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200 謎の世界と謎の女の子

わらびちゃんと二人きり(+狐ちゃん)で遊園地デート中!

最奥まで行き、謎の祠を発見して中を確認すると、そこには使い捨てカメラが。

明らかに怪しい代物だが、触っていても特に何が起こるでもなく……



僕が使い捨てカメラの巻き上げダイヤル(背面にあるギア? でこれを回さないと写真が撮れない)なりシャッターなりをペタペタ触っていた時だ。


ブルルルルッ


僕のスマホが震えた。


「おや、誰だろう? ……んー? ってアレ? よく見たらここ、圏外ぢゃん?」

「先程使い捨てカメラについて検索してませんでしたか」

「だよね? あの時は電波がたまたま入ったとか? まいーや。(ピッ)もしー」


ハンドフリーモードで、わらびちゃんにも聞こえるように通話ボタンを押すと。


カッ!


瞬間、スマホから眩い光が。


「おっ! なんか良い感じに話進みそうじゃないっ?」

「少しは焦って下さいよ」


光は、僕らを包むように溢れて来て…………。



↑↓



「おい……おいっ、起きろっ」

「……え?」


体を揺さぶられる感覚で、俺の意識はハッキリする。

いや、嘘だ。

寝起きの為か、ボンヤリしたままだ。

瞼を開くと……ずきり、あまりの眩しさで目が痛んだ。

……陽の光。

まるで、目の前にライトを突きつけられたような感覚。


「おい」

「え? う、うん」


身体を起こした俺に、手を差し伸べる少女。

……綺麗な少女だ。

涼しげな赤い浴衣姿。

整えられた顔立ち、意志の強そうな瞳、人形のように小柄な身体。

彼女の手を掴み、立ち上がる。


「お前、ここで何してんだよ」

「ここでって……」


訊ねられ、俺は口籠る。


「ここは、どこなの?」

「はぁ? 頭でも打ったか?」

「いや……ほんとに知らないんだ。ここは……山の中の、田舎?」


落ち着いて、周囲を見渡す。

倒れていたのは木陰のようで。

木の周囲には、果ての見えない草原。

さっきの眩しさ……樹冠の隙間から差し込む陽だったのか。


……にしても、暑い。


木陰だからか多少マシなんだろうが、今は……夏、か?


「はぁ。ほんとに記憶喪失かなんかなんだな。怪しさしかねぇが……取り敢えず【お袋】に丸投げするか」

「おふくろ?」

「兎に角ついてこい」


手を繋いだまま、俺をどこかに誘導する少女。

口は悪いが、優しい子なのだろう。



……それから十分ほど歩いたが、景色が変わっている感じもないのに、すいすい進む少女。

この辺の子? で慣れているんだろうが……情けない事に、ついていくのは大変だ。

ジー ジー ジー

暑い……背中に汗が滲む。

セミは元気だが、俺はもうハァハァと息が上がっている。

どうも俺は運動不足気味のようだ。


「んだよ、情けねぇな……」


そう言ってこちらを振り返った少女の顔は、涼しげなものだ。

ハァハァいってる変質者まがいの俺を前にしても、警戒心はそこまで感じない。

偏見だが、田舎の子、だからだろうか?



……それから更に五分ほど歩くと、どうやら目的地に辿り着いたらしい。


「ここは、洋館? ……『かねこりの館』?」


門の表札には、そんな文字。

名前からして、個人宅では無さそう。

美術館か……宿泊施設?


「こい」


特に説明もなく、彼女は僕を招き入れる。

キィ

彼女が出入り口であろう木製の扉を開く。

ここが美術館なり宿泊施設なりなら、この先にはロビーとフロントがある筈だ。


「え?」


……果たして。

思った通り、先にはレトロチックなロビーやフロントがあった。

が、他に人はおらず。


「どうした?」

「え? いや……」


自分でも、なぜ声が出たのかは分からない。

だが、この館は『普通じゃない』と本能的な何かを覚えたのだ。

俺は、適当に誤魔化す。


「誰かいると思って」

「ああ。そういやいねぇな、珍しい」


普段は誰かがいるのであろう口振り。


シン…………


静寂。

まるで空き家のように、ひと気は感じられない。

聞こえるのは ジジジ と、すぐ外で蝉の声が聞こえるのみ。

思えば……ここに来る途中、他の人の姿を見ていない。

車なども、だが、そもそも道路自体が道中には無かった。

ここの家人は今は出掛けていて、誰もいない、とかか?


「あん? 何だこれ?」


少女が何かに気付き、フロントの方へ歩いていく。

俺は相変わらず手を引かれたままなので、彼女の行動に合わせる。

フロントには受付けのデスクがあり、そこにポツンと置いてあったのは……手紙?


冥子めいこへ。そこにお客様がいらっしゃいますね? 精一杯もてなしなさい』


短く美しい筆跡の文章の手紙。

恐らくは、彼女の上司にあたる人の置き手紙。

その内容も、まるで俺がここに来るのを分かってたかのよう。

そして、そこには彼女の名前らしきものも。


「は、はぁ? マジで言ってんのかお袋は?」


困惑し愚痴る彼女こと冥子さん。

「はぁー……」と長いため息を漏らして、チラリと俺を見る。


「言っとくが、私がやりたい事しかやらねぇぞ」

「いや、俺には何がなんだか……」



特に説明も無く、冥子さんは「ついてこい」と俺を引っ張って歩き出す。

まずは館内をぶらぶら。


「ここは食堂だ」

「はぁ」


「ここは談話室」

「へぇ」


「ここは露天風呂」

「ほぉ」


館内をただ、ぶらぶらする。

ただそれだけの事なのに、どうにも懐かしい気持ちになった。

レトロで、どこか安心する場所。

俺ら以外は誰も居ないが、不思議と寂しさは感じなかった。


再びロビーに戻ってきたタイミングで、ふと、俺は彼女に訊ねる。


「ここって、宿泊施設か何かなの?」

「あん? 今更か?」

「ま、まぁ」

「ああ。ここは宿泊施設らしいぞ。客は滅多に来ないがな」

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