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64 サンドイッチ


「みたいな事があってさぁ」

「な、なるほど……」

「ね? 僕かわいそうでしょ?」

「そ、そうですね……」

「反応が悪いな。君を待ってる間お嬢様方を侍らせてたから嫉妬でイラついてる?」

「ち、違いますっ」


お嬢様学校山百合学園カフェテリアにて、わらびちゃんに愚痴る僕。

彼女はオドオドしつつも僕をジト目で見つめていた。


「そうだ、わらびちゃんも明後日の学園祭来なよ。どうせ暇でしょ?」

「ま、まぁ確かに時間はありますが……一緒に回るんです?」

「君が学園祭中カヌレの影武者になってくれれば僕が彼女と一緒に回れるからね」

「ま、真顔でなんて事を……発想が悪魔じみてますね……」

「双子っぽいトリックがしたいんだよっ」

「ぅぅ……言うほどトリックでも……」

「時間があれば君とも回るからさー」

「つ、ついでみたいに……」

「お待たせしましたー」

「どもー」


カフェテリアの店員さん(バイト中の山百合学園生)が注文の品を僕らの座るテーブルに置く。

僕はそれをムンズと掴み、


「君も食べる?」

「い、いえ、お気遣いなく……」

「そ。(パクッ)んー、クリームチーズサンドイッチうまー」

「さ、さっき屋台の試食で沢山食べた後なのでは……?」

「パンはご飯てよりオヤツに分類されない?」

「よ、よく分からない感覚ですが……夕ご飯食べられなくなりますよ?」

「ヘーキヘーキ、僕消化いいから」

「……ゆ、『夕飯を作る人』からすれば、あまりその日食べたのと同じモノを出したくは無いでしょうね……」

「ん? 夕飯作る人?」

「え? あっ……」

「僕、実家住みだと思ってた? いや、一人暮らしなのは知ってるよね。じゃあ同じアパートのカヌレが作ってると思ってた? あの子は今は朝担当だよ」

「そ、それは……姉以外の『物好きな女性』でも連れ込んでるのではと……」

「んっふっふ」

「……な、なんですか、その嘲けるような笑いは」

「君が料理得意ならその『物好きな女』に任命してもいいぜ?」

「そ、そんな挑発には乗りません……!」

「チェッ。あーん」


パクパク、残りのサンドイッチをほお張ると、ポロポロとテーブルに具のレタスが落ちた。


「あーん、こえがぐあふはんのはんへんほへー(これが具沢山の難点よねー)」

「く、口の周りもソースで汚れてますよ(フキフキ)」

「むぐぐっ、こーもあふはいふなー(子供扱いすなー)」

「(クスッ)……普通はお子さんでもここまで汚しませんよ。お茶、飲んで下さい」

「ングッングッ……ぷはぁ。なら逆に君をママ扱いして甘えていい?」

「な、何の逆ですか……? ウカノさんには溺愛してくれる実母がいるでしょう」

「供給過多過ぎて素朴な母の愛に飢えてるんだよー、たまには和食、みたいな」

「よ、よく分からない例えを……今口元を拭いたのだって、周りの目を気にしてですから……」

「んー……確かに、『周りも』僕らを母子的な視線で見守ってるね?」

「え?」


僕らのイチャつきっぷりに、カフェテリアを利用するお嬢様方は興味津々。

アラアラ ウフフ ホホエマー とお上品に微笑んでいた。


「と、言うわけで更に母子の愛を育もうぜ?」

「……な、何が『と言うわけ』ですか……本当に見られていたとは……目立たぬよう生活していたのに……」

「なーに頭抱えてんだ。僕と仲良くしてる時点で変人扱いじゃい」

「じ、自覚があるのならまともに……いえ、何でもないです」

「なんだその諦めの顔わぁ? ふふん、ま、僕はこのお嬢様学校じゃ人気者だから問題無しよ。寧ろ自分の学校よりホーム感ある。今なんて、なんか学校中を敵に回してる感じだし」

「な、何をやればそんな状況に……ああ、カヌレ関連でしょうね」

「君の姉にちょっかい掛けたお陰で僕の学園生活はギスギスさ」

「も、元々周りの評価など気にしない人ですよね……? まぁ、後悔しているのなら、もう少し姉さんとの付き合い方を見直して……」

「だからいっそ二人で学園やめるのも手かなって」

「じ、自分本意が過ぎますっ……! ウチの者から中卒者を出されるのはちょっと……」

「夢先の力があれば学歴なんて漢検並に価値ないでしょ」

「か、漢検を何だと……流石に母さんも怒ります……」

「厳しい家系なんだね。シフォンさんはウチのママン同様もっと緩い人かと思ったよ」

「ふ、普通だと思いますが」

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