表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

249/369

229 サキュバスとラブサーチ

人魚伝説の残る清廉島で殺人事件に巻き込まれた僕とアンドナ。

島の主人である巫女幼女、豆ちゃんから人魚の逸話を聞いていたわけだが……



ふと、



ギャアアアア!!!



空気が震えるほどの悲鳴。


「うーん。犠牲者が増え続けたら、最後に残った奴が犯人って事になるよね?」

「それ探偵の敗北だよね……」

「てか今の悲鳴、『二人分』じゃなかった?」

「あー……確かに」

「サクサクだなぁ。呪いさんの頑張り次第じゃあこりゃあ今日中に終わるなっ」

「バッドエンドで……?」


ズズズ……ふぅ。

豆ちゃんはお茶を飲んで、


「慌ただしくて済まんのぅ。済まんついでに、主ら、少し様子を見に行って貰ってもいいか? メイの事も心配じゃ」

「任せなさいっ。凄惨な現場は子供が見るもんじゃないからここに居なっ。猫ちゃんっ、その間に豆ちゃんを守護まもっててねっ」

「にゃ、にゃー」

「行くよアンドナッ」

「テンション高いなぁ……」



「うわあああ! ママ! ママ!」


駆け付けた先、そこにいた泣き崩れ男は野々宮息子だ。

そして、彼の目の前には……二人分の亡骸。

一目で亡骸と分かる死にっぷり。


説明を省いていたが……玄関ホールには、大きな水槽がある。


大人が二人入っても余裕なくらいの水槽。

その中には【ピラニア】達が悠々と泳いでいて、この水槽を見た時は目を輝かせたものだ。

何故かピラニアちゃん達は僕が近付くと逃げちゃったけど。


で、だ。

何となく、察しが付いていると思う。


鉄臭い玄関ホール。

真っ赤な水槽。

元気に食事するピラニアちゃん達。


水槽の中では……青沼部下と野々宮母が、沈んでいた。


「くっ! また止められなかった……!」

「白々しい……」

「ねぇアンドナ。こういうのって、もっとこう、登場人物らと交流した後に事件起きるもんじゃない? あまりに被害者に思い入れが無さ過ぎるぜ?」

「……交流してても君の場合、思い入れは変わらなかったと思うよ」

「それもそうだね。しっかし、二人は何故水槽の中に……泳ぎたかったのかな?」

「君じゃないんだから……」


「申し訳ございません、立て続けにバタバタとしてしまって」


ヌッと現れたメイドさんが、こんな時でも相変わらずのクール顔でペコリと頭を下げた。


「おー、メイさん。大変だね。アンドナ、(死体の)片付け手伝おうぜ?」

「ん……まぁそうだね」

「お手数お掛けします」


ジャブン ジャブン


アンドナと二人で水槽を持ち上げ、玄関を通り、外の芝生の上に中身をザバーッ。


あらかじめメイさんにバケツに水を張るよう頼んでいたので、ピチピチ芝生を跳ねてるピラニアちゃん達をポイポイとバケツの中に。


「お疲れ様です。……、……お二人共、力持ちですね。水槽は水と大人二人分の重量で相当重いのに」

「そう? 別に普通だよ。ね?」

「普通ではないかな……」

「それに、死体を見ても、落ち着いている」

「それはほら、僕よくアウトドアで自給自足するから、生き物締めたり解体したり、結構慣れてるんだ。血塗れの人間の死体だろうと気にはならないさ」

「成る程」

「別問題だと思うけどなぁ……」

「あっ、こらっ、ピラニアちゃんっ、お腹空いてるからってヒト食べちゃダメでしょっ(ツンツン)」

「(ピチピチッ)」

「ピラニア達隅っこに固まっちゃったね……怖がらせちゃダメだよ?」

「ピラニアは鋭い歯があって獰猛に見えるけど、本来は臆病だからね。怪我して血流してる時じゃないと襲ってこないし」

「そういう理由かな……」

「そーいや前に、脚に返り血がついてその時遊びに行ってたアマゾン河でジャブジャブ洗った時は、ピラニアちゃんも寄って来てたなぁ。ドクターフィッシュみたいに僕の肌をパクパクしててくすぐったかったよ」

「なんの返り血……?」


僕らは話しつつも、二人の遺体を検証する。


「はぁ。ここが何もいわくの無い普通の場所なら、私なら心中を疑ってたかな」

「この二人が心中? カプ厨サキュバスめ……実は二人が『デキてた』と言いたいのかい?」

「まぁ不倫のケは感じてたよ。そういうのを探る『術』を使ったわけでは無いけどね」

「ラブサーチみたいなサキュバススキルがあったのかぁ。なら、この青沼? の方は熟女スキーというやつ?」

「どうだかね。青沼さんの方は、案外野々宮さんが言ってたみたいに色々利用してのし上がろうとしてたのかもね。実際、野々宮奥さんと二人して社長……最初に死んだあの人を排除する計画でもあったのかも」

「なら、あの最初の首吊りも自殺じゃなく二人の仕業?」

「さて……どうだか」

「二人じゃないのなら、二人にとっちゃ棚ぼたみたいな展開だったわけだ。結局、こうしてミイラ取りがミイラになっちゃったけど」


どちらにしろ、死人に口なし。

生きてる人間は、遺体から学び、次に活かすんや……!


「さてさて……ふぅむ、どちらも凄い形相してるね。泳ぎたかったから水槽に飛び込んだは良いけど、ピラニアちゃん達の歓迎が思った以上のものだったから驚いて?」

「その説好きだね……殺された後に水槽に放り込まれた可能性だってある。直前の死因による顔、かもしれない」

「神社で聞こえたこの二人の悲鳴が何によるものか、もあるよなぁ。まるで名状しがたい恐ろしい物でも見たような……気になるぜっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ