【バレンタイン特別編】
「さぁ、という事でバレンタインですアンドナさん」
「え? 今真夏だよね?」
「何言ってんだ、冬でしょ? 窓の外の残雪を見なさい」
「えっ!? あ、本当だ! それに私達冬服着てる!」
「躰のラインはっきりするタートルネックセーターとか狙い過ぎでしょ、ドスケベめ(ぷにぷに)」
「つ、突かないでよっ。あとセーターに対する偏見っ」
「いやー、雪が降っては溶け、降っては溶けで東北民にとっては辟易する季節だねぇ。雪ではしゃいだのは子供の時くらいだ」
「急にまともなセリフを……窓から見える中庭のサキュバスっぽい雪像、君が作ったんじゃない?」
「で、バレンタインなわけだけど、チョコは?」
「い、いや、急に言われても用意なんて……」
「だろうな、と思って、用意しましたっ。こちらですっ」
「……石油ストーブの上に鍋があるね。この茶色いトロトロ……もしかしてチョコ?」
「そ。チョコフォンデュ。色々つけてオシャレに食べようぜっ」
「灯油が香る石油ストーブのせいでムードも何も無いけど……」
「さっ、目隠ししようか(巻き巻き)」
「なんで!?」
「闇フォンデュだよ」
「普通に楽しもうよ!」
「因みに洋酒入りだよグヘヘ」
「いや、私そういうウィスキーボンボンとかの洋酒入りチョコ平気だから……」
「チッ、酔っちゃって乱れるお約束したかったのに。じゃ、まずはコレからねー、チョコじゃぶじゃぶ……あーん」
「ほ、ほんとに食べなきゃなの……? 変なの食べさせたら怒るからね? ……(パクッ)ほっき(おっき)……(もぐもぐ)……ミートボール?」
「せーかい! 簡単だったかな? ねぇどんな味?」
「チョコ味の酢豚とかポテチとか実際あるから、しょっぱいのとの組み合わせでも食べられなくも……なんというかリアクションが取りにくい……」
「そっか。じゃ、次のにチョコじゃぶじゃぶー」
「まだやるの……?」
「まだまだー。はい、あーん」
「(パクッ)んっ……、……プロセスチーズ?」
「簡単だったねー」
「これは普通に美味しくてリアクション取りづらい……てかさっきから夕飯の食材使うのやめてくんない? こっちも計画があるんだよ?」
「次がラストだよー。次は少し大物でね……(ゴソゴソ)」
「え? なにこの衣擦れ音」
「そーっと……あちっ」
「えっ、ヤケド? 何につけてるの?」
「ハァハァ……さぁ『咥えて』」
「咥える!? 何を!? ムグッ!」
「ホラホラ、何か当ててごらんっ」
「ふごご……やーらはふへ(柔らかくて)……ふほふへ(太くて)……なーふはひ(生臭い)……ひふは(竹輪)!」
「正解! じゃあ今から竹輪チョコポッキーゲームしまーすっ(パクッ)」
「へっ!? め、めはふひほっへひひ(目隠し取っていい)?」
「はへっ! (だめっ)もぐもぐ、もぐもぐ」
「は、はやひっ(早いっ)」
「ふー」
「ゲホッ! プハッ!」
「あっ、コラッ、離すなっ」
「……はぁ……竹輪の穴から息送られたら咽せるよ……」
「ったくよぉ、こんなしょうもない終わりでええんか?」
「もういいよ……」
「ならひと月後のホワイトデーで挽回だな」
「もういいよ!」




