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218 お嬢様と巻き気味な展開

ウカノが子供達の幽霊を竹馬の一振りで一掃したわけだが……



「おや?」


一人だけとなった黒い着物の親玉……それが遂に『動き出し』、彼の興味を誘う。


そうは言っても、親玉が行ったのはそれほど大きな動きではない。

ただ、両手を胸まで上げ パンパンッ と拍手しただけ。

まるで『ご飯の時間だ』と子供を呼ぶように。


わーわー きゃーきゃー


すると、何処からともなく……いや、親玉の後ろからゾロゾロと着物の子供が湧いて出て来た。

予想していたとはいえ、まだ、子供の魂のストックはあったようだ。

消えたら補充……本当にシステムと同じだ。

魂の数にキリはあり、いずれは尽きるんだろうが…………それを待てない者が一人いる。


「空木ちゃん! 子供は僕が引きつける! その間に、君はあの親玉を頼む!」

「は、ハァ!? 勝てるわけねぇだろ!」

「大丈夫! どうにかなる! うおおお!!!」


決死の突撃のように子供達の元へ突っ込んでいく彼。

どうやらさっさと展開を進めたいらしい。

かといって、雑な流れは許せないようで、少しでも王道な流れっぽく演出して。


「チッ! 絶対助けろよ!」


覚悟を決めた空木さんも刀を抜き、駆け出す。

彼は宣言した通り、子供達を一人で引きつけていた。

空木さんはただ真っ直ぐ、親玉へと向かう。

親玉は……敵が来てもなお、何もしない。


ザンッ!


「え?」


その声は空木さんが漏らしたもの。

やった本人が一番困惑している。


親玉の首は、抵抗もせずあっさり落ちた。


いや、顔は黒いモヤで隠れていて、正確な位置は彼女に分からないだろうが……

それらしい場所を刀で横薙ぎした結果、フワァと煙が晴れ、そこには首無しの着物女性だけが残った。


「た、倒したのか……?」

「(キィン!)壁となる子供がキツイだけで、親玉を倒すのは楽なのかもね。にしては、子供は消えないのな。こういうのは大抵、親玉と同時に消えるのがセオリーだけど(ガキィン!)」

「お、お前、よく子供相手にしながら涼しい顔で話せるな……?」

「むっ(ズバッ!)空木ちゃんっ、親玉をよく見てっ」

「あ?」


消えた頭部。

しかし、その身体は未だ倒れたり崩れたりもせず……

スゥゥウウウウウ

霧散した筈の黒いモヤが再び集まり出す。


「あー、再生する系? おいおいここは倒される流れでしょー」

「ど、どうすんだよっ!?」

「本体は更に別ってパターンかなー、それとも子供を全て倒した時じゃないとダメージ入らないとか? メンドー」


パンパンッ


「うわ、ダメージ与えられないと子供を増やす感じ? 空木ちゃーん、そこいると湧いてくるよー」

「に、逃げろったって……ッ!! コ、コイツの近くにいると、頭の中に……ガキの声が響いて来て……!」

「あー、精神系デバフも撒くかぁ、隙がないねぇ。んじゃあ僕もちょっとそっちに」


彼が空木さんを助けようと(子供達を無力化したあと)向かおうとして、



「カメラを壊しなさい」



その声は、凛と、周囲に響いた。


「ん? 今の声……どっかで聞いたような……? ま、いいや! 時間経過でイベントが進む系だねっ。空木ちゃん!」

「な、なにを……」

「これ、ぶった斬ってー」


ひょい


彼はそれを、敢えて、頭を抑え苦しんでる最中の空木さんへと放る。

【インスタントカメラ】。

遊園地の奥、祠の中にあった『マザーハート(嫁入り道具)』。

別に、破壊は彼がやれば済む話でもあるのだが……

先程からの指示を見ると、彼なりに、今回の騒動の決着を『元凶となった血族』にさせようとしているのかもしれない。


「ッ……オラァ!」


立つのも苦しそうな空木さんだったが、根気を振り絞り、落下してくるカメラへと刀を振るう。


サクッ


野菜でも切るような、そんな手軽さで、カメラは空中で両断された。

大抵、ああいった代物は容易に傷付かぬ『破壊耐性』を有しているものだが……

『製作者』の性格を考えれば……まぁ、所有者の血族にだけ、特別措置を取っていてもおかしくはない。


サララララ……


カメラはそのまま、砂で作った模造品のように崩れていって。

親玉も、子供達も……後を追うように、同時に崩れ、散って行く。


「終わった……の?」


隣の美兎さんが呟く。


「ここで終わらなかったら流石の僕もキレるぜ? あ、ほら、この世界もっ」


ぐにゃり


空も、地面も、景色も……印刷した紙を握ったように歪み始め……

ジワジワと、元の世界へと姿を変えていく。


「お? ここは……おばけ屋敷の前か、戻って来たねぇ。さ、終わり終わりっ、皆で焼肉行くぞー」

「なんでお前はそんなに元気なんだよ……私はもう動けねぇ……」


ドッ と、空木さんが仰向けに倒れ込む。

空には、夏の星空が広がっていた。

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