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224 サキュバスと人魚島殺人事件【日常回】

遊園地でのドタバタも終わり……翌日の……


夕方。



「君と出会って一か月経ったか経ってないか……兎に角わちゃわちゃしてたねぇ」

「どしたの突然?」


今はアパートで、目の前には姉妹にそっくりなサキュバスことアンドナさん。


夕食を食べながらの雑談中。

メニューはお刺身とあら汁。

旅館の女将ことセポネさんからクールで送られて来た怪しい金色の魚だったが、味は絶品。

アンドナは「食べても大丈夫かな……?」と心配していたが、あの人が毒魚送って来る事は無いだろう、多分。


「こんな落ち着いた時間も久し振りって話よ」

「そう?」

「色んなイベントがあったよねぇ。誘拐とか学園祭とか動物園とか呪いとか」

「なに? 最終回みたいな空気だけど」

「と、まぁこんな感じに最近はバタバタしてたからね。少しは落ち着きたくない?」

「ん、まぁ……」

「昨日一昨日は(わらびちゃん関連で)アンドナに構えなかったし。君とは二日掛けて何かしたいなって」

「うーん……学校は大丈夫?」

「明日は土日だろう?」

「え? そうなの? ……まぁ、そういうことにするかぁ」


で、だ。


「行きたいとことかある? 僕はねー、君の故郷だとかいう魔界!」

「いやぁ……『あんなとこ』行くもんじゃないよ……わ、私は普通の観光地とかでいいかなっ」

「一泊二日で行けるとこかー」

「泊まり前提なんだ……」

「あ、猫島とかウサギ島とかは?」

「う、うんっ、いいねっ。動物好きな君の趣味100%なチョイスだろうけど、そういうので良いっ」

「じゃー手配するかー。島に行くわけだし、途中船に乗るからね」

「うん、別に酔いやすいとかないよ」

「猫島は日本にいくつかあるけど、どこにするかなー。ウサギ島ならタコ飯が名物でなー」

「流石にどっちか、でね?」



そんなわけで、翌日……の、夕方。


「僕らは今、殺人鬼が潜む洋館にいるわけだが」

「なんでだろうね……」


ほんとね。


「いや、理由は判明してるじゃん。不運だったよねぇ。途中までは普通に船旅を楽しんでたのに、嵐に見舞われるなんてねぇ」

「誰に説明してんの?」

「口に出しての状況整理は大事よ」


そう……僕らは猫島に向かう為に船に乗った。

それが、突然の嵐に遭遇。

船は沈まなかったが、僕らは海へと放り出された。


「てか! 君が『外に行って嵐を感じようっ』なんて言って連れ出すからっ」

「青春ぽいじゃん?」

「あの嵐で外に出るのはベーリング海のカニ漁ぐらいだよ……」

「借金返済一発逆転で有名なアレかー。まぁ、僕らは頑丈だからねぇ。嵐の海なんて流れるプールみたいなもんよ」


で、たまたま近くにあったこの島に流れ着いたわけだ。

それからなんやかんやあって……


今は、洋館の一室(客室)に居る。


この部屋はベッドが二つのツインルームだ。

それぞれのベッドに、僕らは座っている。


「はぁ……」と肩を落とすアンドナ。


その格好は紅白の『巫女装束』だ。

因みに、僕は白黒の『ミニスカメイド服』。

そうなった経緯は後で説明。

後で説明多いなっ。


「あーもー、荷物が全部船の中だよーっ」

「後で港に帰った船に連絡すりゃ戻ってくるよ。知ってるかい? 『旅行』はスカンピンになって初めて『旅』になるんだぜっ」

「私は旅行しに来たんだけどっ!」

「でも無人島じゃないのはイージーモードだね。まさか、こんな雰囲気のある素敵な場所で一夜を過ごせるなんて」

「『何事もなきゃ』、私も楽しい気持ちでいられたんだけどね……」

「なんかあったっけ?」

「さっき自分で『言った』じゃん……」

「なんだっけ?」


自分の発言なんてすぐ忘れちゃうからね。

僕はアンドナの隣に座り、肩をくっつける。


「ほら、こんな時こそイチャつこうぜ? 不安な気持ちを誤魔化すように身を寄せ合う男女……蝋燭だけの薄暗い室内……ムーディーなお香の香り……」

「不安は不安でも命の危機じゃあないんだよなぁ……」

「何もしないなんてサキュバスの風上にも置けないな?」

「煽るじゃん……君、普段はそこまでガツガツ来ないのに」

「アレだよ、ホラー映画でヤろうとしてるカップルみたいになりたいんだ」

「死ぬやつじゃん……」


ギュッ


ウダウダ言うんで肩を抱いてやると、「もう……」と身体を預けて来るアンドナ。

そこはサキュバス、スイッチはすぐに入る。


ダメ押しにチュッと軽く唇を合わせると、彼女の瞳はトロンと熱っぽいものに。

キスは何度もして来たけれど、この瞬間が飽きる事はこの先も無いだろう。


『不謹慎』だな と、そんな事を思った。


そりゃあ、ミステリーやホラーで、『こんな状況でも』ヤってるカップルが悲惨な目に遭うのは当然だ。

視聴者が『死んじまえ』と願うのも理解出来る。


けれど、残念ながら……

僕らのイチャイチャを邪魔出来る輩なんて、そうそう居ないのだ。

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