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43 内なる戦いを繰り広げる妹

「はぁ、もう。体が軽く感じても、実際に軽くなったってわけじゃないからね?」

「ひどいっ、重いって言うんですかっ。……ふふっ」

「楽しそうだね」

「はいっ。最期くらい欲望に忠実に楽しまないとですっ」


終わりを知る彼女だからこその大胆な行動。

僕は「それもそうだね」と返し、抱き締めるような体勢で彼女の背中に手を回し、指圧を再開。

いや、普通にやり辛いな。

てかこの体勢でも出来るなんて一言も言ってねぇ。


「……もっと、痛いくらい、強く抱き締めて下さい」

「ハグじゃ無くて飽くまでマッサージだからね?」


言いつつも、ツンデレな僕は彼女の要望に応える。

ここ数日、同じ体型の女達を抱き続けてるけど、一向にこの肉感は飽きないな。

ーー静寂。

アレだけ屋敷には人がいたのに。

聞こえるのは僕らが生きてる音だけ。

まるで皆、僕らに気を遣ってくれてるかのよう。

スゥ ハァ スゥ

寂しさすら覚える室内で感じるのは、彼女の息遣いと……


「凄いドキドキしてるね。地響きかと思うほどの振動を感じるよ」

「ンッ……別に、素直な反応ですよ。それに……今はなんだか、凄く、体が熱いんです……」

「マッサージ効果で血流良くなっただけだけどね。クククッ、狙い通り、エッチになるツボが効いてきたようだな」


血流を良くするチョコレートが媚薬と言われる由縁だ。


「ならば、私は悪くないですね……私に襲われても自業自得です」

「人の所為にするだなんて。君は欲望に素直で余裕のあるお姉さんキャラじゃなかったのかい? もう片方の『君』のが逆に怖れ知らずって気がするよ」

「そう、かもしれませんね。結局、私にも臆病な面があるんです。でも、どんな『私』も、貴方なら受け止めてくれるんでしょう?」

「勿論」

「だから、安心して行けます」


安心と言いつつも、収まらぬ鼓動。

興奮か、緊張か、恐怖か。


「そ、安心しな。元々一つだったんだ。消えるんじゃなく、戻るだけさ。君という感情は、この先も生き続ける」

「……似たような事を『私』にも言われましたが……」

「しっくり来ないか。ま、そもそもわらびちゃんが僕と居て、君が消えるほど『穏やかな時間が来るとは思えない』けどね」

「……ふふ。そこは『私』を安心させて下さいよ」

「それでも心配なら、そうだな。『僕とわらびちゃんとの子供として』頑張って生まれて来な」

「ね、狙って出来ませんよっ」

「君の『欲望としての本質』の腕の見せ所だよ。そうだなぁ……子供の名前は、強いわらびこと【おもち】ちゃんにしよう」

「わらび餅とお餅はそもそも原材料に違いが……」

「いや、やっぱヘタれだからもっと柔い【ぎゅうひ】ちゃんにしよう」

「それも原材料が米……ウカノさん圧倒的にセンスが無いですね」

「なにをっ。君の名前なのに文句ばっか言い過ぎっ」

「だからこそですよっ。もっと女の子らしい可愛いの考えておいて下さいっ」


ゆっくり、抱擁を解くわらびちゃん。

濡れた瞳はチラリと僕の『ある一点』を見つめていた。

コクリと喉を鳴らし、


「思い残す事はもう無いと思ってましたが……一つだけ、やり残した事がありました」


察しがついていた。


「いいのかい? 味見程度じゃ済まないぜ?」

「それはお互い様、です」


ペロリ、彼女は舌舐めずりして唇を湿らせ、


「んふ。夢先家は元来、『捕食者の家系』ですが……貴方になら、食べられるのも本望です」


ゆっくり、ゆっくり、近づいて来るわらびちゃんの顔。

余裕ぶりながらも、やっぱり彼女の鼓動はその度に加速していって。

抱き合う僕らにはお互い、逃げ場などなく。

まるで磁石のように、唇同士が触れーーーー「ワプッ」

…………唇を塞いだのは唇ではなく、『人差しと中指』。

コンニャロ、あの流れでヘタレやがったな? と抗議の目を向けるも、


「もう少しだったんですがね」


僕の言いたいセリフを自嘲気味に漏らし、わらびちゃんはパチリとウィンクして、


「ウカノさん。また会えたら、続き、しましょうね」


そのまま、目蓋を閉じた。

お、早速続きか? というサインを受け取り、唇を塞ぐ彼女の手をどかして顔を近づけてーー

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