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244 会長と温泉卵

カヌレとの近場温泉地小旅行一日目は、何事も無く終わった。

旅館では温泉に入ったり、夕食を食べたり、カップルとしての時間を過ごしたりして…………



「ふぅ。変な時間に起きちゃったぜ」


深夜。


独り言を呟きながら、僕はふらふらと旅館内を一人歩く。

カヌレは今、お布団でスヤスヤ。


「あんなに、午前午後と温泉に入りまくって『暫くはいいや』と思ってたのに。これが旅行パワーか」


ふらふら、温泉前に到着した僕。


二十四時間利用可能なのは素晴らしいね。

流石に、一人で家族風呂の利用は無理だから、今回は男湯で。

野郎との風呂なんてお断りだが、こんな深夜なら誰も居ないだろう。

家族風呂の時とは別の景色も楽しめるはずだ。


「でも、野郎が入った後のお湯とかやっぱり、少し抵抗がなぁ……」


そんな事を考えつつ、暖簾を……


ヌルリ


「ん? 今……」


男湯れの暖簾をくぐった瞬間、まるで、生温かいゼリーに身体ごと突っ込んだような……


「変な感覚ー」


浴場への扉を開けた瞬間、ブワッと湯気の塊が飛んでくる事があるが、それを何倍も重くした感覚。

まだ更衣室でも無いのに、ここいらでもう湿気まみれなのか?


何となく変な予感を覚えつつ……

ポイポイと脱衣所で服を脱ぎ捨て、ガラリと浴場へ。


むわりと湿気を感じたが、先程ほどではない。


室内浴場には目もくれず、ペタペタとそのままの足で露天風呂へ向かう。

浴場から通じる露天風呂への扉に手を掛けて……


ガラリ


「え?」

「ん!!??」


ムワッ!

まず感じたのは、今日一番の『熱気』。

それから、視界が塞がるほどの湯気と湿気。


まるでサウナ……いや、それ以上のモノが全身を包み込んだ。


「どーゆー事かな!? ここには『誰も入れない』筈だけど!?」

「む? 『その声』は……」


瞬間、僕の頭の中で、一人の『知人』が思い浮かんだ。

答え合わせをする為に、僕は濃霧のような世界を進んでいく。


パンッ!


ふと、一度だけ響いた拍手。

すると フワッ! と湯気は一瞬で晴れて……


「わぁっ! 若じゃーん!!」

「声がでけえ!」


室内じゃあないというのに、キーンと耳鳴り。


ショートの赤い髪色、褐色肌、ナイスバディ……


このお姉さんは、『例のお宿の女将』こと【セポネ】さんと同じ、僕のママン直属の部下(幹部)の人で。

あと、なにかとテンションが高い人。


「プロメさん、おひさー」


「こんなとこで奇遇だねぇ!!」

「だからうるせぇ! ったく……てか、なんで男湯に?」

「いやーお風呂って日替わりで場所が男女入れ替わるじゃん!? 今日はこっちの広い方に入りたかったの!!」

「自分勝手だなー」


見た目はお姉さんだが、セポネさん同様、昔からお姉さんだし、(実際は)良い歳して(るんだろうに)我儘な人だ。


「全く。その口振りだと、ここ(旅館)に来るのは初めてじゃあ無いね。深夜とはいえ、男の人が入って来たらどうしてたんだい」


「本来なら誰も入れないよう『結界』張ってたんだけどねぇ! なのに、若ったらナチュラルに突破してくるんだもん!!」

「結界?」

「『入ろうって興味を削ぐ』結界なんだよっ、普通ならね! まぁ若なら変な違和感覚えたくらいだろうけど!!」

「ああ。ヌルッとしたアレね」

「一般人はそんな感じ! でも結界に気付くような『敵意』を持った相手なら『蒸発』する結界さ!!」

「うーん、お風呂を覗いた罪は重いねぇ。てか、気付いた相手全員を『敵意あり認定』してないよね」

「まー兎に角! 若も入って入って!!」

「んー、そーはゆーけどさー」


グツグツ

地獄の釜のように沸騰している露天風呂。


「これ、ジャグジーか何か?」

「入れば分かるよ!!」

「うーむ」


そーっと、水面につま先を伸ばす。

チャプッ


「うーむ……気持ち熱めだけど大丈夫そうだね」

「やっぱナチュラルボーンプリンス(生まれながらの強者)は違うね!!」

「何の話?」

「こっちの話!!」


チャプ チャプ ブク ブク


ジャグジーの水泡にはバブみ(発泡入浴剤を使った時のような感じ)が有り、肌にくすぐったい。


「若とお風呂とか若がまだちっちゃかった時以来だねぇ! まさかまた若と入れるなんてねぇ!」


ああ、この人のうるささで思い出した。

昔も、こんなグツグツしたお風呂に入ったっけ。

うるさくて、うるさい人。

その熱さは物理的にも熱くって、こうして彼女がお風呂に入るだけで、湯の温度が上がるくらいだ。


「あっ! 若の登場で『仕込んでたの』忘れてた!!」


ふと、プロメさんが湯の中で手をワキワキ動かし始める。


「これかな!? (ニギッ)」

「んあっ! そ、それは僕のおいなりさんだよぉ……」

「失礼! むむぅ! (ゴソゴソ)あっ! あった!!」


ジャパ!

プロメさんが湯の中から取り出しのは……ジッ◯ロック?


「じゃーん! 生の豚ブロックを麺つゆで漬けてました! これで立派な焼豚だよ!!」

「煮豚に近いんじゃないかな?」

「加えて下の方に置いてた生卵は茹で卵に! 蓋付き徳利の中身も熱燗になってるよ! 若も食べる!?」

「もう歯ぁ磨いたから」

「残念! 我が成人したら一緒に呑もうね! いやー放熱を抑えて温泉を『沸点(100℃)でキープ』するの大変なんだよ! 上げ過ぎると蒸発するしね!」

「何の話やら」

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