいだ」
「た、例えがよく分かりません……」
再発進する車。
「ねーセレス、知ってる? 明後日ウチの学園祭なんだってさ」
「知ってる」
「物知りだなーセレスは」
「だからその準備で帰るの遅れた」
「あの君が真面目に学生やるだなんてねー。何か目的でもあるのかい?」
「別に。やってる事は殆どアンタの尻拭い」
「苦労かけるねー。さて、学園祭で園芸部はどんなド派手アトラクションを披露しようか」
「完成と同時に潰す」
「えー? 部活動としてなにか実績残さないとじゃない? そもそも何で世の中には天下一園芸武道会だとかの分かりやすい大会がないんだ」
「ガーデニングコンテストだとかの大会だの色々ある。アンタが調べる気もやる気も無いだけ」
「そんなの地味だよっ。やっぱり食虫植物同士で戦わせるとかしたいっ」
「『普通の』食虫植物はバトルなんてしない」
「ど、どんな会話ですか……」
「微笑ましー兄妹愛ですねー。よければこの頂き物の和菓子セットもどうぞー」
「おっ、僕らの好きなクジラ餅と昆布アメがあるじゃーん。桐の箱に入ってていかにも高級そう。セレスは昆布アメ派だったよね。あーん」
「(もっちもっち)」
「僕もクジラ餅を(パクッ)んーいいよね、このクルミの香ばしさと食感、柔らかめな餅のモチモチ感、あと程よい甘さ。中毒性あるよー(もっちもっち)」
「み、見た目も食べる姿も似た者兄妹ですね……」




