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251 会長(不在)とかわい子ちゃん

カヌレと健全な一泊二日の温泉旅館デートを楽しんでいたわけだが……

僕は外で、怪しげな赤い封筒を拾ってしまう。


直後、別世界にワープさせられる僕。

なんと、その世界は【魔界】で。

その場所は、【魔王城】だった。


そこでは、魔王の娘こと竜族の姫タルトちゃんが僕を待ち構えていた。

彼女は僕を婚約者にして、周りから決められた婚約者であるイケ好かない王子との婚約を解消したいらしい。

彼女の考える、その婚約解消の手段とは……強さで名を上げた王子を、僕がコテンパンに倒す事。



「グオッ!!」


そんなわけで、王子とバトる為、今からタルトちゃんの通う魔界の学園へと向かう事に。

魔王城のデカイ門から外に出ると、可愛い子がお出迎え。


「おっ? このデカい恐竜は……?」


「貴方、竜車りゅうしゃを見るのは初めて?」

「ファンタジーアニメとかでは見た事あるような無いような。つまり、これは馬車の竜バージョンみたいなもんね。おーヨシヨシ(顔なでなで)」

「グオ……」

「そのは滅多に人に懐かないのに……やっぱり、変わってるわね、貴方」

「怯えているようにも見えますが」


んー、スンスン。

『この世界の』ドラゴンの香りは独特だな。

肌はゴツゴツしてて、トカゲ系とかワニ系に近いけど、爬虫類な香りとも違う、野性味溢れる香り。


「ウロコ一枚貰ってもええかい? 記念って事で」


「グォン……」

「困ってるからやめなさい。というか、まさか竜車にこんなに食いつかれるとは思わなかったわよ」

「働く車が嫌いな(男の)子はおらんよ。(ポロリ)ぅん? あっ、ウロコ落としてくれたの? ありがとっ、ヨーシヨシヨシ(ナデナデナデナデ)」

「早く乗りなさいっ、変なとこで時間使わないっ」

「全く、僕が人外にモテモテな体質なばかりに……あ、でも君には惚れられたら困るから惚れないでくれよ?」

「調子に乗るなっ」


さて、と。

竜車に乗り込む前に、改めて周囲を見渡す。


この魔王城のそびえる土地は、物理的に高い場所にあるようで、視線の先(眼下)には城下町っぽいものが覗ける。


クルリ、今出て来た建物を振り返り、見上げる。


そこには、やはりというか巨大なお城。

古城、とかいうやつ?

醸し出している不気味な雰囲気は、いかにもな魔王城である。


「うーむ。もうここに戻って来られるかも不確定だしなぁ。(ラストダンジョン特有の良いアイテムが出る)宝物庫漁っておきたかったなぁ」


「よくも堂々とそんな独り言が漏らせるわね」

「結婚の暁には全て貴方のモノになりますよ」

「アンタ(ジージョ)も何言ってんのよ! 宝物庫は国の財源みたいなもんでしょっ」

「いや、お金とかはいいから。なんか伝説っぽい剣と不思議な杖だけでいいから」

「お金より価値のあるモノを要求するなっ」


そーいえば。


「魔王城なのに、魔王様に挨拶してねぇなぁ。失礼じゃない?」


「貴方の態度の方が失礼だから会わせられないわよ……」

「まぁ魔王からは(ラストバトルのお決まりで)経験値貰えないからなぁ」

「なに倒す事を想定してるのよ。別に、会わなくても何も問題は無いわ。貴方はバカ王子との決闘だけを考えなさい」

「『最近の若者は挨拶もしに来ないなんてなっとらんっ』とか後で理不尽に怒られそうだよ、ねー?」

「グォ?」

「竜に同意を求めてどうすんのよっ。ほらっ、さっさと出発っ」


竜車の籠? 荷台? 乗車部分? 的なのに乗り込み、窓際の席をゲット。


僕の隣にはジージョさんが座り、出入り口側にはタルトちゃんが。

あれ、こういうのって上座云々でジージョさんが出入り口側とかじゃ無い?

まぁ、魔界特有のマナーがあるんだろう。

僕は大して気にせず、窓の外を眺める。


ふーむ……


世界自体が暗くて分かりづらいが、さっきタルトちゃんに聞いた話だと、どうやら、今は昼前の時間帯らしい。


ガタゴト ガタゴト

竜車が学園に向けて走り出した。


「んー、ねぇ。道中に喫茶店とか無い? 折角だから魔界グルメを味わいたいんだけど?」


「喫茶店? 学園に行けば有るわよ。というか、よく決闘前にモノを食べようと思うわね」

「スイーツならイケるっしょ。流石にガッツリしたもんは決闘後が良いけど」

「いや、その感覚は知らないけど……本当、緊張感が無いわね。食事が出来る健康状態で帰って来られたなら、王族御用達の高級店にでも案内してやるわよ」

「焼肉……の文化は流石に無いか。ならステーキが食いたいね、ステーキ。因みに、僕は生き物を愛でるのが好きだけど、別に、その子を食べる事に関しちゃあ抵抗感は無い派だからね?」


「(外から)グオッ!?」


「……ドラゴンの肉を食べる場所になんて連れて行かないからね。そもそも、そんなお店は無いし」

「竜の肉は筋肉質なので、肉も硬く味も良くないという話です。話のタネになるほどの面白みはありませんよ」

「それならそれ(不味いなら不味い)で試してみたくもあるけど、今回は諦めるかぁ。竜肉じゃなくとも、この世界には他にも多くの魔物が居るからなぁ(ジュルリ)」

「本当、(魔物の王の娘である)私を前にしても配慮する気がないわね……」


ん? 待て? 今が昼前?

て事は、スムーズに(決闘の)仕事を終えても、落ち着けるのは昼過ぎになるか……


今更ながら、僕の居た人間界とこの魔界、時間の流れは一緒なのかな?


ならカヌレ、今頃焦ってるかなぁ?


魔界出身の彼女だ、招待状ラブレターの存在を知っているなら、僕が今こっち(魔界)にいるのも分かっているだろう。


思えばなんか、赤い封筒を見た瞬間から警戒してる感じだったし……

案外、ここまで迎えに来てくれるかもね。


「はぁ……冥婚だと思ったら、魔界婚か。死者が相手じゃないだけ、心は痛まないかな」


「なんの話よ」

「こっちの話」

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