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206 謎の世界と謎の女の子 7

男が目覚めると、そこは見覚えのない山の中。

近くにある宿泊施設の従業員、着物少女の冥子めいこに起こされ、なんやかんやあって『おもてなし』される流れに。

釣りやらBBQ、スカイダイビングを堪能(?)し終わり、二人でお風呂に入ったりした後は……



「ふぅん(ジー)中々似合うじゃねぇか、その着物」


「そ、そう? 着替えの中に甚平が用意されてたからね。俺も着るのは初めてだけど」

「甚平っつーのか。見た事ないけど男専用か?」

「別に男子専用でも無いとは思うけど……あまり女性は着ないかもね。冥子さんも浴衣、赤いのから青いのに変えたんだね。似合ってるよ」

「あ、ああ。『キチンとしなさい』って、お袋のメモ書きがあってな……」


田舎の少年のようにアグレッシブに動いたせいで、あの赤い浴衣も随分と汚れてたからな。

俺は気にしないが、女将さんはその辺厳しいんだろう。

髪も、下ろしていたさっきとは違い、今は結い上げていて。

どこか大人っぽい。


「ほら。足元見えないから、手ェ」

「あ、うん。ありがとう」


手を繋ぐ。

出会った時も繋いだが、なんだか、その時とは感じ方が違う気がする。

このジトっとした感触、俺由来の汗なら申し訳がない。


ピーヒョロロー


ふと、どこからか笛の音。

続いて トントコトン という太鼓の音。

それは、別々ではなく賑やかな一つの演奏。

先程、森の奥から聞こえた遊園地に流れてそうなそれとは別の、和風で陽気な音楽。

祭囃子だ。

まるで、近くでお祭りでもしてるかのような……


「お? (クンクン)この匂いはっ」

「わっわっ」


急に駆け出す冥子さんに、俺は手を引っ張られ共に走り出す。

まるでリードを付けた大型犬のよう。



トンカラカン ピーヒョロロー


冥子さんの鼻を頼りに辿り着いた先、そこにあったのは……出店だ。

ズラリ 真ん中の石畳の道を挟むように、様々な出店が奥の方まで並んでいた。

店員さんは……居ない。


「うおー! 祭りだっ! お袋とか『あいつら』が用意してくれたんだなっ」

「へぇ。これだけの屋台を短時間で……でも、誰もいないな」


しかし、ソースの焦げる芳ばしい香りや甘い香りは確かに漂っている。

二人で屋台の前まで行くと……


「成る程。完成品が既にパック済みにされてるね。焼き台に残る熱や使用感を見るに、さっきまでそこで作ってたような感じだ」

「食材とかはあるなっ。足りなきゃセルフサービスで作れってこったっ」

「多分だけど、ほかの屋台にも作り置きのパック詰めはあると思うよ……? 全部食べ切れるかどうか……」

「取り敢えず作り置き食い尽くしたらまたこの焼そばの屋台に戻って焼くってプランにするかっ」

「また焼そば食べるのか……」


とりあえず、色々屋台を回ってみる。

その道中、数カ所の屋台の横に、隠されるように置かれたラジカセを見つけた。

どうやら、この太鼓や笛の祭囃子BGMはここから流れてるらしい。

一つ疑問は晴れた……が、この、今何気に踏んでる足元の石畳……

さっき、気球に乗って全体を見渡していた時には無かったものだ。

単に見落としていたのか?

森で隠れていた?

それは、この屋台の存在だってそう。

まぁ、俺らが気球を降りた後に急いで準備すれば、人手によっては可能だろうけど……。


「たまに出て来るんだよなぁ、こういう(神社みたいな)場所が」

「場所が出て来る……?」

「数年に一回ぐらいでな。前は私も準備手伝わされてなぁ……その時は姉貴が確か、今日みたいに客の相手を……」

「へぇ。前のお客さんが来たのは数年前なんだ」

「そんで、その後、次の日、姉貴は『居なくなって』…………」

「冥子さん?」

「ぁん? ……いや、なんでもない。ほらっ、行くぞっ」


一瞬、ボーッとしていた彼女だったが、すぐに調子を取り戻し、屋台に意識を向け出す。

姉貴、とは先輩、元従業員の事だろう。

その人が、客の相手をした次の日に消えた……それが意味するのは一体……?


「おっ、射的だ射的っ。全部落とすぞっ」

「店員さん居ないからって弾数制限は付けようね?」



それから、俺達は真っ直ぐ石畳を歩きながら、道中の屋台を一軒一軒覗く。


『金魚掬い』や『千本釣り』、『わたあめ』や『焼きもろこし』や『きゅうりの一本漬け』などなど……


祭りの定番を謳歌(俺は食べ物系はまだ腹が減らないので遠慮)していく。

冥子さんの腹は限界知らずで、俺は幸せそうに食べる彼女の姿を見るだけで満足だった。


お面屋には、定番の狐やおかめの他に、『緑髪の女性』や『銀髪の少女』などのアニメ? キャラクターの面があったりしたが、冥子さんは「お袋に似てる」と『閻魔大王』の面を欲しがったので、側頭部につけてあげた。

相変わらず不思議なセンスの持ち主だ。


そんなこんなで、気付けば随分奥まで来ていたようで……石畳の終わりに辿り着く。


終点……奥の方にあったのは、小さな祠。

ミニチュア日本家屋、といった感じの殿舎。

神社を歩いていれば一つは見つかるような存在だが……ここには鳥居も本殿もない。

祠だけの場所というのもたまには見るが…………なんだが、ここからは、普通じゃない感じのオーラが出てる気がする。

この世界、そんなのばっかだけど。

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