303 会長と乗船
昼休みの学園の屋上にて、旅行の計画(悪巧み)を立てていたら、愛する生徒会長様がやって来て……
「随分、杜撰な計画じゃ無いか?」
「いいや、どうみても完璧な…………ハッ!」
怒気とも殺気とも知らぬ『気』の力を感じた僕は、咄嗟にゴロンと身体を回転させ、屋上の守護者ことモフモフアニマル達の輪の中に身を隠す。
「今更隠れても……」
「でもほんと上手く隠れたね、姿が全く見」
ガサガサ
「ふぅ(ヒョコ)」
「え!? ウカノ君なんでそんなとこに!?」
「(後ろの木の)樹幹から顔を!? ワープか!」
「猫か君は」
はぁ、と呆れ顔のカヌレ。
「びっくりさせやがって。いつの間に来てたんだいカヌレ」
「別に、普通に来てたんだけどな。君らが話に夢中で気付かなかっただけだろ」
「ふぅ。なら話は聞こえてなかったって事か」
「どういう納得の仕方だ。普通に話は聞こえてたよ」
「なら話は早ぇわ」
ピョン! シュタ!
僕はドリー(樹)の樹幹から飛び跳ね、モブガールズの元に着地。
二人の間に立ち 「「うおっと」」 二人の肩を抱いて、
「くくっ、彼女達はイク気満々だぜ? いいのかい?」
「私は別にいいけど」
「カヌレ!?」
「即答しやがった!」
「どうせ、ウカノ君が居れば命の保障はされてるしね。楽しんで来たら良いさ」
「甘いね。それは『僕が居れば』の話だろう? 君が来なきゃ僕も行かんぜ? 二人は……高確率で死ぬ!」
「死ぬの!?」
「ウカノ君の庇護がなきゃ命が脅かされる可能性もあるの!?」
「全く……君は命を軽く見過ぎだよ。『あとで生き返せばいい』と思ってない?」
「どういう会話……?」
「ワイらゾンビになるんか……?」
「むぅー。どうしても来ないってのかいカヌレ?」
「いや、普通に明日は学校あるしね。というか、つい数日前の休日に(魔界に)遠出したばかりだろ」
「旅行に行った後は何がしたくなると思う? 旅行に行きたくなるのさ」
「はぁ。なんでまた、こんな平日のこの時期に『アソコ』に行こうとしてるんだ」
む? ああ、成る程。
『そこ(行く理由)』の部分の会話までは聞いてなかったのね。
「「そりゃあ」」
ムギュ
「「むうっ!?」」
「『ウチ』に帰る理由なんて、気分以外ないだろう?」
「なんで二人の口を塞いでるのか。んー……」
顔を伏せ、人差し指親指で両目尻をモニュモニュとマッサージしていたカヌレだったが、
「……明日の放課後以降に行く、なら良いだろう」
「えー、放課後以降? それって夕方に行って、次の日の学校の時間までに帰ってくる感じ?」
「一泊……は出来るんだろうけど、忙しないなぁ」
少し不満顔なモブガールズ。
まぁ、遊べて数時間だけ、という認識だろう。
『普通の場所』であれば、確かにそうだ。
「大丈夫だよ、『存分に楽しめる』から」
「そーお?」
「ま、タダだし、短いけど濃密な時間を過ごせると思えば良いか」
納得してくれたようだ。
「……どうせ、何が企んでいるんだろう? ちょくちょく『アソコ』に行ってる君が、何を今更改まって」
デカ乳を持ち上げるように腕組みするカヌレに、僕は「さぁて」ととぼけて見せた。
そうして、翌日の放課後。
時刻は夕方。
僕らは港に集合していた。
「なんか緊張して来た……」
「果たして無事に帰って来れるのかどうか……」
落ち着かないモブガールズ。
すると プゥーン 僕らを運ぶ『豪華客船』も、ちょうど良いタイミングでやって来た。
「うわぁ……大っきい……」
「こんなの普通なら入れない(乗れない)よぉ……」
見上げるモブガールズ。
僕らは数歩引いた位置からその様子を眺めながら、
「くくっ、こういう庶民の反応も新鮮だなぁカヌレくんよ」
「悪い顔だなぁ。その悪徳政治家みたいな楽しみ方がよく分からないや」
「にしても、モブガールズと違って随分軽装だね? ちっちゃいバック一つのみで、まるでコンビニにでも行くような格好だ」
「その確認必要?」
「楽しませ甲斐の無い。君には何も知らない真っさらな気持ちで『ウチ』を楽しんで貰いたかったよ」
「心配せずとも、私が知ってる『あそこの全容』は10%にも満たないと思うよ。行く度に殆どの中身も変わってるからね」
「まぁローグライク系ダンジョンだからなぁ」
それから、僕らはフェリー乗り場の建物に入り、連絡通路を通って船へと乗り込んで……
「ほおおおっ、中は全体的にピカピカキラキラゴテゴテしとるっ!」
「バカっ、騒ぐと田舎ものと思われるっ! 時間の問題だろうけどっ」
「うーむ。なんやかんやで、これに乗るのは初めてだな」
「そうなんだ。しかし、プランさんがこんな『いかにも』な送迎船を作るなんて意外だね」
「金持ち需要って事だろうさ。連中はみすぼらしい一般船になんぞ乗れないと文句を言うだろうし」
「プランさんが金持ちにへりくだった……なんて事は無いだろう」
「金持ち客には金持ち客としての『利用価値』があるんだろうさ」
「やはり怖いね、あの人は。まぁ」
チラリ
カヌレは乗客らを一瞥し、
「金持ち以外にも、一癖も二癖もありそうな乗客もいるけれど」
視線の先には、夏だというのにコートとハットをつけた大男や、「ケケケ」とナイフを舐める蛇のような男、破廉恥なドレスを着てクスクス笑っている美女、などなど……
「みんな、『現地』で悪さしようって企んでる顔だ。いや、この船内でも仕掛けて来るかもな」
「「ヒエッッ」」
モブガールズが震え上がった。




