285 会長とぶさかわ
魔界デートも終わり。
いや、家に帰るまでがデートなんだが、一応区切り。
僕とカヌレは、今から人間界へと戻る。
カヌレの真の実家? こと魔王城にある、異世界転相装置の【球体】を使って。
僕は そっ と球体に触れる。
青白く、まるで地球のように淡く光っていた球体が、
ボッ ボッ ボボッ
まるで、石油ストーブ(上にやかんなどを載せられるタイプ)を着火した時のような音を出して……徐々に……濃いオレンジ色へと変わっていく。
地球から太陽に変わった。
「これ、いつ魔力取られるの?」
「いや……もう『起動』した。つまり」
「既に取られたってこと?」
「ああ……体調に変化は?」
「別に? そっかぁ、魔力が補充されるとこうなるんだねぇ。なんか弱ストーブって感じでヌクヌクしてて、冬に欲しくなるね。電気代も灯油代も掛からないエコな暖房だ」
「や、本来はここまで赤く変化なんてしないんだよ。この感じは……私達が二回分……『往復』出来るくらいの魔力が溜まってる。つまりは、片道換算で四人分だ」
「余計に金払った気分だぜ。キャッシュバック可?」
「そこは諦めて貰いたいけど…………にしても。これだけ放出しても、君の髪色は戻らないのか。一体、どれだけの貯蔵量を……」
「試しに、魔力スカウターがここにあるなら僕の魔力量を測ってみてよ。やっぱり爆発するかな?」
「まぁ……普通に『error(計測不能)』となるだろうね」
よく分からんが、僕は魔法使い放題って事か。
「んじゃあ、この球体に貯めた分は僕らがまたこっちに来る時用に残しとくか」
「いや、その時までに『別の者』が使用すると思うよ。一台しか無いからね、コレ」
「はぁ? なら『僕にそれ相応の対価』を払えとソイツに伝えとけよっ」
「無尽蔵なのに細かい事を……」
「そうだっ、コレを機に僕の魔力をタンクかなんかに詰めて、それでビジネスをせんか?」
「やめてくれ。市場が壊れるし、君由来の魔力はなんというか、余計な災厄を招きそうで後が怖い。愛着はない世界だが、滅ぶのも、ね」
「この世界貧弱過ぎない?」
「君は容易に世界を滅ぼせる存在だという自覚を持ってくれ」
「新たなビジネスチャンスの芽を摘むだなんて。これだからお嬢様は」
「だから、王子様が何言ってるんだ」
「だから、別に裕福な暮らしはしてないっての」
……で。
「魔力注入したのはいいけど、この後は?」
「あとは、利用者の任意で移動れるよ。スイッチみたいのは無いから、心の中で『帰りたい』と思うだけでいい」
「ほぉん」
「でも、肝心の君は『帰りたい』と思ってくれないだろうから……私が『やる』ね」
ギュッと強く手を繋いでくるカヌレ。
まるで『逃がさん』とばかりに。
「信用ないなぁ」
「分かってるじゃないか。ああ……あと、んんっ」
カヌレは咳払いをして、
「人間界じゃ、今の状態の君は世界への影響が凄いから、髪色、戻しといて」
「影響ってなに? インフルエンサー的な?」
「まぁそんな認識でいいよ(どうでも)。ああ、髪色を戻すってのは、『元の君に戻って』という意味ね」
「えー、でも、魔法使いモードを解いた状態であっちに戻った瞬間、外敵に襲われたらどうするのー? ふあーん」
「どうする、とは? 君は魔法が使えずとも今まで問題無かったろ? (実際には無意識に使っていたが)」
「でもでも、髪の戻し方なんて知らないしー」
「今の君、プラン(お母)さんにそっくりだね」
「あ、萎えたぁ! (スゥ)」
「よしよし、じゃ、帰ろっか」
「ぐわあああ! 連れていかれるううう!」
「おっと、念には念を(スッ)」
「なにっ、視界を(もう片方の手で)塞がれたっ」
「これから行く『あちらの球体(人間界のゲート)』の場所を君に知られたら面倒だからね。ついでに嗅覚も封じるか」
片手でパーにして器用に僕の目と鼻を覆うカヌレ。
口までは塞がないらしい。
「キャッキャ(鼻声)」
「楽しそうで何よりだ。じゃあ、今度こそ」
キィイイイイッ
指の隙間越しからでもわかる。
球体が更なる発光をし、部屋全体が光に包まれて…………
「ううーん…………はっ!」
目の前が真っ暗。
平衡感覚が掴めない。
立っているのか、寝ているのか。
僕は今、何をしていた?
ぶ に ゅ ん ……
む?
この、背中に感じる、ずっしり重くて柔らかな圧力は……
「着いたよ」
背後からの声の主は……
ああ、そうか。
僕は今、目隠しと鼻隠しをされてたんだった。
「今どこー? (鼻声)」
「人間界に戻って来た直後、とだけ言っておこう。場所は某所だ」
「僕は鳥頭だから見てもすぐに忘れるってー」
「興味のある事に対する執念は凄まじいだろ、騙されんぞ。……目隠しと鼻栓を」
「誰に言ったのー?」
「『ここの者』に、さ。当然、特定に繋がらぬよう黙って貰っている」
「用意周到なこって」
でも。
「さっきからだけど、『口』や『聴覚』は封じなくていいのかい? 随分甘く見られたもんだね」
「敢えて一部は解放してるのさ。君の五感……いや、『六感』も含め、全てを封じると『何が起こるか分からない』からね」
「おいおい、僕は『世界崩壊を招くスイッチ』かい?」
「そうだよ。君に『何かが起きた』と察した『世界』が、君を助ける為に『牙を剥く』」
「僕ったら愛されてるなぁ」
「愛というより『隷属』だよ」
「しかし、『仮定』にしてはやけに具体的だね。まるで『世界が暴れたのを見た』ような口ぶりだ」
「『見た』んだよ、実際に。その時は、君の母『プランさん』がおさめてくれたから大ごとには成らなかった。恐ろしいのは、プランさんにすら『世界が牙を向けた』事だ」
「記憶に無いなぁ。そんな『穴という穴』を塞がれるシチュとか、僕、誘拐でもされてた?」
「やっぱり覚えてないか。まぁ……興味本位で再現されても困るし、この話はここまで」
バッ スッ キュッ
アイマスクと鼻栓を装着される僕。
「目隠しならまだしも、鼻栓までしたらブサイクにならない?」
「可愛いから気にしないで」
ブサかわ的な?




