表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

266/369

246 会長と結婚の打ち合わせ

カヌレとの近場温泉地小旅行一泊二日の一日目は、何事も無く終わり……

翌日である今は、同じ温泉地にある、割と有名な滝のスポットへと移動中。

そんな道中、怪しい【封筒】が落ちているのを目にしたわけだが……

厄介ごとには関わりたくないというカヌレの意向を汲んでやって……



そんなわけで、封筒はスルー。

ゴミ掃除の人に任せよう。


「封筒といえばさ」


「えー、もっと楽しい話しないか?」

「なんで楽しい話じゃ無いと思った?」

「嫌な予感しかしないからだよ」


「まぁ聞きなよ。『結婚』の話さ」


「け、結婚!?」

「ああ、いつ式を挙げる?」

「え、真面目な話?」

「まぁついでというか」

「ついでって…………えー、あー、もっとこう、タイミングというか……(もじもじ)」

「別に、フワッとした希望の時期とかあるでしょ」

「そりゃあ……流石に卒業後?」

「じゃあ時期はその辺にしよう。で、本題だけど」

「今のが本題じゃないのおかしいだろ……」


「赤い封筒の話は知ってるかい?」


「……ああ、察したよ。だから突然、結婚の話、ね。うん、知ってるから解説は要らないよ」

「まー待て。確認しないとお互い認識の違いがあるかもだろ?」

「無いよ。結婚関連だと『あの話』しか無いだろ?」

「台湾には不思議な文化があってだね」

「いいって!」



赤い封筒……

それは、台湾に古くから存在する『とある儀式』のアイテム。


一つ例え話をしよう。



貴方は台湾を旅行中だ。

グルメや観光を楽しみ、今は街外れをぶらついている。

ふと……貴方は地面に何かが落ちているのを見つける。

茶色いコンクリートの歩道の上に、ポツンと落ちている異物。


【赤い封筒】


これはなんだ? と貴方は封筒を拾ってしまう。

中を開けて見てみると……入っていたのは


『お金』と『人の写真』と『髪の毛』


その瞬間!

近くの電柱から数人の大人が飛び出して来た!

大人達は貴方を捕まえ、こう言い放つ。


『うちの死んだ子と結婚して貰う』


……と。



まぁ。

うっかり、海外で赤い封筒を拾うと、ロクな目に遭わないという話だ。


これが、かの有名な『冥婚めいこん』という文化である。


冥土に行った者との婚約。


読んで字の如く、だ。

結婚も出来ぬまま若くして死んでしまった子を不憫に思い、残された家族がその相手を探す為の手段が、この赤い封筒。

封筒の中身のお金は、いわば結納金代わり。


結婚はほぼ強制。


断る手段が無いわけではないが……どちらにしろオススメは出来ない。

死者との結婚なので、法的には認められず、夫婦生活も何もない。

なので、本人はその後普通に別の相手とも結婚出来るが、年に一度は相手の家に顔を出さなければならないらしい。


冥婚それ自体は、台湾以外でも確認出来る文化だ。

古代エジプトやギリシア神話でも登場するし、現代でも東や東南アジアにもそんな文化が残っていたりするという。



「そして日本……更にはここから近い青森や山形などの東北にも、そのような文化がある(あった)のだとか。恐ろしい話である」


「私が聞いてなくても一人でブツブツと……なんだか君が呪われたみたいで怖いからやめて」

「ハッ!? ふぅ……ありがとうカヌレ。危うく『持っていかれる』とこだったぜ……」

「助かって良かったね(塩対応)」

「怖がっているのかい? 安心しな、昔の因習さ。今では『殆ど』廃れてて、台湾の若者でも『そんなの知らない』って風潮だ」

「聞いてないってっ」

「む? 君は結婚の話に興味があったんじゃ?」

「まさかのデートのムードを上げる目的でさっき話をしていたとは……」

「なら、ウチらの(結婚式の)話でも詰めるか」

「だ、だから気が早いって。ほら、滝がもう近いよ」

「滝って?」

「今私達はどこに向かって歩いてると思ったの……?」

「目的もなく二人で散歩は嫌かい?」

「嫌じゃないけどそういう質問じゃないんだよね」

「『僕らはどこに向かっている』、か。哲学的な話だね?」

「あ、もう着いたよ」


気付けば、この温泉地で有名な観光スポットである大滝に到着していた。

ああ、そういえばそんな予定だったね。



「いやー、近いから何度も見た事あるけど、いつ見ても良いね、滝は」

「私も、気分がリフレッシュ出来たよ」


ザバーッと大迫力の滝を普通に楽しんだ僕達。

このまま、帰りのバスに乗る為バス停を目指して……


「って、いやいや、ホントに何も起きないじゃん」


「普通は起きないんだよ」

「滝から巨大蛇が現れたり滝が割れて謎の洞窟が現れたりとかして欲しいじゃん」

「それは願望だろ。そんな場所は『君の実家』の方に溢れるほどあるだろうからそこで楽しんでくれ」

「普通の地味デートじゃん」

「普通で良いんだよ」

「でも普通の女の子って刺激のあるデートを求めてるって……」

「なら私は普通じゃないって情報更新しておいて」


モヤるー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ