275 会長とマイクロビキニ部
闘技場でのバトルが終わったが、目立ち過ぎたようなので、質問攻めに合う前にその場から逃げる事に。
急遽、世界樹ちゃんに木製メチャ長滑り台を作って貰って、それで滑って脱出だ!
先にプロメさんとタルトちゃん(気絶中)とジージョさんには滑って貰って。
今はカヌレと……
「ようやく二人きり、だね? (はぁと)」
「今更そんな色気のある空気になれるか」
「んー、じゃあ『色気』じゃなく『楽し気』って方面に変えるか。今からこの滑り台を『水の流れるウォータースライダー』に変えて貰う事も可能だよ?」
「濡れるの分かってて服のまま滑られるか」
「勿論水着もすぐ用意出来るぜ? へい世界樹ちゃん(指パチンッ)」
シュルルル!
世界樹ちゃんは器用に枝触手を使い、自らの繊維を使って裁縫を始めて……
スッ
「センキューセッカ。三十秒で二人分は流石だね」
「特に思い入れの無い自身の世界とはいえ、神扱いされる存在になんて事をさせて……『世界樹協会』の信徒が見たら泡を吐いて倒れるね」
「言うて、僕からしたら『お姉ちゃん』……ドリーと認識変わらんし。さっ、着た着たっ」
「いや、着ないが」
「貴様ー! 世界樹ちゃんの仕事を愚弄するかー!」
「変なモノを作らされて同情してるよ。そも、ウォータースライダーとはいうが水が流れて無いし……あ、しまった」
指パチンッ
ジャバー!
「(地中から水分を吸い上げるなりして)流してくれたぜっ。さ、どうするっ?」
「はぁ…………着ないと無理矢理脱がされそうだね。というか、なんで二つも作らせたの。一丁前に、デザイン違いで選ばせてくれようと?」
「そりゃあ、君だけを辱める真似はしないって意思表示さ」
「少しは女物の水着きる事に抵抗感持ちなよ……こっちで」
「ほいよ」
「……青色とか紫とか、これ、どうやって染色したんだ」
「花の染料とかでしょ。それか、虫のコチニール的な?」
「まぁいいけど……てか、そっちは布面積無さすぎ。こっちも面積少ないけど……」
「マイクロビキニ部の部長としては外せんのや」
「そんな部は生徒会長として認可してないよ」
「ほらほら、兎に角座った座ったっ、滑り終わったら素直に帰るからよっ」
「言ったね? 今度こそ約束だよ?」
僕らはさっさと水着に着替えて……
スッ
脚を伸ばし、僕が前、カヌレが後ろになり、お互い重なるように座って……
シャー!
ウォータースライダーを滑り出す。
水の力もあって、スライドはすぐに物凄い速さに。
風を切り、髪を靡かせ。
余裕で時速は百キロを超てるだろう。
「そういえばさー!」
「なんか言ったー?」
「漫画のコ〇ンは一話でジェットコースターを使った殺人トリックだったねー。首が飛ぶやつー!」
「何故今その話をしたんだ!?」
急斜面からのスキーのような軽快な滑り。
それでも、終着点である数キロ先に辿り着くまでは五分ほど掛かって……
ジャッボーン!!!
勢いそのまま、水中に飛び込んだ。
「(ジャプッ)ぷはぁ! ……泉?」
水もカタチも綺麗な泉。
なんて都合の良い場所にあるんだ。
「おっ、来たね若! 私が降りたあと急にドリーが地面を掘り始めて(泉を)完成させたんだよ!」
「はぇー。まるで童話の金の斧銀の斧に出て来そうな雰囲気だね。使い捨ても勿体無いしこのまま『泉の女神様』も用意って観光スポットにせぇへん?」
「気軽に命を創造するなよ……君ら(ウカノと世界樹)の軽はずみな行動で容易にこの魔界では伝説なり宗教が生まれるんだぞ」
「しっかし二人とも! 来るまでなんか時間掛かったね! てかなんで水着!?」
「色々あってね。滑り台がウォータースライダーになったから水着になったんだ」
「因果が逆だろ……」
「道理で途中から水が流れて来たなと。お陰で(滑り台の摩擦で)お尻が焦げずに済みましたが」
下半身がビショビショなジージョさん。
一方、一緒に滑っていたタルトちゃん(未だ気絶中)が一切濡れてないのを見るに、ジージョさんの忠義の高さが窺える。
「ほら、上がるよ」
「うぃー」
先に上がったカヌレに手を引かれ、バシャバシャと泉から出る。
「むっ。アレだけ激しい泉ダイブしたのに、カヌレったらお約束のポロリしてないじゃーん」
「してたとしてもすぐ直してるよ。君の方こそ上はどうした」
「え? きゃ! エッチ!」
「今更(腕で)隠すな男の癖に」
「え。男性なんですか?」
「女だなんて一言も言ってないぜジージョさんっ」
「なら教えてやれば良いだろう……ノリノリで女子制服まで着て」
そんなこんなで、(〇〇話冒頭の)学園都市外まで移動した僕達であった。
「にしても、(通り過ぎた)学園都市はなんだかザワザワ騒然としてたね?」
「そりゃあここからでも闘技場から生える世界樹は見えたろうからね!」
「サプライズ成功だねっ」
「サプライズ過ぎて気絶した人も居そうだが……」
そんな世界樹ちゃんだが、あの後泉で別れ、元の場所に帰って貰った。
ドリーと繋が(記憶共有)ってるんなら、帰った後も『思い出話』出来るだろうし。
「失礼」
ヒュー…… パンッ
唐突な(空からの)破裂音にビクッとなる僕。
花火? 空砲?
「では、私達はそろそろ」
ペコリ、タルトちゃんを背負いつつ頭を下げるジージョさん。
今の破裂音の元凶な彼女だけど、特に説明はしてくれないようだ。
ただ驚かせたかったってだけの茶目っ気って事にしとこう。




