266 ラウンド10
なんやかんやで魔界に召喚され、
なんやかんやで学園の闘技場でツヨツヨな若手ホープ戦う事となり、
なんやかんやで今は赤いドレスを着た知り合いのおばさん(プロメ)とリングの上で再会した僕。
このおばさんは自身を『精霊』と名乗るヤバい奴だ。
それで……
……ふと、僕は今更ながらに思い出す。
「(ラウンド6にて)観客席を炎魔法で吹っ飛ばしちゃったけど、そこの席に座ってた人達は?」
「えっ? そりゃあ『蒸発』でしょっ。私の魔法は焼き料理にゃ向かないよ!」
「ひ……人殺し!」
「消えたのは人じゃなくて魔族だよっ?」
「ま……魔族殺し! ほぼ人と同じ見た目の生物を躊躇なく殺れるなんて! もうプロメさんは汚れてしまってるんだ!」
「観客を守れない防壁魔法が悪いでしょ!」
「それはそう」
「というか! それも全ては若の魔法なんだから若が魔族殺しなわけじゃん!」
「なっ、なに!?」
「私の魔法は若の魔法! なんなら山を吹き飛ばした時もっ、そこにいた大量の罪なき魔族や魔獣が死んでるよ! 都合が悪けりゃ責任転嫁すな!」
「お、俺は悪くねぇ! みんなプロメって奴が悪いんだ!」
「なんてね! 私もそこまで鬼じゃないよ! ほらっ、『見てみて』!」
「一体何を……」
プロメさんが指差す方、そちらに視線を向けると……
『……おおっと? 待って下さい? 皆さん! 吹き飛んだ観客席の方を見て下さい!!』
ううーん…… ここは…… 試合を見てたはずじゃ……?
「あれ? めっちゃ人、いや、魔族がいる?」
「ふふん! あの人達に見覚えがない? 若!」
「いや、ないけど」
「だろうね! 若が興味ないモブの顔覚えてるわけないし!」
『あ、あそこに倒れている多くの者達は! (吹き飛ばされた)観客席に座っていた学生達です! 傷一つありません! 消滅したと思われたのは錯覚だったのでしょうか!?』
「なぁんだ、死んだ魔族は居なかったんや」
「いやっ、死んでたよっ、確実に!」
「あーん? どーゆーこと?」
「転生の炎さ! 消し飛ばしたけど『生き返らせた』んだっ」
「なーんか既視感あるなぁ。あっ、子ドラゴンちゃんの時のやつかっ。つまりは火の鳥チックなアレだねっ」
「そんな畜◯鳥じゃなくフェニックスと呼んで!」
「てか復活って、服ごと? 肉体だけならみんな全裸の筈だけど」
「リヴァイヴァの対象は無機物もイケるからねっ。ついでにっ、吹き飛ばした山付近にいた子達も今頃復活してるよ!」
「プロメさんは甘ちゃんだなぁ。魔族に情でも湧いたかい?」
「さっきまで魔族殺しと糾弾してた癖にっ。てかっ、私の放つ魔法は『若の意思』って忘れたのっ? 若が『消滅しないように』って願ったからこの結果になったんだよ! 甘ちゃんは若さっ」
「そ、そんなわけないんだからね!」
『なっ、なんということでしょう! 遂には死者まで蘇りました! まさに規格外! いや! 最早っ、神と呼んでも差し支えない存在ダァ!』
「神だとか『皮肉』か! よく言うよあのクソ野郎! 自分だって『出来る』癖に!」
「うーん、魔法撃つたびにおばさん達がいちいち来るのはうざいけど、実質、僕は全能な力を手にしたわけなんだなぁ」
「ぐっ! プッ、プラン様は君をもう分別のある子供だと信頼してるからね! 変な事しないよね!?」
「ママンからの信頼が篤いなぁ。つまり、そうするとママンが嫌がるのかぁ(ニコッ)」
「ダメみたいですプラン様!」
「貴様ら! 誰の前で! いつまで巫山戯た遣り取りをするつもりだ!!」
「ん?」
不意に、割り込んでくる声。
完全に意識の外からの声。
観客でも飛び込んで来たのか? と視線をやると、
「ああ、まだいたんだ」
(最初の炎魔法を使った後)リングの上で尻餅ついてたまでは認識してたけど。
今は偉そうに仁王立ちしている王子に、僕は素直な感想を呟く。
『本当はもっと強い』んだろうに、いつまでも真の実力を見せてくれない彼の事はもういいや。
すると、僕の呟きに、王子はピキリと青筋を立てた。
煽るつもりは無かったんだが? まぁ、もう引き返せないからこのイキリ系キャラで行こう。
「試合は終わったっしょ。帰っていいよ(手ヒラヒラ)」
「終わった……だと?」
「僕の勝ち。何で負けたか明日まで考えといて下さい」
「懐かしいネタ! (プロメ)」
「納得行かないんなら別に続けてもいいけどさぁ、それならさっさと終わらせるし、あと、『君は生き返さない』よ?」
煽る煽る。
これでブチ切れて、真の実力やらまだ見せてない魔法でも拝めたら儲けもんなんだが。
「どこまでも俺の侮辱を……! そもそも! 貴様如きが召喚魔法などありえない! 戯言だ!」
あー、そう来たか。
「そこには同意だね。召喚魔法なんて『地味な魔法』は僕の性に合わないぜ」
「えーっ、カッコいいじゃん召喚魔法っ。大きい怪物をドーンって喚す感じ!」
「出せるのが怪物ならねっ。僕はおばさん達しか喚べねぇんだぞっ」
「贅沢な悩みだよ!」
「やっぱ魔法使いは自分で戦ってこそだよねぇ。ソロでも強い魔法剣士タイプなのが理想さっ」
「若の場合魔法なんて無くても(魔力強化だけで)強いんだからさぁ!」
「やーやーなのっ」
「黙れ! 召喚魔法などありえぬ魔力など言ったろう! 第一! 今の貴様からは一切の『魔力を感じない』ではないか!」
「そうなの? プロメさん」
「私は感じるよ! まぁ若はいま髪色の変化で分かるように『精霊状態』だからね! 解放された魔力は莫大! まぁ莫大過ぎてオーバーフローした結果『この大陸の連中なら』魔力感じられないかもね!」
一周回って弱そうに見られるなんて酷い。




