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256 会長(不在)と筒抜け

『みなさんこんにちは! 決闘管理委員会のツルギです! みなさんも驚愕したでしょう! 突然のビッグイベント! 決闘するのはあの灼熱王子! そしてぇ! 急に現れた謎の生徒『ユー』だー!』



ドワアッー!

会場はいきなりの最高潮だ。

こりゃー良い試合をみんなに見せなきゃだな。


それはそれとして……


僕は、そこそこ距離の離れてる実況席に目を向ける。

マイクを握って実況している相手に、


『なにやってんの? 【つるぎ】さん』


『なんか面白そうな事してるから、実況させて貰うぜっ』

『相変わらずだねぇ。てかなんで『女子の制服』?』

『『ウーちゃん』も着てるだろ?』

『そっかー。てか、謎の生徒Uって?』

『勿論ウカノのUだせ。プライバシー保護は大事だろ?』

『せやね』


『彼』は、昔からの僕の知り合いだ。

口パクで会話が出来るくらい仲良しな相手。

相変わらず(安心と信頼)の神出鬼没な人だ。


この学園に、本当に『決闘管理委員会』なるものが存在るのかは知らないが、あの人であれば『存在った』事に『改変』出来るだろう。

そんなところも、相変わらず規格外な人。


まぁ、いいか。

知り合いが一人でもいた方が心に余裕が出来る。

かと言って、僕が絶体絶命のピンチになろうが、あの人は『助力』はしてこないだろう。


「さっきから何を口パクしてるの?」


そう訊ねるのはタルトちゃん。

その隣には侍女のジージョさん。


「ちょっと(知り合いが居て)ね。じゃ、そろそろKBF(決戦のバトルフィールド)に行くぜっ」


「緊張もなく、随分と余裕そうね……逃げようとは思わないの?」

「なんでや。君達にアレだけ丁寧に魔法の手解きを受けたんだ。逃げる理由なんてあるかい?」

「貴方が全く動けないわけでないのは、さっきの手合わせで解ったけど……死んでも、私達を理由にしないでね」

「御武運を(ジージョさん)」

「終わった後の祝勝会のごちそう、用意しててくれよなっ」


ヒラヒラと手を振りながら、僕は舞台リングへと上った。



↑↓



彼女がリングへと上がった。

私と侍女のジージョは、リング全体を見渡せる二回の特別席へと移動する。


私が魔界へと呼び寄せた、人間界の者。


『彼女』……


そういえば、名前もまだ訊いてなかったな。

もしここで死んだら、墓に名も刻めない。


まぁ……あのバカ王子相手でも『すぐには死なない』のは確定している。


あとは、どうやってバカ王子に負けを認めさせるか、だ。

ようは、『どのように攻めるか』という話

それが一番の課題なんだが……彼女と手合わせした私達からしても、そのビジョンは一切見えて来ない。


何故なら、手合わせ中、彼女は『一切攻撃して来なかった』から。


だから、対策の立てようがなかった。

彼女は…… 一体どのような結末を考えている……?



『さあー現れました! ステージの方には決闘者の一人! ここでは仮に名前をユーとしておきます! 知らない方もいらっしゃるでしょうしっ、まずはおさらいしましょう! Uが今回この決闘に至ったいきさつを!』



実況の決闘管理委員会の『女生徒』が、『彼女』がこの世界に来た経緯を解説し出す。


人間界から召喚び出した事。

私の選んだ婚約者だという事。

最初はなっからバカ王子とぶつける為の生贄である事。


「誰が生贄じゃーい」と両手を上げて怒る彼女を、「まーまー」と宥める委員会の実況女。


……待って。

自然過ぎてスルーしそうになったが、何故、『そこまで知っている』?


私は、ジージョに視線を向ける。

私の視線の意図を瞬時に理解……いや、彼女も同じ事を疑問に思ったのだろう。

ジージョは小さく首を振る。

彼女にも、『情報を漏らした裏切りユダ』には心当たりがないらしい。


経緯を知る者は、城の者以外居ない……はず。

順当に考えれば、情報提供者は城の者……若しくは、あの委員会女が完璧な警備を掻い潜って城に忍び込んでいたか……どれもしっくり来ないが。


ここまで運んでしまえば、今となれば、別に、漏れた所で困る情報では無い。

逆に、こちらから開示しても良かった情報。


しかし、問題なのは、そんな情報でも、腐っても『魔王城』の内部事情……

筒抜けなのは、周囲の信用を損ねる。

後で、あの委員会女とはキッチリ尋問おはなししなくては。



「あのタルト様が人間界から……?」「どこぞの人間と?」「相手になるのか?」


ざわざわ…… ザワザワ……

委員会女の言葉に、学園生らはざわつく。

当然の反応だ。


よほど優れた戦士でも無い限り、『魔族に勝てる人間』など、所詮ファンタジー(創作)の中での話。


『クールな魔王令嬢と憧れる生徒は数知れず! 加えてその実力も折り紙付き! そんな彼女に召喚ばれたあの人間はまさに玉の輿! 羨望と嫉妬の目が注がれます!』


……本当に、なんなんだあの委員会の女は。

というか、あんな鬱陶しい生徒、学園生の顔を殆ど覚えてない私ですら一度見たら覚えるであろうに……

最近学園に編入したか、委員会に入ったかした、そんな女子か?

本当、癪に触るが、今はあんなのでストレスを溜めたくない。

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