283 会長とトカゲヒロイン
カヌレとの魔界ドライブデート。
SAを満喫し、再び高速道路へ。
話題は、『結婚したらどっちに住む?』という流れになり……
カヌレの希望は、最早魔界よりも長く住んでる人間界。
「そも、私から積極的にこっち(魔界)に君を連れて来るつもりも無かったしね」
「こんな素敵な場所なのになぁ」
「それは君からすれば新鮮味を感じてるだけで、すぐに飽きるよ。というか、世界観や売り物が物珍しいっていうなら、君の実家(植物園)も同じだろ」
「せやろか? 当たり前過ぎてわかんないや」
バリボリバリ ゴクゴク ムシャムシャ
「(ゴクン)まぁ確かに、今の所、魔界の食べ物(お土産)、見た目が奇抜なだけで、味は〇〇っぽいって感想しか出てこないのはある。人間界では再現出来ない奇抜な味の食材は無いのかい?」
「悪いけど無いね。大抵『何かに似た味』のモノしか無いよ。私も魔界の食材を全て食べたわけじゃないけど、それは私にも分かるさ。そも、ここは君のママが創造った世界だよ? 君の想像の域は出ないさ」
「おのれママンめ、も少し味にパンチを効かせとけよ」
「気軽に言うなよ……」
かと言って、ゲロマズだったなら怒るけど。
「まぁ確実に言えるのは、プランさんはこの魔界を人間界ベースに作ったって事だ。だから、食材の味も似通ってる。違いがあるとするなら、大気中の『魔力濃度』くらいさ」
「魔力の有無だけで魔族が生まれるのかい? 異形な見た目にも?」
「ああ、魔法が使える人間もいるけどね。しかし、この事実だけで分かるだろ?」
「何が?」
「ちょっとした要素で生物は思わぬ進化を遂げる、って事をさ。もしプランさんが魔界の食べ物の味も変えてたら、即ち成分も変わって、私もこんな『人型』じゃなかったかもしれない」
「確かにねぇ。人型爬虫類カヌレだった可能性もあるわけかぁ」
「……人型なだけ、まだマシかもね」
「それでも、僕の愛は変わらなかったぜ? 君がウロコまみれで長い舌をチロチロさせてようと、こうして今日、デートしてたぜ?」
「……そもそも、私が君に近付くのをやめてたさ。リザードマンの容姿を否定するわけじゃないが、君の隣を歩けはしなかった」
「気にしぃだなぁ。かわいいじゃん、爬虫類」
「ペット的に可愛がられてもなぁ」
にしても、ママンは人間界をベースに魔界をつくった、か。
不思議だなぁ、少なくとも、魔界は誕生してから云百云千年の歴史があるんだろう?
なのに、ママンが人間界に来たのは、精々二、三十年前。
辻褄が合わない。
ああ、でも?
シフォンさんらが、魔界の時間の流れを弄ったとか言ってたし?
うーむ……
「卵が先か、鶏が先か」
「何の話? それより、そろそろ着くよ」
「着く?」
ピッ
あん? これは……ETCの音?
「なんだ、もう高速降りるの?」
「うん。目的地はすぐそこだよ」
「ドライブデート、もう終わるのかぁ。んっ(パクッ)……ふぅ、ごちそーさま」
「……ほんとにお土産食べ終えたよこの子」
「で、(アパートで食べる)今日の夕飯、何にしようか?」
「私はまださっきのお蕎麦でお腹空いてないんだけど……」
高速を下りて、それから数分もしない内に……
キキィ
車が止まった。
「んー? ここどこぉ? なんか気付いたら、従業員専用っぽい地味な駐車場に着いたけど?」
「従業員用か。あながち間違いじゃないよ(カチャン)」
と、シートベルトを外すカヌレ。
「ふぅん。あ、てかこの車、レンタカー屋さんに、返さなくていいの? てっきり、姉妹店かどこかに寄るものかと」
「後で城の者に返却を頼んでおくよ」
「お姫様してるなぁ。てか、城?」
「そう。『お城』。さ、降りて(ガチャリ)」
車から降りるカヌレに、僕も従う。
「(ガチャリ)んー? (キョロキョロ)あ、ほんとだ、城だ」
駐車場からは、城の裏側がのぞけた。
裏、と思ったのは、入り口(正門)が見当たらなかっただけの理由だが。
「ここが、北の魔王城? シフォンさんが王様してて、君ら姉妹の真の実家な?」
「実家というより別荘に近いかな、一泊もしたくは無いけど。母さんはあまり顔出さないから、言うほど王様してないよ」
「王からして適当な国だなぁ。して、ここは『テーマパーク』か何かかい?」
「いや? どうしてそう思った?」
「城にしては『俗っぽい空気』を感じるな、と」
城の周りってのはこんなに『ガヤガヤ』してるもんなのか?
比較対象が『直近だと』タルトちゃんとこの城しかないけど、あそこはもっとこう、空気がピシッと引き締まっていた。
「良い線いってるよ。テーマパークではないが、観光地化はしてる」
「一国の城が観光地化? 日本の武将の城みたいなニュアンスだろうけど、王ことシフォンさんは健在だろ? 不在の隙に国民に乗っ取られたか?」
「勿論、王(母さん)の意思だ。過去の……先代の恐怖の象徴としての王のイメージを変える為に、ね」
「王にはある程度の畏怖的なイメージは必要だと思うけどね」
「それはそう。だから実質、母さんは王の立場を捨ててるようなもんさ。まぁ政治は、優秀な大臣達がちゃんとやってるよ」
「それで今は回ってても、象徴たる王が居たり居なかったりはねぇ。いっそ、やる気ある人に王位を譲れば? 君ら姉妹はお姫様という肩書き(ブランド)を喪うけど」
「それでもいいんだけどね。肩書きが役に立ったと思ったのは今日くらいだし。と、いうか、王云々の話を出すつもりなら、君の母プランさんも王なのにフラフラしてるじゃないか」
「ああん? 今のママンはただの『園長』だぜ?」
「……まぁいいや。さ、ついて来て」
駐車場からカヌレが向かう先は、どうやらあそこ……城の内部に入れるであろう従業員用入り口らしき自動ドア。
正真正銘、ここが目的地らしいけれど、一体何が待ち受ける?
あ、因みに、車内に残した大量のお土産ゴミも、後で城の人が捨ててくれるんだって、助かるね。
ピッ ウィーン
カヌレがカードをかざすと、扉が開く。




