265 ラウンド9
↑↓
「ウー君の……私達『創造主』の使命は、『生み出す事』です」
「『誰に聞かせて』るんですっ? 知ってますよプラン様っ?」
「まぁ仕事をしつつ流し聞いて下さいプロメ。丁度ウー君が『気付いてしまった』ので、おさらいです」
「命を生み、力を分け与え、役目を終わらせる」
「それが、私達の持つ『自由』な力」
「娘のセレスにその力は引き継がれず『別の力』が宿りましたが、母としてはその方が安心する面もありますね」
「この使命は、セレスのような『常識的』な子が抱えるには重荷。なので、お兄ちゃんのような『身勝手』な子に継がれて良かった」
「使命……とは言いましたが、私自身、こちらの世界に来てからはもう何年も、そんな縛られた生き方は辞めていましたね」
「プロメ。貴方も、元は私の一端」
「燃やし、溶かし、時には『治癒や蘇生』させる力。それも、元は森羅万象を司る私の力です」
「つまり、ウー君も『力に気付いてしまえば』神の『ごとき』振る舞いが出来てしまいます」
「現に、いま魔界にいる『プロメとは別の我が一部』からの情報を見るに、既にウー君は、無意識に『生命を蘇生』させていたようで」
「しかも、赤いドラゴン……あの子がドラゴンを助けるなど『因果』とはかくも面白いものです」
「ウー君は、プロメの力を使い、ドラゴンを『生き返らせた』」
「実際は、『生き返らせたい』と無意識に願っただけでしょう」
「普段であれば、例えそのように心で望んでも『魔法を使う』という発想など無かったはず。それこそ、普段から持ち歩いている『あの子にとって都合の良い植物』で、問題を解決していた」
「しかし、この時は環境が違いました。手元には『植物』は無く、且つ、『魔法が存在する魔界』という世界の条件が、ウー君の思考に変化をもたらした」
「ウー君は一瞬、考えたのでしょう。『ドラゴンを蘇生させられる魔法でもあれば』、と」
「そして、無意識に、プロメの『蘇生魔法』を使ったのです」
「別にっ、蘇生魔法は私の特権じゃあ無いっすけどもねぇっ。『他の精霊』もみんな出来るじゃあないっすかっ。特にっ、最近会ったっていう【セポネ】の方が『生物の生き死に』というイメージで連想しやすそうっすけどっ」
「まぁ、それを言うのであれば、貴方の方も前日に会ってるらしいでは無いですか。それだけの差だと思いますよ」
「ですかねぇっ」
「まぁ、実際あの子は普段から『魔法を使っている』んですよね」
「普段から持ち歩いている『植物』……基本的には【木の実】などですが、何かトラブルが起これば、その実から『異形の植物』を発生させて対処しているようで」
「時には『爆発から護る植物』、時には『食べた者の能力を飛躍的に上げる木の実』、時には『ただのオヤツ』として」
「基本的には、『常に身近にいる樹』こと【ドリー】から毎日供給される、種や木の実」
「本人はそれを『植物園で生まれたドリーが作る特別な植物の実やら種』と思っているようですが」
「確かに、そのような特別な種実も作れるドリーですが」
「しかし基本、ドリーはクルミのようなただの種実しか、ウー君の前では落としません」
「それは、つまり。ウー君がただの種実を『そのようなモノにしている』という事」
「全ては無意識。『緑』に多く触れて来た彼だからこそでしょう。あの子は生まれた時から、植物とは『そういう(万能な)ものだ』という環境で育って来ましたから」
「出来ればそのままでいて欲しかったっすけどっ、結局『魔法』の存在を知ってしまいましたよ!」
「ええ、そうですね。そもそも、私達は魔法が基礎の『魔法生物』。今までよく誤魔化せたと思いますよ」
「まずいっすよねっ? こうならないよう昔『忘れさせた』のにっ。どうするんすかっ!?」
「心配は不用と思いますよ」
「親バカっすねぇ!」
「あの子も、無邪気さはそのままですがもう分別のきかない子供でもありません。きっと……その力を上手く使ってくれます」
↑↓
『世界の終わり! まるで世界の終わりのような光景です! 突然やって来た敵の軍! しかしそれを! あの精霊は死の雨を持って一蹴しました! このままあの精霊は! この世界をも煉獄の世界へと変えるつもりなのでしょうか!』
「ぎゃーっ! ふざけんなツルギィ! またプロメが(魔法を)撃ったみたいな扱いにしやがってぇっ」
僕は叫ぶ。
大人達の理不尽さに叫ぶ。
「ははっ! 実際私が撃ってるからね! てか【ヘルシャワー】!? ネーミングセンスが小学生から変わらないね!」
「うるせぇ! おばさんにナウなヤングのセンスは分からんだろっ」
「ヤング過ぎるよっ、そのセンスはコロコロ(小学生)レベルだっ」
「因みに、最初に山を吹き飛ばしたあの炎魔法の名前は『黒点の銃弾』な」
「はいはいヤングヤング! てかあんなもんは魔法ですらないよ! ただ太陽の飛沫……プロメレアさ!」
「汗飛ばしてたのかよバッチいな!」
「汗言うな!」
全く。
てか多汗症のこのおばさんは、いつまでここにいるんだか。




