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62 独占禁止法

校内は明後日に控えた学園祭ムード


「こーゆーのってさ、本番よりも準備の方が楽しいってあるよね。『このまま準備が終わらなければいいのに』的な。勿論、準備って理由つけて思い人に会うのがメインだけど」

「解らないでもない。旅行に行くまでの時間もそんな感じがする」

「人によっちゃ年取って振り返った時、この時間が人生で一番幸せだった、なんて言う人も居るらしいぜ? 恋が実らなければ尚の事、美化される青い春の時間だと」

「実らない方が幸せなままでいられる、ね。歳を取ればその感覚も分かるんだろうか」

「男女関係も恋愛漫画も、付き合うまでが楽しいし面白いって言うよね」

「い、嫌な事を言うなよ……」

「僕らは関係無いよー」


……ん? 視線を感じる。

一人ではなく、二人、三人、四人……数えるのは面倒いからそこは沢山って事で。

男女問わず、どれもこれも僕に対し『好意的』とは言えない眼光の鋭さ。

……ははぁん、分かったぞ。


「(くいくいっ)カヌレカヌレ、どうやら君とこの準備期間を機に仲良くなりたいって輩が一杯いるっぽいよ?」

「輩って……確かに、視線は感じるね」

「可愛いね、その願いは叶わないってのに」

「別にその子達を邪険にはしないよ!?」

「ああん? はぁ、全く。君が誰にも彼にも良い顔するから周りは勘違いしちゃうんだよ」

「私は生徒会長だよ? 皆に目を向けないと……」

「へんっ、職務を全うしようとする姿勢は素晴らしいけどもう手遅れだぜ? 君はもう皆の頼りになる生徒会長じゃなく『男に現を抜かすドスケベ女』ってイメージが広がってるからなっ」

「そっ、そんな事ないからっ」

「支持率は急降下。君が会長の任を降ろされるのも時間の問題だねっ」

「……それならそれでいいけどもね。どちらにしろ降りる予定だったし。だからこそ、この学園祭を私の最後の仕事としていたよ」

「そんなん実行委員会に任せろよー」

「この時期はどこも人手不足さ。……というか、私の事は良いんだよ。私は、自身がどう言われようとも受け入れられる。が……皆が君へ負の感情を向けるのは耐えられないよ」

「なんだいそんな事。人々は元来『自然を恐れるモノ』さ」

「よく分からない自己評価を……本来の君の優しい部分を皆が知れば、不当な誤解も解けるってのに。私の精神衛生の為に、逆に君が皆にもっと歩み寄るとか出来ないかい?」

「僕はただそこに『在る』だけだからね。周りに合わせるだとかそーゆーのじゃ無いから。自然が人間達に都合良く雨や雪を降らすかい?」

「概念と化さないでよもう。はぁ、それじゃ、私も仕事に戻るよ。今言った事少しは考えといて。また後で、ね」


僕から離れてすぐ、「会長!」「カヌレさん!」と輩らに囲まれるカヌレ。

支持率は下がれど人気は健在、か。

全く、生徒会長なんて目立つ役職、最初からやらなければ良かったのに。

ま、彼女が目立ったお陰で僕の目に触れたってのもあるし、難しい所だけど。


いや、カヌレほど目立つ存在なら、それも時間の問題だった、かな。


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