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258 ラウンド2

遂にぶつかった、バカ王子と私が異世界から召喚んだ『彼女』。


周りの客(学生)らは、最初の一撃……バカ王子の高速炎魔法で『いつものように』即試合終了、そう思っていただろうが……


彼女は『不可視の何か』でその魔法を弾いて見せた。


私と、隣に居るジージョは……特に驚かない。

私達は手合わせをしたから『からくり』を知っているから。



ネタさえ知ってしまえばただの『子供騙し』なのだが……

まさか、本番でも実行するとは。


一瞬でも『ミス』すれば問答無用で『死』という場面だというのに。

物凄い胆力か、或いは、ただの怖いもの知らずか。

確実なのは、未だ、彼女に決闘という自覚は無く、遊び感覚だということ。


「ほぅ……」


彼女の思わぬ回避に、感心したようにほくそ笑むバカ王子。

感心もするだろう。

学園でのアイツとの決闘は、前述の通り、大半が今の一撃で終わるから。



少し前。

バカ王子が学園で名を上げる前までは、生意気な学生として、よく決闘を叩き付けられていた。

が。

結局、誰も勝てる(鼻を折る)者がおらず……

気付けば周りも恐れて、挑もうなどという奴も居なくなっていた。



だが、そんなバカ王子の前に唐突に現れた彼女。

奴は、彼女の魔法回避のからくりに気付けたのだろうか。


「面白い。もう少し踊って見せろ」


ピピピッ


バカ王子は、今度は連続で指を弾き、多くのスピッドファイアを一度に放つ。


一つでも喰らえば致命傷な圧縮魔法。


しかし……


「それはもういいよ」


ヒュ


パパパンッッッ!!!


先程と同じく、彼女は微動だにせず、魔法が身体に当たる直前に『何か』で弾く。


『不可視の何か』が、彼女を守護まもっていた。


ボボンッッ!!


と、弾いた魔法の一部が周囲の魔法障壁で爆ぜる。


彼女が助かったのは、偶然やマグレではないという証明。


更には……


ヒュ!


魔法の一部を、バカ王子に向けて弾き返していた。


魔法は、自らが浴びてもダメージを負うものも多い。


自らの放ったスピッドファイアで、あのバカ王子が倒れてくれれば抱腹絶倒ものだが……


「ふんっ」


パシッ ボンッ!!


バカ王子は火の玉を片手で掴んで握り、手の中で爆発させた。


その手が、ダメージを負った様子はない。



『おお! ニクい意趣返しだぁ! Uも負けてはいません! それより! 先程からUはどのように魔法を防御しているのでしょうか!?』



「そうそう。ツルギさ……実況の人が言ってるみたいに、王子君はカラクリが分かったかな?


「ふん、別にそんなものはどうでもいい事だ。俺に謎解きでもさせたいのか?」

「そうだね。まぁ、君が分かった所で……何も変わらないけどねっ」


バッッ!


彼女は地面を蹴り、跳躍した。


……高い。


木を飛び越えるほどの高さまで跳躍。


物凄い脚力だと『周りはそう思った』だろう。


だが、本質はそこでは無い。


フワ フワ


彼女は、本来あるべき落下を無視し、『浮いた』。



『なんとU! 宙に浮いています! 浮遊魔法は高度な技術! それを涼しい顔で!』



浮遊は『本来』、翼を持つ種族や風の精霊と契約した者だけが扱える技術だ。

一方、彼女はそういった種族でもないし、精霊と契約してもいない。


これにもまた、カラクリがあるのだが……


「『行くよー』。んー……ファイヤ!」


彼女は指を『銃の形』にし、銃身(人差し指)をバカ王子に合わせて……


ボッ!


『火の球』を放った。


その大きさは、バカ王子のスピッドファイアのような小型のそれではなく、魔族(や人間)の頭と同サイズの大きめな火球。


一般的なファイアーボールの規模ではあるが……その込められた魔力は、バカ王子のスピッドファイアを凌ぐソレで。


ドォン!!!


火球はバカ王子に直撃し、リングを揺らした。


振動が、離れたこちらの席にまで伝わってくる。



『強ッ烈ッ! 炎使いであるモレク王子相手に炎の魔法とは! UもUでニクい意趣返しだぁ! おっと!? 更にぃ!?』



ボボボッッッ!!!


更に火球を、彼女は容赦無く何発も放つ。


最初の火球の直撃による黒煙の中に、追加で投じられる火球。


ドドドンッッッ!!!


と、更に会場に振動が広がり、最早地震に近い。


バカ王子の姿は……未だ確認出来ない。

このまま終わりか?


ブォン!



『おおっとぉ!? 急にリングに風が巻き起こり! 黒煙が晴れたぞぉ!』



風……それはただの風ではない。


『熱風』だ。


リングを防壁魔法が守っているとはいえ、漏れ出た熱はこちらまで及んで来る。


暑い暑いと、観客の学園生らは噴き出た汗を拭っていた。


この場ですらこの熱量、一体リングの中はどれくらいの暑さで……


「ククク、面白い」


黒煙が晴れ、その場に居たのは……バカ王子だ。


チッ、確かに、あの火球で殺れるヤツなら苦労はしなかったが。


火球でのダメージは、その見た目からは見受けられない。

しかし。

そのバカ王子の見た目は、火球を当てられる前とは異なっていた。



『モレク王子! 無傷です! そしてぇ!? 見て下さい皆さん! 王子が脚に炎を纏っています!』



加えて。



『炎を纏っているだけではありません! 浮いています! モレク王子もUと同じように地面から浮いています!!』



この迷惑な気温の上昇は、アレが原因だ。


『上昇気流』。


纏った炎を用いた応用技で、宙に浮いている。


空を飛ぶ方法は、『種族特性』や『精霊との契約』とさっき説明したが、例外もあのようにいくつかある。

勿論、自由に操作出来るかは本人の力量次第だが……あのバカ王子の事だ、人の見ている前で間抜けな姿は見せない程度にはこなれているだろう。


リング上で浮かぶ両者。


前述の『一般的』な浮遊術を使わずに両者が宙を舞って対峙するこんな光景は、決闘の歴史の中でもそう見られるものではない。

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