表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

253/369

233 サキュバスと掃除機

人魚伝説の残る清廉島へと流れ着いた僕とアンドナ。

殺人事件やらなんやらがあったけど、現在はそれももう落ち着いた空気で。

今は豆ちゃんの『自殺願望』についてのお話を聞いている。

人魚である彼女は、凡ゆる手段を用いても死ねなかったらしいが……



「人魚の呪いすら超える『異形』の存在ならば、終わらせてくれると考えた」

「ふむ」


単純ではあるが、正解だろう。

実際、僕の『実家の森』にも『不死の植物』が何百種以上もいるが、より強い獣がひと吞みすればそこで終わっているし。

まぁ、その獣のうんこから再生出来る子もいるが……

兎に角、豆ちゃんのアプローチは間違っていない。


「そうしてワシは、異形と出会う為に凡ゆる手を尽くしたわけじゃ。しかし……」

「その様子だと上手くいかなかったようだね。因みに、異形さんらに出会う為の手段ってのは?」

「まずは調査じゃな。信用出来るメイの家に会社を設立させ、財力にものを言わせて世界中を調査させた。怪しい宗教団体やら僻地の村、軍団やらNA〇Aの管理する施設など……しかし、主の推測通り、結果は芳しくなかった」

「へぇ。アンドナ、君らみたいなの(異形)見つけるのって、そんな大変なの?」


訊ねると、アンドナは「まぁ……」と言いづらそうに、


「上手く周りに溶け込んで暮らしてるのが大半だからね。君も少しは自覚してよ? 周りがフォローしてるんだから」

「あん? 僕は一般人だぜ? てか、溶け込んでるというわりには、僕、変な子とよく会うが?」

「君の場合、無自覚に引き付けてるんだよ。いや、引き寄せてる、が正確かな」

「掃除機だったかぁ」

「本来、『異形同士』ですら正体を隠してるんだ。寧ろ、より警戒される。だからこそ、豆ちゃんは同類を見つけられなかった。ウカノ君は理解すべきだよ。君の『特別』……いや、『異常』さを」

「つまりカリスマって事だなっ」

「まぁ、それでいいや。そんなわけで豆ちゃん、『連中』は努力やお金じゃあ絶対に会えないって事」

「ふぅん。面倒くさい連中だねぇ」

「その(面倒くさい)筆頭が何を」

「豆ちゃん。お金と時間、無駄にしちゃったね?」

「いや……案外、そうでもないぞ」


言葉の通り、豆ちゃんに後悔の色は見えない。

時間は不死ゆえに無限だし、お金もまだまだ余裕があるから、とか?


「そーいえば豆ちゃんて、こんな島にこもって、莫大な資金とやらはどう稼いでたの?」

「ふむ………主は『人魚は瑞兆や凶兆を予言する』、という逸話を耳にした事はあるか?」

「んー? 初耳かな。予言の力を持つって妖怪なら、クダン(人の顔を持つ牛)だの神社姫(竜宮城からの遣い)だのは知ってるけど」

「その神社姫も人魚の一種じゃよ」

「ほーん。すると、豆ちゃんにも予知能力が? それでお金稼ぎを?」

「まぁ、な。株だの投資だの、色々と手を出した。細かい事はメイの家の会社にやって貰い、ワシは口を出すだけじゃが」

「かっこいーなー、未来予知っ。アンドナはやり方とか知らない?」

「……君は、大抵の望みを自力で叶えられるでしょ?」

「夢がなーい」


女の子にバカ受けなスピリチュアルな特技が欲しいってのに。

今の僕にやれるのは花占いくらいだ。


「まぁ、こんな場所にポツンと住むのも悪目立ちするからの。時には警察と協力し、この力を捜査に役立たせたりもしていた。勿論、その事実を知るのは『上の一部』のみ。警察には色々と借りを作ってある」

「警察に借りがあるってセリフ、僕も言ってみたーい」


「それこそが……この清廉せいれん島で『殺し』を見逃されている理由、ですか?」


お?

気絶してると思った山田さんが、意識を取り戻したようだ。


「目覚めたようじゃな。それとも、とっくに覚めていて、話を聞いていたか?」

「どちらでも良いでしょう……今訊ねているのは、警察との繋がりの話です」

「殺しを見逃している、というのは語弊があるぞ。警察に罪は無い。あ奴らには『怪死事件』にしか見えぬのだから」

「やはり……認めるんですね、この清廉島で起きていた『奇怪な事件の犯人』だと」

「否定した記憶はないがのぅ」


肩を竦める豆ちゃん。


「アンドナー、奇怪な事件ってなんだっけ?」

「えーっと確か、この島には定期的に人がやって来て、その度に来訪者が変な死に方をする、って話の事かと」

「今日の事件みたいな事かぁ。そりゃあ警察からすりゃあお手上げだね。現実的に考えるなら、犯人は催眠とか洗脳マインドコントロールで被害者を自殺させてる、とかになるだろうけど……それって罪になるのかな?」

「どうかなぁ。その現場の映像を押さえてたんなら、自殺教唆だとかの罪に問えそうだけど……」


兎にも角にも、今の日本じゃ犯罪と呼ぶには曖昧なラインという事だ。

とは言っても、毎度のこと何人も死ねば、警察も明らかにおかしいと思うだろう。

しかし、『捜査の協力』やら『表沙汰に出来ない不祥事』やらという借りもあって、豆ちゃんに手錠を掛ける事が出来ない、と。

良くも悪くも、彼女は警察にとってアンタッチャブル(不可触)な存在というわけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ