223 エピローグ3
セポネさんと外で堂々と会話をしていたわけだが、その時の僕らは周りの人間には見えなかったらしい。
その便利な認識阻害技を僕にも教えてくれとセポネさんに頼むも、断られた。
「まぁ、透明人間になれる手段はドリー(樹)を使ったりと『いくつか知ってる』けどもさぁ……誰の手も借りず自分の力で手軽にやりたいんだよっ」
「だから教えないんです」
そう言って、セポネさんは去って行った。
彼女の経営する本家『かねこりの館』……いつか行きたいぜっ。
……おっと、デートだデート、早く行かなきゃ。
「あれ? ウカノ君?」
「こんなとこで偶然っすね!」
「あん? あー、ゲーム研究会の人だっけ」
今日はよく人と会う日だな。
……と、まぁ色々あったが、その後特にトラブルも無くデートの待ち合わせ場所に辿り着く僕。
「やっほー、ちゃんと来てくれたんだね、わらびちゃん」
「……ど、どうも」
パタン と本を閉じるわらびちゃん。
待ち合わせは、昨日と同じ市内の喫茶店だ。
周りに人がいるとはいえ、知り合いはいないからか普通モードだ。
「おっ、眼鏡と帽子。眼鏡は配信時もつけてたけど、今は変装?」
「そ、そんなものではないですよ」
とは言うが、双子の姉の方が元芸能人だからな。
そうでなくとも、元から目を引く見た目だし。
彼女の向かいの席に「よっこいしょ」と座り、クリームソーダを注文。
「ふぅ。あ、さっき空木ちゃんちに行って来たよー」
「そ、そうですか。滞りなく(除霊)終われましたか?」
「どーだろうね。クールに格好良く去ったからあの後どーなったか。あ、でも特に空木ちゃんから文句の電話も来てないし成功かな?」
「……ま、まぁ、除霊対象自身が自身を呪っていたのですから、失敗してもそれまで(自業自得)ですね」
「あ、わらびちゃんは知ってたんだ。僕はさっきまで彼女の家の前でセポネさんと話してさー、色々聞いたよー」
「……き、来たんですか、あの人が」
「そんで『あーしが黒幕だしっ』とドヤ顔してたよ」
「きゃ、キャラ変わってたんですか?」
「せやで」
楽しい時間を提供してくれたとはいえ、セポネさんが原因で苦しんだ子も多い事実。
空木ちゃんの代わりに軽い嫌がらせをしてもバチは当たらんだろう。
「も、問題が片付いたのは分かりました。それで、今日の呼び出しの目的は? この報告の為に?」
「まさか。報告なんてついでだよ。デートやり直そうぜデート」
「……き、昨日のが、それかと……二日連続で?」
「大丈夫。他の子も二日連続デートにするから」
「な、何が大丈夫なんですか……」
「どこ行くー?」
「の、ノープランです……?」
「じゃーこのままずっと喫茶店いる? 本読みたいでしょ」
「ま、まぁ……私はそれでも……」
僕も、どこでも良かった。
「あははは」
「もー、静かにしなさいっ」
視線の先には一組の母娘の客。
「そーいや、おまじないで出会った夫婦は、その影響が消えたらどうなるんだろうね?」
「さ、さぁ。何が起きても、どちらにしろそれは『家族の問題』かと」
「だねぇ」
他人任せにしてはダメ。
それが、幸せな家族を作る上で、今回僕が学んだ教訓。
お後がよろしいようで。
↑↓
「なぁ……ホントに行くのか?」
「こわーい(笑)」
「何? お前ビビってんの? ここはホラースポットとかじゃないぞっ」
「そうだけどさぁ……」
「君の為に来たんだからもっと楽しみなよっ(笑)絶対いい出会い来るからっ、ウチらみたいにっ」
「素敵な出会いに導いてくれる恋愛スポット、だっけ? けど、怖い後日談も無かった?」
「ああ。それで一緒になった家族が何れ不幸になる、ってやつだろ? たまたまだよ、たまたまっ。結婚出来ない奴の嫉妬の声だってっ」
「なら良いけど……なんだか嫌な予感が……」
「兎に角っ、もう着くよっ(笑)」
「…………あ? 祠が、無くなってる?」
「なんか看板があるよー? (笑)」
「『撤去されました』……だって。はぁ……なんだぁ」
「今更すぎねぇか? 今までもそういう意見はあったって聞いたのに」
「もういいよ……帰ろう」
「あっ、でも祠が無くても叶えてくれんじゃね? この奥の森に向かってお願いしてみなよっ(笑)」
「ええ……そこまでするぅ?」
「…………待て、なんか聞こえねぇか?」
「なんかって? (笑)」
「森の奥からだ。なんていうか……まるで……」
キャッキャ! キャッキャ!
「うわー!?」
「子供の声!? に、逃げよう!」
「イヤアアア!!!」
キャッキャ キャッキャ
…………
……
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※セポネやかねこりの館のお話は、自身の投稿作でもある『目が覚めたら雪山にいて近くの宿の若い女中さんに拾われた話』の方でも読めます。




