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32 幸せ家族計画

「それで、昨日の話なんだけど」

「ん?」


どうやら、コレからが本題のようで。


「私の妹の件、だ」

「ああ」


ーーてっきり、


「話題に上がらないから昨日の件忘れてたのかと」

「意図的に避けてたんだよっ、そこまでボケてないっ」

「まぁ僕も女と居る時に別の女の話するなんて野暮な真似はしないよ(気分によりけり)」

「他の行動でもその紳士さを見せて欲しいんだけど……」

「君が言いたい事は大体察しが付くぜぇ? 『妹であれども私以外の女にかまけるな』、だろ?」

「……色々曲解してそうだけど、でも、だとしたら聞き入れてくれるのかい?」

「イヤですけど?」

「当然みたいな顔っ」

「そもそも彼女と会う事になったキッカケは君が放課後僕に構ってくれなかったからなんだが?」

「私のせいなの!?」

「ま、遅かれ早かれ、わらびちゃんとは出逢っていたと思うけどもさ。てかなんか最近の僕、コレ系の問答繰り返してない?」

「知らないよっ! 聞き捨てならないよっ! 誰としたのさっ」

「こっちの話」

「……大体さ、君、まだそこまでわらびの事知らないよね。私と違って『今の君』はあの子との付き合い、一日だけだし」

「せやね。でもそれを言うなら、僕らが『初めて話した』のは数日前じゃないか。トータルで見れば二人で過ごした時間の差は誤差の範囲だよ」

「……初めてじゃないのに(ボソッ)」

「あんだって?」

「こっちの話っ」


今の急にキレる感じはアンドナっぽかった。


「……あの子は、君が思ってるような『大人しくて気弱な子じゃ無い』よ」

「ほぉん」

「……なに? その含みのある顔」

「もけけけ」

「笑ってるのそれ!?」

「いや失敬。続けて。君の口から聞きたいんだ、わらびちゃんの事ぉ(ねっとり)」

「なんでそんな乗り気なの……、……あの子は、君とは違うベクトルの『お姫様』なんだよ」

「僕はお姫様というより『王子様』だけどね」

「……あの子は、『欲しい物は手に入れないと気が済まない』我儘な部分がある。その為なら他者も自らも全て巻き込む事も辞さない。タチが悪いのは、あの子はそれを『無意識』でやってる」

「意識的にやってる僕より厄介なバッドプリンセス(悪妃)だな?」

「解ってるなら少しは抑えてよっ」

「くききき」

「やっぱりその笑いなに!?」


僕は歪む口元を手でグニグニおさえて、


「そりゃあおかしくもなるさ。質実剛健、謹厳実直、酒池肉林、淫乱淫魔と周りから評される君の口からそんな陰口が出るとはね」

「変なの混ざってない!?」

「寧ろ好感度が上がったよ。わらびちゃんに、そして君も」

「……やっぱ話さなきゃ良かった」

「いいや、僕は聞けて良かったよ。君の僕への愛が再確認出来たからね」

「……意味が分からない。私の性格の悪さを垣間見ただけでしょ」

「それも含めて、だよ。人を貶してまで、僕を独り占めしたいって気持ちがさ。もっと君のそんな『悪い子』の一面を見せてよ。『僕だけに』さ」

「ぅぅ……この子、何でも肯定的に捉え過ぎだよ……」


カヌレはそっぽを向き、赤くなった耳を僕に晒して、


「これからどうするつもり? 君の考えや行動は?」

「んー。昨日みたく、君が生徒会で忙しい時はわらびちゃんのお嬢様学校行ってちょっかい掛けに行く感じになるかなー」

「当たり前のように女子校に行こうとしないで……追い出されるよ?」

「僕の場合あそこで色々あって知り合いも多いから問題無く出入り出来るよ」

「何したのさ一体……」


それはまた、別のお話で。


「というか、色々と前提を無視して会話してたけど、そもそもわらびが『君を好き』という保証は?」

「ああん? 君、浴衣姿の彼女を見て解らなかったん? アレは『オスを求めるメスの顔』でしょ」

「言い方っ! ……君みたいな強烈な子、見た目が良いから遠目で『芸術品』のように見てる分には良いけど本性知った後まで『一緒になりたい』と考える女の子は稀だよ? どうせ昨日もわらびを強引に連れ回したんじゃない? 私の時みたく」

「悪口遠慮するなとは言ったが容赦ねぇな? ーーま、例え『今の』彼女が僕を好きでなくてもいいさ。まずは友達からってヤツだ。君の家族と仲良くなる……将来を考えたら、それ自体に問題は無いだろ?」

「しょ、将来って……そこまで考えて……? (紅潮)」


「そう。君やわらびちゃん『ら』皆で『一つの家で暮らす』野望の話」

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