表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

354/369

329 職員と小姑

探していた兄は、なんと結婚していた。

だが、妹の私は素直に喜べない。

何故って、兄の相手は、狐耳を生やした『異形』の女だったから。



何故、こんな『異常存在』まみれな島の住人が、なんて事ない兄などに惚れる?


本当に『ただの愛』なんて言葉で納得が出来るか?

『あちら側』の者が、兄に近付くメリットとは?


それは『アレ』しかない。

一般人とは違い、私や兄の頭の中には『組織』の『異常存在』の知識がある。

詰まる所、『情報』だ。


何度も言ってるが、前提として、ここの連中からすれば『組織』など大した脅威ではない。

なので、搾り取った情報にも大した『価値』などないだろう。


それでも、なにか『ここの連中に役立つ情報』があるのかもしれない。


例えば、『空間に文字が書けるだけの鉛筆』という『異常存在』があったとして、『組織』が『脅威で無い』と雑に保管してるようなものでも、ここの連中はそれを有効活用するかもしれない。

『空間に文字が書けるだけの鉛筆』というのは『組織』の調査不足で、実は『世界のルールを書き換えられる鉛筆』だと、ここの連中が『本当の使い方』を見出してしまうかもしれない。


だからこそ、私は『警戒』しなくてはならない。


「はぁ。兄を、よろしくお願いします」


なんて、いまだ戸惑ってる妹という風に、狐花の手を握り返す私。

私の発したその言葉には、勿論、心など籠っていない。

自然な風に返しつつも、奥底では『警戒心』を剥き出しにする。


『警戒』……


兄は既に、何らかの手段で『組織』の情報を吐かされている、という前提で進めるべきか?

いや、進めるべきだろう。

『組織』の人間は、『別組織』侵入時前には予め、自白剤やら暗示に対抗する薬剤摂取やら、その為の精神訓練を受けている。

しかし、兄は色々と急だったんで、薬剤の投与のみ、と聞いている。

『組織』としては杜撰も杜撰な対応だったが、当時の『組織』の人間らは何やら焦ったように、兄をすぐに現地へと向かわせたかったようだ。


まぁどちらにしろ、『ここの連中』にはそんな対策など無意味だったろう。

鍛えられた『組織』の人間だろうが、一般人の兄だろうが、どちらからも容易に情報を引き出せるような連中だろうし。


今回の場合、兄は『色仕掛け』的な手段で『洗脳』され、この島に囚われているのだ(という前提で進める)。

おあつらえ向きに、狐花は『狐』。

男を魅了し誑かすイメージの『化け物』として、これ以上の人選は居ない。


「んー? どぉしたのー?」

「……いえ」


女狐……

細目の美人という、あからさまに女狐な様相キャラデザ過ぎて、逆に『普通に兄を好きな変人なのでは?』と思いそうになる。


……『回りくどい』、と思わないでもない。


腑に落ちないのだ。

いくら『組織』の情報が欲しいとしても、手段が『回りくど過ぎる』。

というか、既に『用済み』の筈だろう?

絞れる情報など絞ってる筈だ。

後は、兄の記憶を消してその辺に放っておけばいい。


……不気味だな。


思えば、『結婚』までする必要など無い。

恋人関係……いや、『一夜の関係』でも事足りる。

なのに、なぜ未だに兄を『監視下』に置いている?

それが狐花の『上の者』による指示なのか?

兄の利用価値……兄を餌に、更に私のような関係者を釣る為か?


……意図が読めない、不気味さ。


「ま、会ったばかりで『なんだこの女は』と信用ならんと思うけど安心して? お互い、分からん事はこれから知ればええから」

「そうそう。狐花さんは素直な……いや、まぁちょっと意地悪な所があるけど、しっかりした人だぞっ」

「なんやねん意地悪て」

「金にうるさそうな雰囲気出してるのに、金も無い俺のような男を拾ってくれるような人なんだ、よっぽどの変わり者だろ?」

「全く……ま、でもこの通りや。ウチらは普通の『恋愛結婚』やで」


「……いやいや、別に、そんな恥ずかしい事を、改めて言わないで良いですから」


……この女からすれば、私の猜疑心など筒抜けのようだ。

私が元『職員』という情報すら、既に兄から漏れてると考えるべきだな。


『組織』の…………いや。

もう『組織』など関係ない。

元より、私は元『職員』で、今はただの女子高生だ。

『世界の危機』だかも関係ない。


兄を救うという、当初の目的を果たす。


「言っておきますが、こんな男より素敵な男はいますよ?」

「うふふ、それでもウチが好きになったのは彼やからねぇ」


話は平行線になりそうだな。

埒があかない。


「ところでお兄、休憩時間は?」

「え? ああ、丁度これから……」

「よし、じゃあここで待ってるから急いで。なんか近くに喫茶店とかあるでしょ? そこで詳しい話聞く」

「ええ……」


「ええんやない? 久しぶりの家族水入らずって事で。いや、今は私も家族の一員やね。くふふ」


「ほら。お嫁さんもこう言ってるし、ね」

「あ、ああ……」


家族の一員という部分はスルーした。


「では、問題解決、という事で、わたくしもそろそろ『自分の諸用』の方に向かいますわね」

「ああ、うん。ありがとうアマンさん、色々相談に乗って貰えて助かったよ」

「ええ、では」


「山下、ウチらもどっか行ってるわ。なんかあったら、このデバイス? だかに連絡くれ」

「ウチら? 私は一人で動きますので」


「うん、またね」と返し、アマンさん、ユキノ、わらびさんとも別れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ