226 サキュバスと覚える必要のない人物紹介
のんびり、アンドナと一泊二日の旅行でも楽しもうと船に乗ったは良いが、嵐の影響で『ワケあり』な島へと辿り着いてしまう。
僕らをもてなしてくれた洋館では、早速『殺人事件(?)』が起きて…………
事件は昼食後の事だ。
あ、因みに僕らが漂着したのは昼頃ね?
で、僕らがお昼を頂く頃には、食堂にいた者達はお昼を済ませ、次々に部屋へと戻っていく所で。
僕とアンドナも、昼食後は部屋に……は戻らず、洋館内の探検。
洋館の中は『色々気になる部分』が多かったが、それを除けばジメッとした空気の、僕好みな雰囲気。
と。
そんな風に探検を楽しんでいた時だ。
『うわあああ!!!』
男の悲鳴が聞こえた。
『おっ! むふふ、待ってましたって展開だよねぇ、アンドナちゃん?』
『私は別に……イキイキしてる君もどうかと思うよ?』
『悲鳴は玄関の方からだっ、急げっ』
『もう……』
玄関に辿り着くと、既にポツポツと人が集まっていた。
メイドのメイさんが、叫んだであろう人物に冷静に対応している。
その人物は、お化けでも見たように地面にヘタりこみ、震えていた。
『落ち着いて下さい、野々宮様。何があったのですか』
『パ、パパが居ないから探してたんだ……そ、そうしたら!』
開けっ放しの玄関の扉。
外から入り込んだ雨が、床を濡らしている。
震える指先を外に向けるスーツの男。
玄関前の庭には、確か、一本の桜の木があった筈で……
ユラリ……ユラリ……
そこには、木で首吊りブランコをする、中年男性がいた。
と、いう、殺人事件だ。
いや、普通に自殺じゃね?
取り敢えず回想終わりっ。
「ま、いっか。アンドナ、(夕)ご飯食べよー。わっ、僕の和食御膳はお刺身とか茶碗蒸しだよっ、おいしそー。君の洋食のはサーモンパスタかー。海が近いから海鮮には困らないねっ」
「テンション高いなぁ……今は少し静かにしようね」
「(もぐもぐ)殺人事件云々で騒いでる最中だからかい? でも今はまだ推理パートでも無さそうだし?」
「推理パートとは……ハァ、いただきます」
僕らがパクパクチュルチュルしてるそんな中でも、野々宮息子の喚きは続いていた。
「警察はどうした!」
「この天候の中です。すぐには来られません」
「ならば犯人をすぐにでも拘束しろ!」
「犯人と申されましても……私はこういった事は素人ですので」
「屋敷所有の船は無いのか!」
「小さなモーターボートはありますが皆が乗られるものではありませんし、先程も言いましたがこの天候では危険です」
「役に立たない! どうなってるんだここは!」
「落ち着きなさい大弐さん。ここはホテルではありません。私達はもてなされている身。強い態度を取るのはやめなさい」
「マ、ママ! でもパパが!」
「そうだぞ大弍君。ここは冷静になろうぜ」
「くっ、黙れ青沼!」
「(もぐもぐ)あのおばさんとアラサーっぽいリーマンは?」
「あー、確かお昼にしてた自己紹介だと……死んだ人……野々宮猿蔵さんの奥さんとその部下、だったかな。野々宮ってのは日本じゃ有名な財閥ね」
「ふぅん。なんか名前に既視感あるなって思ったら、金◯一の犬◯家か。偶然だろうけど」
「青沼! 貴様がパパを殺したんじゃないのか! パパを恨めしそうな目で見ていたのを知っているぞ!」
「おいおい大弍君、そんなの俺にメリットがあるかい? 寧ろデメリットしかないぜ? 俺は社長に気に入られてたんだから、この先も媚び売ってりゃ安泰だったんだ」
「ふんっ、コバンザメめ! どうせ殺した後の儲け話も既に用意済みなんだろ!」
「やれやれ……随分嫌われたもんだな」
ズズズ……
「ぷはぁ。この味噌汁美味しいねメイさん。アゴ出汁かい?」
「はい。この辺は飛び魚も見られまして……」
「おい! そこの子供達も怪しいぞ!」
「な、なにっ! 何故僕達が疑われるんです!」
「(ボソリ)ウカノ君ノリノリだね……」
「第一! 君達はこんな嵐の中を泳いで来たと言うじゃないか! そんな嘘を吐く時点で怪しい! この館に潜んでいたと考えるのが自然だ!」
「それはそう……じゃなかった。な、流れ着いたのは事実なんです!」
現に今も、外ではゴーゴーと激しい嵐。
雨風が叩きつけられ、屋敷もカタカタ揺れている。
「そのふざけた格好もなんだ!」
「色々と事情が……あ、後で僕らが乗っていた船に連絡すれば分かります! そ、それにっ、僕らには貴方のお父様に手を掛ける動機がない!」
「どうだか! 君達も狙ってるんだろう! 『人魚』を!」
「いえ。全ては呪いの仕業です」
不意に、会話に割り込んだのは、ミステリアスな空気を纏う、パンツスーツ姿のグラサンお姉さん。
「(もぐもぐ)アンドナさんや、あの人は?」
「世界的に有名な霊能者の山田さんだったかな。力は本物らしいよ。これで、一応は登場人物全員」
「ふぅん、ありがと」
まとめると……僕達カップル、ロリ巫女の豆ちゃんとメイドのメイさん、野々宮父(死)母と息子、部下の青沼、霊能者の山田さん……という布陣か。
途中で忘れるのは確実だな。
まぁ、覚えてなくても少しずつ減って行くだろう。




