58 ラウン◯ワン
ママンから貴重らしい植物園のチケットを貰った僕。
「売らないでね?」
「ンだよぉ心読みやがって。行きたいって願う人の願い叶えて何が悪いンだよー」
「どちらにしろ転売で購入した人は入園出来ないけどね」
「謎に厳しいな。転売で騙されて買った人が哀れ哀れ」
「転売なんかで楽に来園されてたまるかい。ま、チケット自体が珍しいから記念に欲しいって人もいるみたいだけど」
「物好きがいるもんだねぇ。……で、本題に戻るけど、アノ植物園と僕の主人公体質、何の関係が?」
関連性がまるで分からない。
あそこは空気が綺麗で『色んな』植物や動物がいる『賑やか』な場所ってくらいなのに。
「難しい理由でも無いさ。君には私という創造神と同じ『世界を運営する力』が備わっている。その一部、『生物を従える力』の感覚は、自然豊かなあの場所に浸れば自ずと掴めて来るだろう」
「ねー、このおばさんは何言ってんだかねー。スピリチュアル過ぎて訳分かんないでしょーアンドナ?」
「えっ、私に振るの!? ……ええっと、兎に角、その植物園に行けばいいんだよ」
「そっかー、じゃー皆で行こっかー。『三人で』ね」
「三人って……ま、まさか……?」
「そんなに連れて行きたい子いるのー? いいよー全然。くくっ、ウー君成長の為の贄となって貰おう」
「ヒェッ」
「コラー! だからツレ虐めんなっつってんだろババー! あ、セレスも来る?」
「行かない」
チュー と、どうでも良さそうに妹はストローでカルピスを飲んでいた。
「んっ、そろそろ出ようか? この後も皆で遊ぼうぜ? 食後の運動ってやつさ」
「おばさんが若者のノリに付いていけんのかよ。カラオケでグローブとか歌わないでくれよ?」
「さ、最近の曲も歌えるからっ。別にカラオケ限定とかじゃなくゲーセンとかボーリングとかバッセンだからっ。というかグローブを馬鹿にしてない……?」
「してないしてない。んー、なんか遊びに行く場所のセンスも昭和だね、まぁいいけど」
ふと、今更ながら僕は、テーブルの上にあった【それ】に気付く。
「おや、【おみくじマシーン】なんてあったんだ」
「言われてみれば確かに。あー、この地球儀みたいな形の、懐かしいなー。考えたらママもやった事無いよ」
「懐かしいとか隙あらば若者ぶるな。気付いたついでにやってみよっかな。百円入れてー、星座を合わせてー」
カチャ カチャ カチャ カチャ
出て来る串団子の団子くらいの大きさの玉。
「ついでにみんなの分もやっといたよー。一番悪い結果の人が罰ゲームねー」
「は? (セレス)」
「自分で引けないとか理不尽じゃない!? (アンドナ)」
「面白い(ママン)」
結果は…………どうでもいいとして(怒)
4
その後。
話にあった通り、皆で近くの総合アミューズメント施設へと移動。
ボーリングやスポーツ施設、ゲーセンやカラオケなどが揃った、陽キャが時間を潰す場所。
最初はバッティングセンター。
球を投げて的を打ち抜くゲームや、それのサッカー版などがあったが、まずはコレから。
「ふん、こいっ。僕の鋭いスィングを見せてやるよ! オラァ! (ぶぅん)」
「球三つ分くらいズレて、る(ガキィン!)」
「ほっ(キンッ)」
「え、えいっ(キィン)」
「ぐぬぬ……みんな普通に打ててるしっ。僕だってこんな『金属バット』じゃなきゃ……ん? お! そこの野球少年! その『木製バット』をちょっと貸しておくれ!」
「えっ? は、はい」
「ふんっ(スパッ)」
「す、すげぇ……球が真っ二つに斬れた……(少年)」
「へっ、僕にクソみたいな球を投げたピッチングマシンには理解せてやんねぇとな?」
「ママが怒られるからやめてねー?」
次はゲーセン。
「あれっ? 見知った顔が……」「箱庭兄妹と……コスプレしたカヌレ? わらび? と……兄妹のお姉さん、ですか?」
「うふふ、ウカノとセレスの姉、プランさんでーす(キラッ☆)」
「キッツ」
「面倒いから訂正はしない」
「流石二人の血族、キャラも見た目も濃いなぁ」「で、君の方はどっち? てかそのツノは何のコス?」
「えっ? ええっと……その……」
「ったく、モブガールズも間違えてんな? その子は夢先姉妹じゃなく野生のサキュバスのアンドナちゃんだよ」
「はぁ、さいですか」「相手の家族の前でコスプレプレイ……相変わらずの鬼畜や……あ、ウチらはこの辺で。ではではー」
「納得してないなぁ、別にいいけど。さて……ほう。アイス、伊勢海老、お菓子……色々取れるキャッチャーゲームで溢れてるね。アンドナ、どれにする? 僕は伊勢海老に興味があるよ」
「全部食べ物ばかり……お菓子はまだしもアイスや伊勢海老は持ち運びが大変そう。こっちのヌイグルミとかフィギュアは?」
「そっちも荷物になるっしょ。んー、ならプライズは後にして、音ゲーとかメダルゲーとか格ゲーとか、景品が出ないのにしよっか」
「私がそれら始めたらいつまでも終わらない。特にメダル」
「セレスは昔からこういうチマチマしたゲーム好きよね。ママンの用事終わるまで二人でゲーセンで時間潰したの思い出すなぁ(しみじみ)」
「アンタがすぐにお小遣いの五百円使い切ってヒトのメダル勝手に使って遊んだ事忘れてない」
「根に持ってんなぁ、その時はガブガブ噛みつかれたからチャラでしょや。しっかし、昔は五百円なんて大金に思えたけど、大人になった今だとワンカットのケーキ代くらいにしか思えないよね。これは成長なのか、大事何かを喪失したのか」
「アンタがいつ大人になった。いつまでも子供のまま」
「それはそれでピュアボーイだねっ」
「んふふー、兄妹のイチャイチャ久し振りに見たなぁ、ほほえまー。アンドナちゃん、私達も負けじとイチャイチャしよっか?」
「えっ? えっ? (赤面)」
「おいドサクサで人のモン取ろうとすんなっ。おばサキュ(おばさん×サキュバス)とか需要無いぞっ」
「なら仲良くみんなでゲームしよっ。そこのエアホッケーでねっ」
「ちっ、しゃあねぇなっ。行くぞアンドナッ」
「勝てる気がしないんだけど……」
「あ、ウー君。そこのUFOキャッチャーのプライズである『ミニ亀』をゴールに仕込んで狭くしたりあそこの『介助犬』に偶然装ってこっちの邪魔させたりしたらダメだからね」
「チッ」




