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250 会長(不在)と気になる樹

カヌレと健全な一泊二日の温泉旅館デートを楽しんでいたわけだが……

僕は外で、怪しげな赤い封筒を拾ってしまう。

直後、変な場所にワープさせられる僕。

なんと、その世界は【魔界】で。

その場所は、【魔王城】だった。


そこでは、魔王の娘こと竜族の姫タルトちゃんが僕を待ち構えていた。

彼女は僕を婚約者にして、周りから決められた婚約者であるイケ好かない王子との婚約を解消したいらしい。

彼女の考える、その婚約解消の手段とは……強さで名を上げた王子を、僕がコテンパンに倒す事。



「(ニッ)考えてもみて? 調子に乗ってる王子様が、私の連れて来た『婚約者』に負けたら、滑稽だと思わない?」


「良い性格してるなぁ。負けたくらいで王子が諦めたらいいけど」

「だからこそ、戦いは『みんなが見てる場』でやるの。『学園』の『闘技場』を使うのよっ」


ガタンッと立ち上がったタルトちゃんが、グッと拳を握る。

僕はそれを見て(アホっぽいなぁと)ほっこりした気持ちになりつつ、


「ふむ。実際、この計画上手くいきそうなの? ジージョさん」


「順調にコトが進めば或いは。ですが……生半可な実力では、あの王子に近付く事すら出来でしょう」

「んー、同世代にプリンス以上の実力の子は居なかったのかい? 居るんなら、タルトちゃんが色仕掛けで誘惑して、王子の相手をさせてさ」

「居るとは思えないわ。例え居たとしても、今更名乗り出るとも思えない」


「で、結局、僕が頑張る、ってわけか」


僕は手にあった赤い封筒をヒラヒラ揺らす。


「しかし、魔界以外の場所からお婿さんを見つけようだなんて、思い切った作戦だね。結局、来たのは『僕みたいな』一般人だ」


「我々も、ただ無策でその『招待状』を送ったわけではございません。その招待状は『ヒトを選ぶ』のです」

「面食いって事かい?」


道理で、僕に触れられて封筒が真っ赤になってるな、と。


「条件はただ一つ。『王子の魔力を超える実力ちからを持つ者の所に行け』、です」


「実に分かりやすい。で、僕のもとに来たと」


「本来は『理想の相手を見つける』という貴重な招待状。例えば『世界一の美男(美女)を連れて来い』や『一生自分を大切にしてくれる相手を連れて来い』など、そういった事を書くわけです。しかし、今回の場合は変則的な使い方ですね。本音を言えば、そのような(王子を倒せる相手という)条件に当てはまる者が来るなど、期待はしておりませんでした。半分、姫の自棄やけ。流石に『高望み』とばかり思っていたので」


「ふぅん。話変わるけど、今更ながら僕いま、普通に魔界語理解出来てるね。それも招待状のオプション?」

「ええ。そのようなものと伝えられております」


アフターケアも万全だね。


そんな中、「はぁ」とため息をつくタルトちゃん。


「私が思うより早く、招待状は貴方を召喚よんでくれた。その点は良い。……けれど、今は悪魔の招待状ラブレターの効果を『疑っている』わ」


「なんだぁテメェ? 僕が弱く見えるってェ?」

「そうよ! だって貴方からは魔力を『ほとんど』感じないんですものっ」

「そりゃあ、僕はこっち(魔界)出身じゃあないからね」

「……私達は、魔力という基準が全てなの。正直、力が未知数な貴方には不安しかないわ」


言いつつ、彼女は窓の外を見る。

僕もさっき見つけて、なんならタルトちゃんの事情より気になってるあの【巨大な樹】。


察してか、ジージョさんが説明してくれる。


「アレは、魔界を支えている『世界樹ユグドラシル』です。全ての生命の根源であるとされ、あの樹から放たれた魔力が空気中に漂い、それで我々は魔法を行使したり、生活を営んでいたりするのです」


「発電所みたいな感じかぁ。さっきは僕から魔力を『ほとんど』感じないって言ってたけど、逆に言えば少しは感じるんだね。僕も数日、ここで暮らして魔力を摂取したら、魔法を使えたり?」

「理論上は。しかし、そこには『才能』という壁が立ちはだかります。個人個人、魔力の許容量は違い、多く貯められる者であれば、大魔法の行使も可能でしょう。逆もまた然り。まぁ、容量が多くとも、知識やセンスがなければ複雑な魔法は放てませんが」

「その辺、僕は才能ありそうだから問題なさそうだなぁ」

「楽観的ね……」


しっかし、あの樹、やっぱりなんか『既視感』あるなぁ。

思い浮かんだのは(最近出番の無い)感情溢れる樹【ドリー】の存在。

親戚的なものかな?


僕は視線を彼女達に戻し、


「ま、そこは僕を信用してくんな。君の『お婿さんガチャ』はSSRだ。さっさと終わらせたら、僕は帰るからね」


「はぁ。どこから来るのかしらね、その自信は」

「しかし、この方を信じるしかありませんよ、姫」

「ふん……取り敢えず、今から学園に行くわよ」

「学園?」


休み中なのに、勉強でもさせられるのかと僕は渋い顔になった。

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