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247 会長と子沢山

カヌレとの近場温泉地小旅行一泊二日の一日目は、何事も無く終わり……

翌日である今は、同じ温泉地にある、割と有名な滝のスポットを普通に楽しみ……

もう、帰りのバスに乗って帰ろう、という時。

『なんかイベント無いとヤダヤダ〜』と駄々をこねる僕だったが…………



「何度言ったか分からないが、君はここ数日忙しかったんだろう? たまには良いじゃないか、骨を休める意味でも。トラブルは明日以降期待してくれ」


「いや、諦めるな。アパートに帰ってから何か……?」

「諦めたいんだけど……」


そんな時である。


「あ、また封筒落ちてんじゃん。……ぅん?」

「見ちゃダメ」


突然、カヌレに後ろから両手で目を塞がれる僕。


「キャッキャ、真っ暗キャッキャ」


「うん、そのまま子供のように素直に歩こうね。少しの間私が導くから。(ボソッ)全く……なんで『あんなもの』がここに……」

「でも、今落ちてた封筒、『特徴』が(ガシッ)フゴッ」

「口に出さないでねー」


目も塞がれ口も塞がれ、襲われてるみたいでなんだか興奮してきた僕。

にしても、さっきの封筒の『色』は……


「はい、おわり(パッ)」


そんな事を考えていると、意外と早く、拘束は開放された。

周囲の景色に殆ど変化は無い。

単純に、目隠しされて一分ほど歩き進んだだけ。


「えー。このまま茂みに紛れていかがわしい事する流れじゃないのー?」

「もう帰るよ」

「ちぇー」


クルリ

ふと、来た道を振り返る。


んー……何も落ちてないな?


「『無闇に見たり振り返ったらダメ』とセポネさんに教わらなかったかい?」


「僕は『黄泉の国』に行った覚えがないんだが?」

「絶対(あの場所の)説明はされてるだろうに。まぁ、君は何故が起きても平気という意味でも、どうせ忠告を守らないからという意味でも、あの人に説明が不要と判断されてもおかしくはないか」

「ようわからんけど、有名だよねぇ、黄泉の国でのイザナギとイザナミの話は」

「その話広げる?」


広げる。


「カグツチを産んで死んだ嫁を迎えに行ったは良いけど、腐ってただけの嫁にビビるなんて神様がきいて呆れるよ。色んな生き物産み出しといて、今更そんな普通のリアクションする? ってなるよね」


「まぁ……美しかったであろうイザナミの余程の変貌ぶりに、取り乱すほど驚いたんでしょ」

「その後は夫婦でガチの追い掛けっこを始めたからなぁ。正史では旦那イザナギが勝って、『一日人間千人殺すからな!』と発狂するイザナミに対して、『ならこっちは一日千五百産むわ!』と旦那が返して、そこで夫婦の仲は終わるんだよね」

「神同士ならではのパワーワード飛び交う壮大なスケールの話だね。……そんな君は、この逸話を参考にしようとは思わないのかい?」

「参考?」


どの部分の話だろう。


「一日子供を千五百人産もうって話?」


「残念ながら私はそんな芸当が出来る虫とかマンボウとかじゃあ無いんだ。その部分じゃなくって……この話の肝は、『禁忌に触れるな』という部分だよ。『約束やルールを守れ』でもいい」

「ふむふむ」

「例えばイザナギは、約束を破った故に、妻を取り戻す事は叶わなくなった。いや、そもそも黄泉に行った時点でタブーに触れたという説もある」

「神なのにその辺はどうにも出来なかったんだねぇ」

「同じように、少し前の話で出た『冥婚』も同じ。【赤い封筒】なんていう明らかに問題がありそうな物を、人は好奇心で拾い上げ、その結果痛い目を見る」

「確かに。あ、一つ冥婚の件で思い出したけど……逆に、拾った人が封筒にお金を入れれば、それで結婚しなくてもいいって流れもあるのだとか」

「そ、そう……まぁどちらにしろ、拾った結果、無駄金を失う不幸に見舞われるわけだ」

「上手くまとまったね」


カヌレは指を立てて、


「いいかい? 触らぬ神に祟り無しの『神』は、地域によっては『髪』だったり『紙』だったりという話もある。変な物は触れない、拾わない。いいね?」


「さっきから神だのなんだのと、宗教チックな話だなぁ。勧誘なら間に合ってますんで(ギッ!)」

「ヒトの服のジッパーをギコギコさせてドアに見立てないでくれ。第一、神の話を広げたのは君だろう」

「(クンクン)くさいなー、くさいぞーイザナミー」

「人を腐った女扱いするな」

「ここまで必死に話す君は珍しいなー、なにか隠してるなー?」

「兎に角、隠し事なんて何もないから。バス停、もうつくよ」

「ほいほい…………(?)」


ん?

なんだ?

靴の足裏に、何かくっついて……


「明日から学校だからちゃんと朝起きなよ? まぁリズムが崩れてるから寝坊するのは確定だろうけど……って、聞いてる?」


「ん? ああ、なに?」

「……まぁ、帰ってからでいいや」

「それより、見てよカヌレ、コレ(ピラッ)」

「ん? あ!」


靴の足裏から剥がしたモノは……【赤い封筒】。


「ちょっ! ぺっして! ソレすぐ捨てて!」

「なーに焦ってんの? 別に、(赤い封筒を拾った人を狙う)変な人は周りに居ないよ?」

「ソレは『そういうモノ』じゃなくって!」


と。

カヌレが次の言葉を紡ごうとした瞬間ときだ。


「お、おおお?」


フワリ……

身体が宙に浮かぶ浮遊感を覚え……


「あー! もう! 『迎えに行くのが』面倒くさい!」


カヌレが苦言を呈した直後。


僕の『目の前の景色が変わった』。


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