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239 サキュバスとプイプイモル◯ー

現在、僕らがいるのは僕の『実家がある島』で。

色々(前話参照)あって、人魚の豆ちゃんは『死亡願望』を先延ばしにしてくれた。

これから、僕の知り合いが多い『居住区』へ行って貰おうというわけなのだが……



「しかし……このまま森を抜けるのは……」


心配そうな豆ちゃん。


「身の危険的な意味で? ああ、それは大丈夫」


僕は一歩前に進み、森を見据え、



「ただいまあー!」



まぁー まー…… ぁー……


やまびこのように、周囲に僕の声が響き渡る。


シィン


「こ、これは……」

「あれほど森の活気に満ちた音が、消えましたね」


「おや。帰宅の挨拶をしたのに、静かになっちゃったよ。森の主に対して失礼じゃね?」

「主だったんだ……そりゃあ暴君(王子様)が帰省して来たと知ったら、大自然の日常(弱肉強食)も一時的に中断するでしょ。てか、何を以って『大丈夫』だと豆ちゃんに言ったの? 元からこうして静かにさせる(そして安全に通させる)のが目的だったんじゃ?」

「いや、『友達を連れて来たよ』って意味を込めて挨拶したんだよ。森の動植物達が織りなすオーケストラで、二人に歓迎の意を示して貰うつもりだったのに」

「……まぁ、どちらにしろ、威嚇になったわけだ。これで君の客人には襲い掛からないでしょう」

「別に脅すつもりはなかったのになぁ。……うん?」


トットットットッ


「この、森から迫って来る足音は……」

「ウカノ君の威嚇を聞いてもなお来る子なんて……」

「むっ、この『毛の多い生物』特有のポテポテした足音には聞き覚えがある……もしや?」


「キュッ!」


フワフワした身体と、軽自動車並の体躯のその子は……


「おー、ラクタちゃんじゃないかっ」

「……モルモット?」


数日ぶりなのに、随分久し振りな感覚だ。

そーいえば、この森に出荷してたな。


「よく今日まで生き残れたねーよしよし。あ、紹介するよ。見ての通りな巨大モルモットのラクタちゃんだよっ。アンドナには軽く動物園で起きた事話したよね? それがこの子よ」

「キュウ!」

「君の『挨拶』を聞いて来ちゃったみたいだね……」

「……ここには、このような生き物が当たり前のように居るのか……」

「可愛いです」


見た目が良いと得だなっ。


「モル◯ー二期って感じだね」

「いやそれは知らないけど……」

「あっ、そうだっ。ラクタのもう一人の飼い主こと(女優でサキュバスの)【アマン】ちゃんに写真送ろうかなっ。アンドナは知ってる? アマンちゃん」

「ん……まぁ」

「よしっ、じゃあ豆ちゃんとメイさんも入ってー。はいっ、チーズ!」


カシャッ


「よぉし。みんな良い感じに写ったねー。送信っと」

「キュ!」

「うーん、よく見たらラクタちゃんボロボロだねぇ(サスサス)傷は勲章でもあるけど、この【木の実】を食べたら傷の治りも早いぜっ」

「キュー(パクッ)」

「うむっ。折角君に来て貰ったんだ、この二人を居住区まで運んでくれないかな?」

「キュ!!」

「また勢いで決めちゃって……」


ストン


ただでさえモルモット特有の短い手足を畳み、身体を低くして二人に乗るのを促すラクタちゃん。

ご親切に、『ムクッ』と、横っ腹の一部を出っ張らせて足場を作ってあげてる(おさらいするが、ラクタは細胞レベルで自身を弄れる。分裂も出来る)。


「さっ、二人とも、遠慮なく乗って乗ってー」

「う、うむっ」

「というかウカノ君、さっきから当たり前のように『二人』って言ってるけど、メイさんも……?」

「そりゃあ、ねぇ?」

「はい。私は従者として、豆様を(最期まで)見届けます」

「全く……ワシには過ぎた従者もの達じゃよ」

「では、私が先に。ラクタ様、失礼します」

「キュ!」


メイさんはラクタにヒョイと跨ったあと、「お支えします」と豆ちゃんに手を差し出す。


「うむ。よいしょっ……ふぅ……快適な乗り心地じゃな。道中任せるぞ、ラクタよ(ぽんぽん)」

「キュー」

「なんなら、しばらく二人の足になってくれやラクタちゃん」

「キュキュ!」


さぁて、話は既にまとまった空気だな。

この二人はこれから暫く、僕の実家の島で過ごすわけで…………あ。


「メイさんメイさん、考えたら清廉島にある君らの館、そのままになっちゃうね? 冷蔵庫の食料とかどうしよ? 一旦帰る?」

「グダグダだなぁ……」

「いえ。実の所、食料は乾物以外何一つ残していません。今日、豆様の予言で『全てが終わる』と解っていましたので」

「用意周到だなぁ。もしあの人ら(探偵パートの)が生きてたとしても、上手い事理由付けて帰してたって事か」

「しかし、主らは一旦島に戻るじゃろう? 思えば、山田も残っていたな……」

「まぁそこはどうにでもなるさ。ね? アンドナ」

「別に、清廉島に戻らず荷物を回収しに最初にった港に戻っても良いんだけど……島に残した(乾かしてる)私服は諦めてもいいし。山田さんも勝手に帰るでしょ」

「おいおい、そしたら山田さんが殺人事件の犯人だと疑われるだろ?」

「忘れてた……島には死体が残ってるのか……ますます戻りたくないなぁ」

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