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257 ラウンド1

戦いが始まる。


彼女と、あのバカ王子との決闘が。


彼女は先にリングへと登場したが、周囲の反応は微妙だ。

謎の生徒、謎の決闘、謎の緊張感。

この場に、まともな真実など一つもない。



ワーワー! キャーキャー!


と、そんな時だ。

周囲の黄色い声は……アイツが来た不快な合図。



『おーっと! 来ました! もう一人の決闘者! モレク王子の入場です!』



大層人気者らしいバカ王子。

そんなにお近付きになりたいんなら、喜んで婚約者だのの権利を譲るのに。



『王子の情報は学園生であれば説明など不要でしょう! しかし! ここはもう一人の決闘者Uユーの為に再確認しましょう! モレク王子の功績を!』



ある日、解読不能と言われた古代魔法を解明し。

ある日、異界から来た戦士や、学園を襲撃しに来た魔界征服を企む組織、魔王討伐を企む勇者一行らをも退け。


確かに、過去の功績は称されるものだろう。

その点に関しては感心してやる。


だが、それはそれとして、性格が終わっているんで個人的な好意など一切持てない男。



『おおっとぉ!? ステージの上でUがモレク王子を指差しているぅ! コレは一体ぃ!?』



彼女は、ステージに上がって来たバカ王子にニコリと微笑み掛けて……スッと、親指を下に向けた。



「思う所は無かったけど気が変わったわ。モテモテ野郎は潰す」



『うおおおなんて言い掛かりだ! 早くもバチバチだぁー!』



無駄に好戦的過ぎる彼女。

自己に対する自信も強いし、もはや狂戦士バーサーカーだ。


因みにだが、ステージ上の彼女の声はよく聞こえている。

私自身の耳が良い、というのもあるが、全ては、ステージ自体に掛けられている『増音魔法ハウリング』の効果だ。

ようはスピーカーやマイクと同じ。

全ては、他の観客(普通の生徒)にもステージでの『両者の遣り取り』を分からせる為の措置。


「成る程な。貴様、人間界の猿か。よほど文化が遅れている世界なのだろう。俺に対しての不遜も納得の頭の悪さだ」


「僕がもし魔界出身でもいちいち野郎の顔なんて覚えないぜ。可愛い女の子は別だけどな」

「人間界の者は魔法も知らん奴だらけと聞く……だが、まれに強者が生まれるとも聞く。出来れば、貴様がそうであってくれよ? すぐには終わらず、俺を愉しませてくれ」

「僕は早く人間界(元の場所)に帰りたいっつったろ。野郎とイチャイチャする趣味は無いぜ。ま、でも最低限『こっちのルール』には従ってやんよ」


カーン カーン カーン


この音は……ゴング?

音の出所は、実況席から。

また、変なものを持ち込んで……。



『さぁ! お互い戦いの準備も万端のようです! これ以上の引き伸ばしは不要! 決闘を開始はじめましょう! 勝敗は、片方のまいったの声! 若しくは! 明らかな戦闘不能状態であればこちらで終了の合図を取ります! それではああああ…………スタートゥ!!!』



カーン!!!



「おさらいだ」


ピッ


親指で弾いて飛ばされた(クルミ大まで濃縮した火の玉を高速で放つ魔法)『スピッドファイア』。

雑魚なら、何が起こったか分からぬままに一瞬で焼き尽くされる。


「よろ」


パァン!


しかし、彼女はその魔法を弾いた。


ボンッッッ!!!


弾かれた魔法は、リングを取り囲む透明な『障壁魔法ガードシールド』に当たり、爆弾のように爆発した。



『おお! Uの素晴らしい動き! 王子の得意魔法を防いだぞぉ!!』



シーン……


実況のテンションの高さとは裏腹に。

観客達は、初めは呆気に取られたようにポカンとリングを眺めていたが……


ざわざわ ざわざわ


数秒後、騒つき始めた。


「何が起きたの……?」「あのUとかいう奴、『何かした』か?」「一切『動いてなかった』よな……?」


そう。

周囲には『そう見えた』ろう。


魔法を弾くには、例えば身体の一部や全身を魔力で包み、タイミング良く払い除ける動作が必要だ。

ようは、飛んで来た小石を払うような動作。


しかし、彼女は『全く動いていない』。

身体はおろか、手足さえも。

動かしたのは『口のみ』。


例えばそういった『防御魔法シールド』は存在する。

魔法を反射する『魔法障壁リフレクター』という魔法。

しかし、それならばそれで、この学園の生徒ならば魔力探知サーチで勘付くだろう。

だが、生徒らのリアクションを見るに、そういう類いの防御魔法は使っていないというのが分かる。


結局、観客は未だ解明わかっていないのだ。

身体も魔法も使わずに、彼女が攻撃を防いだ方法が。


私と、隣に居るジージョは……特に驚かない。

私達は手合わせをしたから『からくり』を知っているから。

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